モノのインターネット(IoT)は、企業を変革し、新たな収益機会を創出しようとしています。皆様の組織はそれを活用する準備ができているでしょうか?
これは、サービス プロバイダー業界のビジネス リーダーと私との会話の中で頻繁に上がる話題です。ネットワーク接続されたデバイスがさらに普及するにつれ、世界中の事業者は、高帯域を必要とするコンテンツやアプリケーションに対応するためにインフラストラクチャを更新するだけではなく、新しい IoT 対応のビジネス モデルへ首尾(と収益性)のよい移行を果たし、ARPU を向上する方法を模索する必要があります。
最新の Cisco Visual Networking Index(VNI)によれば、アジア太平洋地域での M2M モジュールは、2020 年までに、今後 5 年間で 19 %の CAGR で増加し、52 億の接続数に到達すると予測されています。(補足:そのうち、日本における M2M モジュールは 2020 年に11 億との予測)
キャリアやサービス プロバイダーにとって、小売、医療、製造業などのビジネス業種全体で成長している M2M の普及は、IoT サービスを効果的に収益化するにあたり新しい課金モデルが必要とされるかもしれないことを意味します。拡大する収益機会を引き出すために、サービス プロバイダーはまた、幅広いアプリケーションをサポートする IoT サービスを展開する最善の方法を検討する必要があります。エッジでまたはクラウドでのデータ ストレージ、および高度な分析機能は、一般消費者、政府 / 自治体や企業のための IoT の可能性を真に実現するために不可欠となります。
ここで、多くの新しい可能性を開いている 2 つの主要な IoT / M2M の垂直動向を詳しく見ていきましょう。
スマート シティの夜明け
アジア太平洋地域は、世界でも最も急成長している都市のいくつかを抱えています。シンガポール、東京、広州、アデレードなどは、交通渋滞、環境汚染や廃棄物管理などの都市の課題に対処するデジタル技術革新を活用し、スマート シティへの変革の最中にあります。
また、韓国のソンドにおけるスマート シティ開発は、世界で最も環境に優しく、技術的に高度な都市の一つとして知られています。
一定した情報の流れは、都市のインフラの改善を可能にします。例えば、ソンドの街中に設置されたセンサーは、温度、エネルギー利用、交通量を監視して、省エネルギーのフットプリントを形成します。 未来志向の町ソンドでのハイライトの一つは、企業やスタート アップが、路上で開発中のソリューションをテスト稼働することのできる IoT キューブといわれる「活動するラボ(living lab)」です。IoT キューブには、Wi-Fi、フォグ コンピューティング、およびセキュリティ ソリューションなどのシスコのインフラストラクチャが含まれていました。
アジアにおけるこういった未来的なスマート シティの運営において、進化するネットワーク技術が重要な役割を担っていることは確かです。 公共インフラ(自動街路照明、エネルギー配分の効率向上)から、公共安全のためのスマート ビデオ監視まで、最新の IoT システムは、幅広い範囲にわたる接続デバイスとデータ収集センサーから実用的な洞察を発見するように設計されています。
サービス プロバイダーの観点では、最初のステップは、スマート シティの開発を促進するために必要なネットワーク機能と技術の専門知識を構築することです。遠隔医療やスマート カー ナビゲーション システムといった M2M アプリケーションの利用増加は、より大きな帯域幅と低遅延、そして管理が容易なネットワーク リソースを必要とします。セキュリティは別の重要な問題です。通信ネットワークには、接続されたデバイスの増大に対応するために強化されたセキュリティとインテリジェンスの層が必要とされます。
スマート シティ構想が形を成すにつれ、サービス プロバイダーは、IoT / M2M エコシステムに渡る様々なステークホルダーと協業する必要があります。 サービス プロバイダーには、IoT プラットフォームの中に新たな価値の源泉を発見し、収益増大を達成する大きな可能性があります。しかし、この地域の多くの事業者は、コア ビジネスである堅牢な接続性の提供に焦点を当てています。IoTのギャップを埋めるため、事業者は、既存のネットワーク機能を超えた新しい専門知識を獲得し、コネクテッド カー、スマート工場や M2M アプリケーションが稼動する新たな素晴らしい世界のために準備を整える必要があります。
インダストリ 4.0 を実行する
IoT は、スマート センサーやネットワーク技術を組み合わせて、高速で変革する製造業の最前線にあります。大規模な(そして成長を続ける)製造拠点を持つアジア太平洋地域は、産業 IoT (Industrial IoT, IIoT)技術の高い普及が予測されています。中国やインドなどの製造ハブでは、新たなインダストリ 4.0 を取り入れ、明日の「デジタル ファクトリー」になろうとしています。
M2M アプリケーションは、メーカーにとって、より良いデータ洞察を得るだけでなく、産業オートメーションを通じたプロセスと成果を改善するために重要です。ここでは、サービス プロバイダーは、多様な工場環境にわたって信頼性の高い接続環境を拡張し、IoT の展開を拡大するエンドユーザーとの協業において重要な役割を持っています。
シスコのアプローチは、統合された IoT ソリューションを実現し、これからもインダストリ 4.0 のモメンタムを率先していくための新しい水平機能を構築できるようにサービス プロバイダーを支援することです。 製造業では、主要な技術上の考慮事項の多くがエッジ デバイスやネットワークに構築されます。
このような遠隔監視などの産業用 M2M アプリケーションの場合、メーカーにとって必要なのは、クラウドのエッジと内部の両方でコンピューティングを実行する能力とともに、接続性の異なるレベルの組み合わせです。従って、サービス プロバイダーは、さまざまに混在する要素を統合し、拡張性の高いマネージド サービス プラットフォームを提供しながら、ネットワーク、クラウドおよびアプリケーション間でセキュリティを確保することに熟達していなければなりません。
メーカーはまた、エッジ分析機能を活用して、より速く、実用的な洞察を得ることができます。シスコの開発したデータ解析ソフトウェアは、ネットワークのエッジも含め、データが生成された場所の近くでデータを収集、分析します。このアプローチによって、メーカーは、IoT データのトラフィック管理を向上できるため、効果的な意思決定とより良いビジネス成果の創出が可能になります。
産業アプリケーション用のマシン接続であっても、スマート シティ実現のためのインテリジェント ネットワーク構築であっても、シスコは、接続の新しい時代のペースを維持するために、サービス プロバイダーの戦略的アプローチ開発を支援できる立場にあることを私は確信しています。
「VNIアジア太平洋地域および日本 電子ブック(VNI Asia Pacific and Japan EBook)」では、この地域全体のサービス プロバイダーが直面している機会と課題についてさらに詳しくご紹介しています。
http://www.cisco.com/c/m/ja_jp/offers/vni/index.html
この記事は、グローバル サービス プロバイダー担当バイス プレジデントである Chris Heckscher によるブログ「Setting Sights on IoT Opportunities in Asia Pacific」(2016/8/4)の抄訳です。