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シスコが提唱する「ハイブリッドクラウドアーキテクチャー」とは (第1回)


2023年5月12日


デジタルを使った顧客体験のためにクラウド化を進める企業が増えてきました。クラウド化を進めるにあたり、拠点間でのデータ連携が必要になるなど、システムの複雑化が進行しています。また、パブリッククラウドとオンプレミスの間でシステムの分断も問題になっています。これらの課題へのアプローチとしてシスコでは、「ハイブリッドクラウドアーキテクチャー」を提唱しています。今回はそのビジョンについてお伝えいたします。

クラウド化のアプローチは千差万別

いま顧客との接点が急速な勢いでデジタル化しています。例えば飛行機のチェックイン。一昔前は旅行代理店の窓口でフライトを予約し、空港でチケットを発券し、搭乗するという流れが一般的でした。現在ではスマホアプリを使って予約からチェックインまでの手続きを完結し、そのまま飛行機に搭乗できるようになっています。高額商品の販売スタイルも変わり始めています。例えば、テスラではディーラーを介さずスマートフォンから自動車の購入ができる通販モデルを打ち出しています。

今や顧客情報だけでなく、サービス提供に関わるあらゆる情報がデジタルの接点を通じてやりとりされるようになっています。そうした中でエッジ側のデバイスと店舗、オフィス、データセンター、サービスプロバイダーなどの間でネットワークを介したデータ連携が必要となり、クラウド化と分散が加速しています。

ただし一言でクラウド化といっても、そのアプローチは企業によって千差万別です。クラウドファーストといったスローガンを掲げて全面的なクラウド化に向かう企業があれば、一度パブリッククラウドに移行したインフラやシステムをオンプレミス環境のプライベートクラウドに巻き戻す企業もあります。

2022年末にオンプレミス回帰を発表したあるEC企業は、「グループ全体でプライベートクラウドへの集約化を進めることでコスト効率を高められる」とその理由を説明するとともに、「IT基盤を自らのコントロール下で運用することにより、安定稼働やセキュリティ対策に関する説明責任と透明性も高められる」と強調しました。

デジタルビジネス構築の壁

クラウド活用のトレンドを見ると、前述した航空会社の予約アプリや自動車の販売サイトなど、デジタルトランスフォーメーション(DX)関連のアプリケーションについてはパブリッククラウド上で開発・運用を行うケースが大半を占めるようになっています。パブリッククラウドを利用したほうがコストメリットを出しやすく、なおかつクラウドネイティブの最新テクノロジーを簡単に導入して活用することが可能で、時流にあったアプリケーションやサービスを迅速に開発できるのがその理由です。

一方で基幹系システムについては、現在でもオンプレミスに残すケースが散見されます。先のEC企業が重視したシステムの安定稼働やセキュリティ対策などはその最たる理由ですが、「そもそも基幹システムをクラウドに移行すること自体に多大なコストがかかってしまう」「機能的に“枯れた”基幹系システムを、クラウドに移行したとしても新たなメリットはほとんど得られない」といった声も多く聞かれます。

では、DX関連のアプリケーションをパブリッククラウド上で開発・運用し、基幹系システムについてはオンプレミスに残すハイブリッドクラウド戦略をとれば上手くいくのかというと、必ずしも肯定しきれないのが現実です。

パブリッククラウドとオンプレミスの間でシステムの分断が発生し、基幹システムで管理されている顧客情報や購入履歴などの情報に適切にアクセスができないといった「デジタルビジネス構築の壁」といえる課題を引き起こしています。

この壁を生み出す原因は主に以下のとおりです。

  • DX関連アプリケーションと基幹システムがそれぞれ別の組織、個別のポリシーのもとで運用されている
  • パブリッククラウドとオンプレミスで新技術の対応ギャップが大きすぎる
  • 基幹システムが特定ベンダーの技術やプロトコルでロックインされており容易に接続できない

クラウドとオンプレミスを連携。可視化・オブザーバビリティ

この課題を解決すべく、シスコでは激しい環境変化に柔軟に対応できるプラットフォームのビジョンを描いています。

ハイブリッドクラウドにはデジタルビジネス構築の壁があると述べましたが、そのアプローチそのものは決して間違いではありません。

基幹系をはじめとする“守りのシステム”および重要情報や機密情報についてはオンプレミスに置き、DXアプリケーションのような“攻めのシステム”をパブリッククラウドに展開した環境下で、各システムが相互にプロセス連携やデータ活用を行えるプラットフォームづくりが今後の主流になるとシスコは捉えています。

このパブリッククラウドのメリットを体感した企業の多くが数年先には、オンプレミスの環境に対してもパブリッククラウドと同様の柔軟な運用性、操作性、スピード感を求めるようになると考えています。

シスコはこの将来を見据えたTo-Be(理想形)となるハイブリッドクラウドアーキテクチャーを提唱しています。アプリケーションやデータを任意のプラットフォーム・場所に自由自在に展開し、最適な状態で運用管理を可能とするものです。

ストレージ領域をはじめさまざまなサードパーティとも連携しながら、オンプレミスとパブリッククラウド(マルチクラウド環境)の双方に自動化、可観測性、最適化の仕組みを提供。一貫したセキュリティやポリシー、そして接続性が担保された状態で、プロセス連携やデータ連携を行えるようにします。そんな未来のハイブリッドクラウド環境が現実のものとなる日が近づいています。

「自動化」「オブザーバビリティ」「最適化」の3柱で、システム全体のセキュリティやポリシー、接続性を担保

次回は、このハイブリッドクラウドアーキテクチャーを実現するうえでクラウドネットワーク管理を司る最も重要なコンポーネントであるNexus Cloudおよび、ハイブリッドクラウド運用を支えるCisco Nexus Dashboardについてご紹介する予定です。

 

 

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