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日本は本当に多様性を受け入れられないのか? LGBTQ 就活×PRIDE 対談(前編)【2021年入社新卒ブログリレー Vol.17】


2021年10月28日


こんにちは! TAC エンジニアで LGBTQ 当事者でもある髙木です。

今回と次回は「LGBTQ 就活 × PRIDE 対談」を前後編でお送りします!

 

ゲストはシスコ ジャパンで Diversity 活動を推進するアンバサダーグループの中で LGBTQ サポート活動を行う団体 PRIDE の前リーダー 大崎さん
ちなみに大崎さんは私と同じ TAC Wireless チームのエンジニア職で、特に技術力の高い人の称号である Technical Leader をお持ちのスゴイ方です! 新卒でシスコに入社されてから約15年のキャリアを持つ大先輩!

そんな大崎さんと、LGBTQ 当事者の就活とシスコ PRIDE の活動をテーマに深い議論をしていきます。

 

シスコ PRIDE のこれまで

大崎  僕は 2018 年に PRIDE チームのリーダーになりました。元々、シスコ クロスカルチャー コネクト(CCCC)というコミュニティのスピンアウトとして PRIDE が誕生したんです。CCCC は、グローバル カンパニーとしていろんな人が同じ職場にいる環境でみんなにとっていい職場をつくろうという趣旨の団体で。国や人種、女性活躍など様々なトピックを扱っていて、そのなかのひとつとして LGBTQ があったって感じ。

シスコが東京 2020 オリンピック・パラリンピックのネットワーク機器カテゴリーのオフィシャルパートナーになったのを契機に、CCCC から PRIDE がスピンアウトしたのが 2018 年。IOC は多様性を非常に重視する組織であるからこそ、シスコもスポンサーとして、TOCOG や他スポンサー企業の皆さんと協力しながらダイバーシティ活動推進に貢献していきたいと考えていました。

PRIDE 設立以前は、シスコジャパンの中では LGBTQ の話題があまりなく、言葉は知っているが内容をちゃんと知らないなと思った。だから、自分も学ぶために PRIDE リーダーに立候補しました。

そこから 2021 年まで 4 年間リーダーをやりました。社内で知っている当事者がいなかったので、IT 業界にいるオープンリーな人に話を聞くことにしてね。A 社ではこうしている、B 社だとどうやっているか、と。それらのアイデアをシスコで取り入れられないかなと考えたりしてました。
しばらくして、社内ニュースレターで PRIDE の活躍が取り上げられました。それを見て「実は当事者なんです」と僕だけにカミングアウトしてくれた人が現れ、PRIDE の今後の活動について相談したりできて、良かったですね。

僕は PRIDE 以外にも CDAN にも参加しています。ある人のもつバックグラウンドが働く上で足かせになっていたら良くないと思う。そういう意味で、LGBTQ も障害者も働きやすい環境にしたい。

 

髙木  私のテーマとしてセクマイ(セクシュアル マイノリティ)の visibility を上げたいというのがあるから、どうしてもフォーカスするのがそこになります。けれど、セクマイも人種も障害者も同じレベルで見たいと思っています。
大崎  人種でいうと、シスコ US ではアフリカン・アメリカンの団体があります。アジア人コミュニティもあった。
髙木  そういうのは US ならではって感じがします。シスコ ジャパンではあまりなさそうです。でも、もしかしたらそういうコミュニティを必要としている人がいるかもしれませんね。

大崎  いるかもしれないね。かつての CCCC にはそういう役割もあったんですよ。他の国の人が日本で生活する上で直面する課題を共有していこうと。

 

チームにも当事者は「いる」ものとして考えよう

髙木  当事者に「扉は開かれているし、受け入れる準備もできている」というメッセージを伝えられるようにしたいです。「扉は開かれている」というのは「当事者を受け入れますよ」という意味で、これは今いろんな企業ができていると思います。でも、「受け入れる準備もできている」という企業は少ないんじゃないかと感じました。

