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セグメント ルーティング 誕生 5 周年


2018年8月7日


この記事は、サービス プロバイダー担当シニアバイスプレジデントであり、ジェネラルマネージャーでもある Jonathan Davidson によるブログ「Celebrating Segment Routing’s 5th Birthday」(2017/6/26)の抄訳にコメントを加えたものです。また、セグメント ルーティングに関する最新技術動向については、『「Cisco EPN Day」SP ネットワークの未来を見通す 4 時間!』のブログ記事で紹介しています。

「セグメント ルーティング」とは、Internet Engineering Task ForceIETF)で定義されたアーキテクチャである、Source Packet Routing In NetworkingSPRING)を指す用語として、業界で広く使用されています。2012 年以降、シスコはセグメント ルーティングの先駆者として、主要事業者各社のサポートを受けながら標準化活動を推進しており、4 件の RFC 50 件を超える現行のインターネット ドラフトの制定を実現しています。

ネットワーク トラフィックの爆発的な増加に伴い、ネットワークの動作にシンプルさ、スピード、スケーラビリティ、および復元力を求める声が、かつてないほど高まっています。5 年前にセグメント ルーティング(SR)が登場して以来、このテクノロジーをデジタル化の課題への対処に役立てて、前記の要望に対応すべくネットワーク変革を促進しているお客様が、ますます増えています。

西 Telefonica 社英 Colt 社などの多数のサービス プロバイダー、ハイパースケール Web プロバイダー、大規模企業が、Cisco SR を導入しネットワークの最適化を図っています。日本では SoftBank 社が導入について公表されています。

業界アナリストも、SR テクノロジーがお客様にもたらす価値に注目しています。

「サービス プロバイダーが効果的な競争力を確保するためには、現在のネットワークの複雑さを軽減する必要があります。ネットワーク所有者にとって、選択肢は 2 つしかありません。複雑さを抱えたまま増大し続け CapEx および  OpEx の無駄を被るか、既成概念にとらわれずにセグメント ルーティングを利用してこれらの問題を解決するか、のいずれかです。実証済みのこのテクノロジーを使用すれば、柔軟なネットワーク プログラミングや複数のレイヤのコラプスが可能になって、サービス チェーンのための追加プロトコルやオーバレイが不要になります。その結果、ネットワークの動作・運用がよりシンプルになり、プロバイダーは新たな収益機会を拡大することができます」。

–  ACG Research 社 CEO Ray Mota 氏

セグメント ルーティング テクノロジーの導入によるビジネス上のメリットとは  

OpEx(運用コスト)の削減

過去 10 年間、サービス プロバイダーによって提供されるサービスの範囲は、音声およびデータ中心のサービスから、より価値の高い多数のオファリングおよびサービス(ブロードキャスト ビデオ、ビデオ ストリーミング、拡張現実など)にまで大幅に拡大しました。これらの新たなサービスを実現するには、基盤となるネットワーク インフラストラクチャの変革が必要でした。

WAN ネットワークの複雑化はますます進み、数十年にわたってプロトコルとソリューションがネットワークに追加され、ネットワークの機能を維持するための運用コストは増大しました。上記の新たなサービスにとって、複雑化は、目標とするビジネス成果とは逆行します。

今、シンプル化を目指す時代がやってきました。その第一歩となるのが、ネットワーキング スタックの複雑さの軽減です。たとえば、できる限り多くの不要なプロトコルを排除するなどです。

セグメント ルーティングは、マルチ レイヤのネットワーキング スタックをシンプル化します。

セグメント ルーティングは、4 つの異なるプロトコルを一元化することにより
ネットワーキング スタックの複雑性を 75 % 削減

 

まず、SR では、シグナリングに既存のルーティング プロトコル(IS-IS、OSPF など)の拡張機能を使用することで、Label Distribution Protocol(LDP; ラベル配布プロトコル)などの専用シグナリング プロトコルを使用する必要がなくなります。標準的なルーティング プロトコルを使用すると、ネットワークが Equal Cost Multi-Path Routing(ECMP)を活用して複数の利用可能なパス間で負荷を分散できるようになり、帯域幅使用率が向上します。

