World IPv6 Launch から 2 ヵ月、IPv6 の導入を評価する:6lab.cisco.com/stats
この記事は Alain Fiocco によるブログ「Two months after World IPv6 launch, measuring IPv6 Adoption: 6lab.cisco.com/stats」(2012/8/2)を翻訳したものです。
数週間前に World IPv6 Launch の影響についての見解(http://blogs.cisco.com/news/ipv6webimpact/)(邦訳:http://gblogs.cisco.com/jp/2013/03/world-ipv6-launch/)を紹介しました。それから 2 ヵ月ほど経過した今、もう一度振り返って、何を達成できたのかを考えてみたいと思います。
私は、過去 10 年間の IPv6 への移行を、「メキシカン・スタンドオフ」(睨み合っていて動けない状態)と表現してきました。ISP、コンテンツ所有者、ユーザ、デバイス、企業の誰もが、先頭に立って移行を行うことにメリットを見い出せず、またそのリスクも高すぎるとわかっているからです。一方で、IPv4 アドレス プールは世界全体でも地域/ローカルでも枯渇してきており、インターネットが確実に成長、発展、そして革新を続けるためには IPv6 の立ち上げが必須であるという見解は一致していました。それでも誰も動き出すことをしなかったのです。
この袋小路の状態が、World IPv6 Launch(2012 年 6 月 6日)により解消されました。
ISOC(Internet Society)が中心となって企画運営された World IPv6 Launch により、非常に実質的な方法で、業界全体として向き合うべき問題が明確になりました(業界トップクラスのコンテンツ プロバイダーや ISP、企業が率先して参加し、その後も IPv6 を利用し続けています)。しかし重要なのは、これは始まりにすぎないということです。IPv6 をインターネットに広く普及させるためには、多くの導入フェーズを経て、いくつもの課題を克服しながら導入を進める必要があります。インターネットは人類が作り出した最大の通信システムであり、非常に細分化されています。IPv6 への移行も例外ではなく、すべての国と地域で同時に IPv6 を導入できるわけではありません。IPv6 に移行するペースが国や地域で大きく異なるために、何の不自由もなくエンドツーエンドのグローバルなインターネットを利用できる環境には大きな隔たりが生じてしまっています。
明確な指標の下で IPv6 の導入状況を評価することが、導入の促進、導入後のモニタリング、問題のある地域の特定、さらには(データに裏付けられた)より適切なビジネスの意思決定を行ううえで最適な方法です。これが、シスコの IPv6 High Impact Project グループが解決しようとしている課題です。
世界全体とローカルの IPv6 導入状況を把握するためには、それぞれの導入フェーズを評価する必要があります。これらのすべてのデータを日々、世界全体および国別に収集、算出、確認することで、導入要因とその傾向を理解し、それをもとに同じような状況の国のパフォーマンスを評価することができます。
ここで、シスコの IPv6 の導入状況データを示す 6lab.cisco.com/stats をご紹介します。この Web サイトでは日々集計・更新されたデータを、世界全体と国別にそれぞれ比較しながら確認することができます。
- 世界地図の上にマウスを置くと、国別に集計したメトリックが表示されます。
- 希望の「データ タイプ」を選べば、それぞれの詳細を確認できます。
- [World-scale data] を選択するか、国をクリックすると、履歴データが表示されます。
- 手順やデータの説明、チュートリアルについては、http://6lab.cisco.com/stats/information.php をご覧ください。
- 各国の「IPv6 overall deployment」の指標は、導入メトリックの加重平均です。{IPv6 Transit AS*25 % + IPv6 Content*25 %+ IPv6 Users*50 %}
インターネットへの IPv6 の導入は、多くのフェーズを踏む必要があります。それぞれのフェーズの進捗を測定する方法をご説明しましょう。既存の公開データがある場合は、それを利用します。 また、利用できるデータがない場合や不十分な場合に備え、補足的なデータを集めるためのプログラムを作成しました。