自分が就活生として Job Rainbow 主催の LGBT 就活イベントに参加したとき、企業の担当者に「あなたの会社にはどういう制度がありますか」と聞いて回っていました。日系企業の C 社ブースでも同じ質問をしたら、「うちではそういう支援が欲しいという声が上がってないから、制度は作ってないんですよ」と言われたんですね。

大崎  それは良くないね(笑)

髙木  気持ちはわかるんですよ(笑)。要求がないから必要ないという。ただ、それはやっぱダメだよねと思いまして。大崎さんはご存知だと思いますが、当事者が「欲しい」と言うこと自体がカミングアウトになってしまうという難しさがありますよね。C 社の言ったことは、「あなたたちがカミングアウトするなら考えてもいいですよ」という風に聞こえたんですね。

髙木  当事者って、みんながみんなカミングアウトしたいと思っているわけじゃないと思うんですよ。クローゼットでいたい当事者もいると思います。「声を上げるなら」というのは、クローゼットな可視化されていない当事者の存在をないがしろにしているって思いますね。

強いとか弱いとかっていうところに押し込めたくはないんですけど、企業と当事者っていう関係では当事者の方が立場上弱いんだと思うんですよ。だから、勇気を持って声を上げるっていう行為を弱い側に期待したら良くないって思います。強い側である企業が先回りして準備する必要があるんじゃないかなって。それが最初に言った「扉は開かれているし、受け入れる準備もできている」ということです。

大崎  ほんとにその通りだと思いますよ。マイノリティだから発言する機会も減っちゃうし、声も小さくなりますよね。多数の方に圧倒されちゃうし、多数の方に合わせるのが民主主義かなとか考えちゃうし。少数派がちゃんと声上げろっていうのも違うって思いますよ。

僕もデータから考えようと調べていたときに、ある統計では 7 % の人が当事者なんだって知りました。当時シスコには 1000 人くらいいたから7 %ならけっこうな数がいるなって、でも周りで聞いたことないなと。70 人いなかったとしても、20 人くらいはいるんじゃないかな? って思うと、各部署に 1 人ずつはいることになって、でも聞いたことがないから固くクローゼットに閉じこもっているんだなと思いました。

見たことない、噂に聞いたことがないから「いない」と思っちゃうのはやっぱりダメで。当事者は必ずいらっしゃいます。そういう人たちがいるということを前提に考えていかなくちゃならない。今まで当事者の存在を意識してこなかった人にも、「あなたのチームにもきっといるんですよ」と声をかけて、PRIDE で開催したセミナーで非当事者の振る舞いを考える場を作ったりしましたね。

 

日本は多様性を受け入れる素地がある

大崎  日本ってすごい特殊で、他の国と比べるとクローゼットな当事者の割合が突出して高いんですよ。ある研究によると当事者の7~8割がクローゼットですと。日本の文化的な理由があると思います。

髙木  私の感覚では多いなって思いましたね。9 割くらいの感覚です。カミングアウトした著名人の話は海外でよく聞きますけど、日本では少ないですね。なんででしょうね?

大崎  昔よりは聞くようになったかなとは思うけどね。

髙木  先日、会長の鈴木和洋さんが主催された「これからの日本について話そう」というミーティング イベントで和洋さんと議論したのですが、世間一般の感覚として「日本は多様性を受け入れられないのではないか」という感覚があるというが、そうじゃないんじゃないかと。私は「日本は多様性を受け入れられるんじゃないか?」と。

工業製品に関して特にそう思います。外国にはないようなアイデア商品がたくさんありますよね。だから、受け入れられないんじゃなくて無関心っていう方が近いんじゃないかなと思います。

