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ネットワーク アーキテクチャ考 (30) Data Intensive Architecture へ


2020年3月4日


ネットワーク アーキテクチャ考 (30)

ついにこの連載も30回目となりました。30回の節目にはマイルストーン的なものを書きたいと思っていたら、大分時間が経ってしまいました。やはりこういうのはあまり気負わず、まずは書き始めることが重要みたいです。。。
(※過去記事は こちら からご覧いただけます)

現在私が推進したいと思っているのは ”Data Intensive Architecture” への方向づけです。これからのネットワークシステムについて、接続自体はできる限り Simple かつ Stateless に実現し、その上で、どのようなデータ(コンテンツ、センサーデータ、テレメトリ情報)をどのように収集・配信、蓄積、分析・活用するか、という「データ中心」の視点と考え方が求められると考えています。

例えばこれまでは、アイデンティティやポリシー・セキュリティは「コネクション」と密接に結びついていましたが、アクセスネットワーク技術が多様化する5G/Hetnet時代には、「デバイス」「ロケーション」「アプリケーション」「データ」に基づき、アイデンティティやポリシーを決定する必要があるのではないでしょうか。また「データ中心性」は、分散、ディスアグリゲーション、クラウドネイティヴ化を伴うため、分散システムの整合性問題、分離と統合、データ自体のインテグリティやセキュリティも重要な検討ポイントになります。

「データ中心」の英訳は、”Data Centric” とするのが一般的かもしれませんが、私は、 ”Designing Data-Intensive Applications [1]”, “Designing Data-Intensive Web Applications [2]” などの著作に大いに影響を受けているため、”Data Intensive”という言葉をあてたいと考えています。そこでは、アプリケーションを、”Data Intensive” に(”Computing Intensive” ではなく)、データシステムとしてモデリング・抽象化することが議論されています。

Data Intensive Architecture への道程はまだ始まったばかりですが、ここにいくつか関連する活動をメモしておきます。

5G End-to-End Architecture Blog

 ディジタル時代、5G/Hetnet時代に、ネットワークアーキテクチャはどのように進化するか。Cisco有志で Blog連載 を行っています。私は、ネットワークスライシングに関する考察5G/Hetnetの企業向け活用5G時代のトラスト・サイバーセキュリティについて、記述しました。「データ中心」の視点を意識しておりますので、ぜひご覧いただけたらと思います。

Cisco Advent Calendar 

 毎年の恒例となった Advent Calendar。こちらには、アーキテクティングの基礎になるシステム理論を書くことにしています。最近のエントリーでは、宣言的ネットワーキング(Declarative Networking)について書きました。Declarative性は、不確実性の高い環境下でのシステム制御のために重要な概念であり、上記の ”Designing Data Intensive Application” [1] でも言及されています。

Janog45 宣言的ネットワーキング (Declarative Networking)

 そしてJanog45にて、VMware進藤さんと共同で宣言的ネットワーキングのセッションを行いました。Janogの話題としてはあまり適さなかったのかもしれないのですが、いくつか課題も見つかり勉強になりました。このようなセッションができたことに感謝しています。進藤さん、プログラム委員のみなさま、ありがとうございました。

Open Networking Conferenceにおける「データ中心性」についての発表

 「データ中心アプローチはシステムを救う」というテーマで、Hybrid Cloud、Hetnet Accessから、ポリシー一貫性、Network as a Serviceを経て、Data Intensive Architecture に至るための道筋についての試案を発表しました。

SRv6 – GTP-U stateless translationに関する論文

 これは、接続性をよりシンプルにスケーラブルにするための試みの一環です。トヨタ李さん・海老沢さん、Apresia桑田さん、ソフトバンク松嶋さんとの共著論文 popup_iconが国際会議(CNMS – International Conference on Network and Service Management)に採択されました。

 

今はまだ議論が乱雑ですが、しっかり整理し、”Data Intensive Architecture” に向けて、実践を重ねて行きたいと思っています。今後ともよろしくおねがいします。

 

[1] Martin Kleppmann, “Designing Data-Intensive Applications: The Big Ideas Behind Reliable, Scalable, and Maintainable Systems”, O’Reilly Media (邦訳「データ指向アプリケーションデザイン ―信頼性、拡張性、保守性の高い分散システム設計の原理」 )

[2] Stefano Ceri, Piero Frate, et al. “Designing Data-Intensive Web Applications”, The Morgan Kaufmann Series in Data Management Systems

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