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5G-シスコが考えるサービスプロバイダー E2E アーキテクチャ 第7章 5G/Hetnet の企業向け活用(1)


2020年1月27日


第 7 章 5G/Hetnet の企業向け活用(1)

 

7.1 背景

企業や公共団体などの産業界は、デジタル時代に向けて、高性能高品質でセキュアな新たなアクセス方式に大きく期待しています。通信事業者としても、コンシューマーサービスにおいてはユーザ数/ARPU に大きな増加が見込まれないため、企業や、スマートヘルス 、スマートシティ 、コネクティッドカー、その他 IoT システムなどの新たなサービス需要に対して真に価値のあるサービスを提供することが、5G 投資への論拠となります。

また、最近日本においても、全国用の周波数帯域に加えてローカル用の周波数帯域を割り付けるローカル 5G/プライベート LTE の導入が決定されました。これにより、通信事業者以外の企業や第三者機関がモバイルサービスを運営可能になります。一方、Wi-Fi も進化を遂げました。新規格 Wi-Fi6(IEEE 802.1ax)により、従来の EDCA/CSMA との後方互換性を持たせながらも OFDMA を導入し、衝突や非決定性の問題を回避することが可能になります(第 1 章参照)。

さらに、用途によっては、低スループットではあるが安価・省電力でライセンス不必要の LPWA が適する場合もあるでしょう。つまり、利用する企業側からすると、表 1 のように、アクセス手段やサービス形態が多様化し、多様な可能性と選択肢が提供されることになります。このため、本章のタイトルを「5G の企業向け活用」でなく、アクセス手段の多様化という意味を込めて「5G/Hetnet の企業向け活用」にしました。

表 1 アクセス手段とサービス形態の多様化

ライセンス形態 Licensed/Unlicensed
カヴァレージ Indoor/Outdoor, Macro/Micro
通信方式 Cellular/WiFi/LPWA..
サービス種別 Public/Private
システムの運営(所有と管理) SP-Managed/3rd party Managed/Enterprise Managed

 

企業の情報システム環境も大きく変わっています。複数のクラウドサービスの利用が当然となり、また、固定の配線を最少化するのは勿論、場所にかかわらず、移動中であっても、システムを効率よく安全に利用できることが必須になっています(図 7-1-1)。

図 7-1-1 企業環境の変化

図 7-1-1 企業環境の変化

そのために企業は、通信事業者が提供するモバイルサービスを利用しますが、これまでのサービスは接続性の提供に留まり、企業のポリシーやセキュリティ指針を統合し活用するようなモバイルサービスの提供はできていませんでした(図 7-1-2)。

図 7-1-2 現状:企業システムと通信事業者のシステムは別物

図 7-1-2 現状:企業システムと通信事業者のシステムは別物

シスコでは、これまで多くの企業ネットワークシステムを手がけてきた経験から、これからの時代における、価値の高いモバイルサービスを模索しています。いかに簡単に、シンプルに、セキュアに、ポリシー一貫性やプライバシーを保ちながら、魅力的なサービスを提供するか。本章では、Cisco が提供しようとしている、5G/Hetnet 時代の企業向けソリューションのいくつかを紹介します。

 

7.2 多様なサービス形態の融合

アプリケーションシステムにおいては、すでにパブリック システムとプライベート システムの融合が進みつつあります。社内システムを使っているつもりでも、機能によって複数のパブリック クラウドの IaaS や SaaS が組み合わされ、企業のクレデンシャルでそのままシステムが使えるようになっていることも多いと思います。しかしネットワークシステムにおいては、パブリック システム である通信事業者のモバイルサービスは単なるコネクティヴィティの一つに過ぎず、認証もポリシーも全く別であることが殆どです。

今後のネットワークシステムは、単にパブリック システムとプライベート システムだけでなく、前項で見たような多様なサービス形態が融合するものと考えられます。図7-2-1 に一例を示します。

図 7-2-1 企業システムと通信事業者システム融合の例

図 7-2-1 企業システムと通信事業者システム融合の例

この図では、オレンジが通信事業者システム、グリーンが企業側システム、ブルーは通信事業者が Local 5G システムをマネージメント サービスとして企業に提供している例を示しています。通信事業者設備は、ネットワーク スライシングとして仮想専用網的に提供されています。(ネットワーク スライシングに関しては、第 5 章もご参照ください。)勿論これは一例であり、「ローカル 5G は導入せず通信事業者の提供するネットワーク スライシングのみを利用する」、「ローカル 5G システムを、通信事業者ではなく、企業または第三者機関が所有・提供する」などの可能性もあります。

28GHz 帯のローカル 5G を利用して CATV における放送配信のラストワンマイルを代替するという取り組みも報道され [1]、5G FWA(Fixed Wireless Access)の可能性も高まります。このように、多様なサービス形態が融合するため、これまでとは異なる、新たなセキュリティやポリシーに対する考え方、新たな責任分界の考え方が必要になります。

 

図7-2-2 に、セキュリティ・ポリシー融合の例について概念図を示します。

図 7-2-2 企業システムと通信事業者システムにおけるセキュリティ・ポリシーの一貫性

図 7-2-2 企業システムと通信事業者システムにおけるセキュリティ・ポリシーの一貫性

5G を始めとする多様なアクセス技術とサービスの組み合わせにより、企業や IoT など産業向けネットワークシステムの、新たな可能性が広がります。次回はそのための要素技術について記述します。

 

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参考文献

[1] https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47469980Y9A710C1X13000/

 

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