大崎  すごくわかる。文化的に人に干渉しないことを良しとするところはあるかもしれない。一方で、多様性を受け入れる素地はあると思います。
古来から、中国や韓国やポルトガルなどいろんな外国から文化を吸収してきた。あらゆるものをインポートしてきたし。こういうことを言うと怒る人がいるかもしれないけど、日本では宗教が自由だっていうことが僕は良いことだと思ってて。クリスマスを祝い、神社に初詣に行き、お葬式はお寺に頼んだり、むちゃくちゃじゃないかと(笑)。イスラム教の人がいるからって差別する人はいないと思いますし。

大崎  ただ、自分たちと違う文化の人がやっていることに対しては口を出さないほうが良いという感覚がありますね。

髙木  郷に入っては郷に従えって言葉がありますけど、最近はそういうのは古いよねって流れになってきている気がします。よそ者を自分たちの色に染めてやろう、みたいなことはあまりなさそうです。

大崎  でも、それは地方と都会で違うと思います。地方では郷に入っては……の考えはあるみたいですよ。

髙木  そうなんですか。首都圏から出たことがないので実感としてはないですが。

大崎  Work with Pride ってカンファレンスで、東京から地方に転勤になったという当事者の方と会ったことがあります。話を聞く感じだと、やっぱり東京より地方の方が苦労が多そうだなあって。単純に人口が少ないと、カミングアウトしにくくなるよね。都会では One of them でいられるんだけど、地方だと自分の存在の影響力が大きくなるんですよね。どうしても周りに合わせちゃうということになる。

髙木  なるほどです。確かに、自分がその環境にいたら合わせちゃうと思います。

 

ビジネスに結びつけ、企業から変わっていく

髙木  さっき私が言ったように、日本は文化や製品に関して多様なので、セクマイをマーケティングとかビジネスみたいな商業と結びつけたら受け入れやすくなるんじゃないかなと思いました。

当事者の割合が 7 % とか 13 % とかって統計があるように、すごくたくさんのニーズの取りこぼしがあるってことだと思うんですよね。日本って1億人いますから。何百万人っていう人のニーズに対して、ビジネスの面から訴求できたらいいと思います。そうやって企業から変わっていけるんじゃないかと。

大崎  B to C の会社の方がそういうところに敏感なんですよね。B to B より B to C の方がお金も使ってて、力が入ってるなって感じます。特に服飾ですね。セクマイにも対応したラインナップがありますよ、とかね。あとは食べ物系。毎年レインボープライドに参加してる日本のドリンクメーカーもありますね。目に見える商品以外でも、保険会社が頑張ってますね。同性パートナーも対象となる生命保険とか揃えたり。B to C はいくらでも見せ所がある。

髙木  個人的に、病院がもっとセクマイフレンドリーになるといいなと思います。私はシスジェンダーの女性としての自認があるので、暗黙の了解のうちにヘテロセクシュアルだと思われがちなんですよね。

婦人科にかかったときも、パートナーに関する問診があるのですが「男性と付き合っていますか?」という質問なんです。そう聞かれると「実はセクマイで……」とは言いづらく、自分が予期していなかった処置をされてショックを受けたり、っていう体験がありました。

大崎  お医者さんとそういう話をしたことはなかったですね。今度会ったら聞いてみよう。

髙木  話は戻りますが、服飾の話だと D 社がセクマイフレンドリーで有名ですよね。トランスジェンダーの人と付き合ったことがあるのですが、その人の体に合う服を D 社で作ってもらった思い出があります。その人が着たいデザイン(性別)の服は既製服だとサイズが合わなかったんです。そういうニーズはあるところにはあるので、見逃すのはビジネスとしてもったいないと思いました。

大崎  D 社はお金かけてるしね。経営判断としてちゃんと予算を出しているっていうのがすごいよね。

髙木  今までは B to C の例を挙げてきましたが、シスコは B to B ですから、ニーズが見えにくいのかなって思っちゃいます。

大崎  そうなんですよね。だから、そこを打開できないかと思っていて、髙木さんに期待してます(笑)。

髙木  そうなんですか! 何かできないか考えてみます。

 

★後編につづく―――

 

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