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シスコ派遣記 Season5 EP3 自治体におけるテレワーク~自治体職員がテレワークを通じて感じたこと~


2021年3月17日


感染症拡大の影響により昨年春頃から在宅勤務を続けていることで、テレワークの利点だけでなく、それを自治体で活用する具体的な状況を考えるようになってきました。また、制度の運用にあたって注意が必要だと感じる点も多々あります。それらを、1 月 21 日にシスコが開催した「次期自治体ネットワーク強靭化ウェビナー」の中でプレゼンしましたので、今回は担当したセッションのうち、自治体におけるテレワークのメリットと活用が見込めるシーンに焦点を充て、お伝えします。

プレゼン資料ではメリットを5点挙げていますが、2 点目(部署横断的な業務の円滑化)、3 点目(無駄な待機時間の削減)、4 点目(異動の際の引継ぎの円滑化)に焦点を絞ってお伝えします。

なお、これらの内容は自治体職員個人としての見解であり、所属組織を代表するものではありません。

自治体職員としてテレワークを続けて感じること

 

1.部署横断的な業務の円滑化

自治体職員としてテレワークを続けて感じること

 

  (メリット)

規模が大きい自治体の中には、部局によって文化が異なり、部署横断的な業務

で初めてコンタクトをとる相手の場合は、非常に気を遣う状況があると思います。そのような状況下では、チャットツールが通常のコミュニケーション手段として使われていると、対面の際の遠慮ややり辛さが軽減される上、庁内での移動時間が削減され、よりスピーディーに業務が進められると考えています。

  (具体例)

所管する事業のイベントに対して他の部の職員5名に協力を打診するため、それらの職員に事業やイベントの概要を説明するというケースを例に説明します。

職員を直接訪問して協力の打診をするとなると、移動と同じ説明をそれぞれ5回する手間が必要になります。都道府県や政令市等の大きな庁舎の場合、移動時間を平均各2分、説明時間を各10分と短めに見ても、計1時間は必要になります。更に、相談先の課が所属する部の代表課にも話を通さないといけないというルールがある場合は、各部の総務課にも話を通し、追加で時間がかかってしまいます。

また、部署横断的な業務の経験が少ない若手の場合は、各部の文化への理解が不十分で上司に付き添ってもらうこともあると思いますが、その場合は当該業務に要した時間は2倍となっています。

もしテレワーク環境とともにチャットツールが導入され、庁内のコミュニケーションツールとして一般的に活用されている場合、依頼内容に応じて一部を書き換え手送信するだけですので、書き換えに2~3分要したとしても、計15分程度で済みます。また、相手が離席中でも、チャットツールにアクセスできさえすれば、伝達が可能です。

  (課題)

チャットツールが普段のコミュニケーション手段として共通認識されていなければ、結局は従来どおり対面のコミュニケーションを選択することになってしまうと考えています。特に、この人、こういった用件は対面でないとダメという細かいルールや暗黙のルールが出来上がってしまうと、かえって非効率になるおそれがあります。そのため、対面、非対面のコミュニケーションの使い分け方は、そもそも使い分けるかどうかも含め、運用しながら職員皆で共通の認識を築いていくとともに、特殊なルールに関しては明文化する必要があると考えています。

 

2.無駄な待機時間の削減

自治体職員としてテレワークを続けて感じること

 

  (メリット)

自治体職員の皆様は、自分が担当する予算要求の内容を財政課が確認するため「待機」がかかり、夜遅くまで待機した結果、「確認する時間がなかったから翌日に持越になりました。また明日よろしく」と言われた経験は無いでしょうか。チャットツールや web 会議環境があると自宅等でも対応が可能なため、従来は在庁して待機していたことで何もできなかった無駄な時間を他の事柄に充てることができるため、勤務環境の改善につながると考えています。

  (具体例)

資料では、私が経験した某年の予算要求時の経過(日時は適当)を載せています。

・11月15日(水) 財政課が要求内容を確認(予定)のため夜まで待機

→ 他課の分が長引いたため翌日に持越

・11月16日(木) 財政課から質疑があり、直ちに回答、夜まで待機

→ 回答内容を未だ確認できていないため、翌日に持越

・11月17日(金) 財政課が回答を確認するので、夜まで待機

→ 回答内容を未だ確認できていないため、翌週に持越

このような「待機がかかっても財政課から反応が無い」という場面が、予算編成作業時は何度か繰り返されます。予算という重要な事柄を限られた時間で組むため仕方がない事ではあるのですが、差し迫った他業務が無い場合は手持ち無沙汰になることもあります。

もしテレワーク環境があれば、待機がかかっても他業務がなければ自宅で待機することが可能になります。質疑への回答作成が必要になれば、自宅からでも Web 会議やチャットツールを活用してコミュニケーションをとりながら作業ができる上、質疑が降りてくるまでは家事や育児、趣味、家族とのコミュニケーションに時間を割くこともできます。翌日に持越しとなった場合は、無駄となる在庁時間が完全に削減されることになるため、勤務環境の大きな改善に繋がると考えています。

  (課題)

在庁して待機をする場合は、何かしらの指示があるまでとりあえず待機の形が多いと思いますが、自宅待機も同様な形にしてしまうと、勤務環境の改善という点では効果が減少するため、在宅待機時は明確なルールが必要になると考えています。

また、「自宅待機している時間」と「在庁して待機且つ何も他業務をしていない時間」の取扱いが厳格に同等に扱われなければ、結果として在庁して待機した方が良いという職員も多くなると思われますが、その結果、自宅待機したくてもしづらい風潮ができる恐れがあるという課題もあります。

 

私としては、夜10時過ぎまで待機した結果「翌日に持越」が繰り返されると切なくなるため、自宅待機派です。

 

3.異動の際の引継ぎの円滑化

異動の際、対面による業務引継ぎのタイミング確保に頭を悩ませるのは面積の大きい都道府県特有の事情だと思います。前任者と後任者が同じ庁舎にいれば何の問題もありませんが、本庁舎と出先機関にそれぞれがいて、対面するタイミングが無いという場合は無いでしょうか。

私の経験になりますが、2~3時間の引継ぎを受けるために、片道4時間の距離を移動したことがあります。始発に乗り、引継ぎを受け、終発で帰る形だったのですが、身体的な負担云々よりも、移動時間が長い故に業務が1日分ストップする点が辛く感じました。

電話越しにそれぞれ資料を手に持ちながら引継ぎを行うということも可能だと思いますが、Web 会議ができれば、投影された資料を互いが同時に見ながら、相手の反応も視覚的に確認しつつ進められる点で、電話越しの引継ぎよりも優れていると考えています。

Web 会議が引継ぎの場面で当たり前に使用されるようになれば、一方が他方の元へ長時間かけて移動した結果、仕事に充てられる時間と体力が削られることも減ると思いますが、このような点もテレワーク環境導入による勤務環境の改善の一つだと考えています。

 

以上が、ウェビナーでプレゼンした内容のうち、自治体におけるテレワークのメリットと活用が見込めるシーンをお話しした部分です。プレゼンでは他に、「自治体でのテレワークの必要性」や「窓口業務の非対面化」などに触れていますので、ご興味のある方は、下記の URL からウェビナーの録画をご覧ください。

 

〇ウェビナーの開催概要とプログラム

https://www.cisco.com/c/dam/global/ja_jp/solutions/industries/government/webinar-guide.pdf

〇講演録画と資料(登録が必要です)

https://engage2demand.cisco.com/LP=25511

 

次回は、「窓口業務の非対面化」についてお伝えします。

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