IPv6 に移行するには、まず計画を立てる必要があります。最初に、IPv6 プレフィックスを取得します。地域と国別に割り当てられた IPv6 プレフィックスの増加を測定することで、IPv6 の導入を見据えた指標が得られます。そのうえで、インターネット BGP ルーティング テーブルに現れるプレフィックスの割合を測定します。これにより、実際の IPv6 ネットワークの導入率のメトリックが得られ、それがネットワークの準備状況を同等の国と比較する際の先行指標になります。
インターネットでまず IPv6 に対応する必要があるのは、コア ネットワーク(インターネット トランジット プロバイダー)です。コア ネットワークへの IPv6 の浸透度は、BGP ルーティング テーブルを調べることで測定できます。インターネットにおける BGP 自律システムの重要性はそれぞれ異なるため、すべての IPv4 および IPv6 プレフィックスの経路に現れる回数に基づいて、それぞれの自律システムを重み付けして順に並べました。
主要なトランジット プロバイダー(Tier1 とも呼ばれます)はすべて IPv6 トランジット サービスに対応しており、上位 100 の自律システムのおよそ 80 % が IPv6 と IPv4 のトランジットに対応しています。
このようにインターネットのコアの部分ではほとんど IPv6 の導入準備が整っていますが、地域/ローカルのトランジット ネットワークについては対応をさらに強化する必要があります。インターネットの「周辺」に近づくほど、IPv6の対応度は弱まっています。
コア ネットワークでの準備が整う中、コンテンツ プロバイダーと企業も同様、最適な IPv6 接続環境を構築して Web サイトとアプリケーションの対応を進めています。IPv6 コンテンツを測定するには、複数のメトリックを収集して相関付ける必要があります。DNS システムを探り、どれだけの数のドメイン名(例、www.google.com、www.cisco.com)に IPv6 アドレス(AAAA)がバインドされているかを調べる必要があるのです。しかし、AAAA レコードがバインドされていても、それだけでサイトが実際に IPv6 経由でアクセス可能であるかどうかはわかりません。そこで、IPv6 経由でドメインのホームページに接続する HTTP セッションをオープンし、サイトが IPv6 に完全に対応しているかを確認する必要があります。
本番環境で IPv6 を使用する前に必要なもう 1 つのステップが、専用のドメイン名を持つ IPv6 テスト Web サイトの構築です。
任意のドメインに AAAA レコードが存在しない場合、一般的に使用される IPv6 クローン ドメイン名(ipv6.domain.com、ww6.domain.com、go6.domain.com など)を調べます。これは、IPv6 の導入を計画している Web サイトの数を知るための手がかりになります。
(ローカルと世界全体の両方で)IPv6 の到達可能なコンテンツを測定する場合、Web サイトの相対的な重要度を考慮する必要があります。一般的に、人気のあるサイトやコンテンツはアクセスが集中する傾向にあります。Google や Facebook、Netflix、Wikipedia、Yahoo は世界中で利用されており、中国の Baidu(百度)やロシアの Mail.ru も多くのユーザが使用し、膨大なトラフィックが発生します。
それを踏まえ、約 130 ヵ国における上位 500(参考:www.alexa.com)の Web サイトを対象に調査を行いました。これらのサイトのユーザ数、クリック数、インターネット コンテンツの数は莫大な数にのぼります。その他の Web サイトの場合は、実質的にロングテールのインターネット コンテンツを扱っているため、調査に大きく影響することはありません。また、各国の上位 500 の各 Web サイトに対する重み付けも考慮しました。ここでも www.alexa.com が公開するデータ(閲覧ページの割合)に基づき、各国におけるランキングを参考に算出し、国内の上位 500 の Web サイトにそれぞれ重み付けを行いました。
すべての IPv6 対応サイトに対して(先述のテストのリストをもとに)あらかじめ計算した重み付けを集計することで、国別に IPv6 経由で利用可能なページの割合を予測できます。すなわち、特定の国の一般的な IPv6 インターネット ユーザがアクセスできるコンテンツの割合を予測できるのです。これは、ISP やネットワーク事業者が IPv6 インフラストラクチャの適切な容量計画を立案するうえで注目すべきデータです。このデータの重要なところは、経路上の CGN やその他の NAT をバイパスするセッションやトラフィックの数に相当する点にあります。
IPv6 経由で到達可能と推測される Web ページの割合は、国別に大きく異なります(ブラジル:50 %、フランス:46 %、ドイツ:44 %、米国:40 %、ロシア:24 %、中国:18 %)。普及が進んだ国では、行き詰まりの状況は解決しつつあります。現在では、IPv6 ユーザ向けに非常に多くのコンテンツが提供されています。
この事実を踏まえると、ISP には、ブロードバンドとモバイル ユーザ向けに IPv6 を提供するビジネス上のメリットがあります。World IPv6 Launch 以降、各国の大手サービス プロバイダー(固定電話、携帯電話の両方を含む)は新規加入者向けに標準で IPv6 に対応しており、IPv6 への移行に向けた動きを見せるとともに、利用者数を着実に伸ばしています。また、今後数ヵ月の間に、IPv6 を提供する ISP がさらに増える見込みです。
Google では、IPv6 経由で Google 検索へのエンドユーザ接続の割合を測定して公開しています(http://www.google.com/ipv6/statistics.html)。また、APNIC(ASIA PAC Internet Regional Registry)もアドウェア ネットワークを利用して IPv6 エンドユーザの普及度を測定し、IPv6 のポテンシャルを調査しています(http://www.circleid.com/posts/20120625_measuring_ipv6_country_by_country/)。
Google と APNIC のデータは両方とも世界全体で一貫性のある結果が得られていますが、Google 検索がそれほど浸透していない国(例:中国)もあります。これについては、APNIC の手法のほうがより正確なデータが得られるようです。そのため、あらためて調査し直すことはせず、(図々しいですが)そのデータを引用します(データを公開していただき、ありがとうございます)。
世界全体で見ると、IPv6 接続を利用できるインターネット ユーザはようやく 0.8 % を超えたところです。これは決して高い数値ではありませんが、成長のスピードは速く、数百万人のインターネット ユーザに相当します。依然、地域によって大きな格差があります。ユーザがさらに広がるかどうかは、世界各国・地域の ISP が家庭用ルータやデバイスをアップグレードすると同時に、IPv6 接続を提供することが鍵になります。
2012 年 8 月 1日現在(古いですが)、IPv6 対応インターネット ユーザの数が多い国とその割合は、ルーマニアの 8.6 %、フランス 4.7 %、日本 1.8 %、米国 1.5 % などで、ユーザ数は世界で数百万人にのぼります。
最後に、IPv6 ネットワークおよびコンテンツへの対応は大きな進歩をみせています。World IPv6 Launch は、インターネット インフラストラクチャにおける IPv6 の注目度を飛躍的に高めました。多くのインターネット ユーザが実際に IPv6 接続を利用するようになるには、まだやるべきことがたくさんあります。この IPv6 Adoption Statistics ツール(http://6lab.cisco.com/stats/)は、特に IPv4 の枯渇が深刻化している地域で、インターネットのエコシステムにおける IPv6 対応をさらに推し進めるためのシミュレーションに役に立つでしょう。IPv6 は間違いなく、インターネットが次世代に向けて成長、発展するための重要な要素なのです。
複雑な作業やデータの収集、詳細な分析、それにすばらしい Web サイトを構築してくれたウーゴ・カツマレク氏に感謝しています。
すでに IPv6 を利用できる環境にいらっしゃいますか?シスコはすでに IPv6 が「オン」になっています。ぜひ、 http://blogs.cisco.com にアクセスしてみてください。このブログ記事も IPv6 で読むことができますよ。
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