また、SR では RSVP TE プロトコルを排除することで、トラフィック エンジニアリングがシンプルかつスケーラブルになり、コア ネットワーク使用事例以外で見られるようなスケーラビリティの制約を受けずにすみます。SR TE は、ステートがネットワークのエッジでのみ維持されるため、スケーラビリティに優れています。
さらに、オンデマンド ポリシーにより、トラフィック エンジニアリングがシンプル化、自動化、軽量化されます(複雑なトンネル構成とポリシーの事前設定を必要とする RSVP-TE とは対照的です)。これは、スケーラビリティとシンプルさの点から、トラフィック エンジニアリングの革命と言えます。

加えて、SR Path Computation Element(SR PCE)を挿入すると、ネットワーク ドメイン間でセグメント ルーティングが機能するため、BGP Label Unicast プロトコル(BGP-LU)を使用する必要がなくなります。

このように、ネットワーキング スタックの合理化は、サービス提供のシンプル化だけでなく、ネットワーク運用のスリム化と効率化に大きく貢献するため、大幅な OpEx の節約につながります。

財政的責任の軽減

サービス プロバイダー(SP)のサービス提供においては、サービス レベル契約(SLA)が深く定着しています。SLA とは、お客様が SP に求めるサービス レベルを定義して、サービス測定に使用するメトリックや、サービス レベルが達成されない場合の救済措置またはペナルティを提示するものです。代表的なものに、サービス可用性メトリックがあります。これは、ネットワーク可用性をはじめとする各種要素によって測定されます。

可用性に関する標準的な要件として、ネットワークは一般に、障害から 50 ミリ秒未満で復旧するよう求められます。セグメント ルーティングでは、高速、シンプルかつ予測可能な回復メカニズムが提供されます。これは Topology Independent Loop Free Alternate(TI-LFA)と呼ばれるもので、あらゆる場合のリンク、ノード、ローカル SRLG の障害に対して、ループフリーを保証する復元力を提供することができます。現在のところ、それを提供できる既存のソリューションは、ほかにはありません。

セグメント ルーティングは、マイクロループの発生を防ぐことも可能です。よく知られているこのルート IP 問題は、複数のネットワーク デバイスが転送テーブルを同時に更新しない場合に発生します。これは一時的な問題ですが、お客様の重要なトラフィックに影響を及ぼし、トラフィック損失による金銭的損害を招く可能性があります。SR は、このようなマイクロループに対して、ルーテッド IP ネットワークの出現以後初めてとなる実用的ソリューションを提供します。

TI-LFA の自動化とマイクロループ回避によって、セグメント ルーティングの比類ないネットワーク可用性が促進されています。このことは、合意された SLA への準拠を保証する上で重要な役割を果たし、それによってサービス プロバイダーは金銭的賠償を軽減するとともに、顧客満足度の向上につなげることができます。

新しい収益源と顧客生涯価値

サービス プロバイダーは、ネットワーク インフラストラクチャから、より多くの価値を引き出そうとしています。セグメント ルーティングを利用することで、差別化された革新的ネットワーク サービスを提供し、売上の増加を実現することができます。低遅延ネットワーク サービスと、ディスジョイントネットワーク サービスは、最も需要の多いネットワーク サービスです。低遅延ネットワーク サービスでは、時間的要件の厳しいアプリケーションが、常に最適な低遅延パスで転送されるようになります。ディスジョイントネットワーク サービスでは、ネットワーク障害時に高い復元力を提供するために、相互に独立した 2 つのパスを介してアプリケーションが転送されます。

5G サービスの登場に伴い、サービス プロバイダーは、お客様の特定のアプリケーションをサポートするカスタムのネットワーク分割サービスを提供する計画を立てています。これに関し、セグメント ルーティングは以下に示す 2 つの重要な機能を提供します。

  • 柔軟なアルゴリズム:SR の新たなトラフィック エンジニアリング機能により、同一の物理ネットワーク インフラストラクチャにおいて、さまざまな側面を鑑みながら、遅延、帯域幅などそれぞれ異なるメトリックを最適化する複数の最適化構成が可能になります。
  • サービスのプログラミング:ネットワーク スライスにシームレスに統合できる仮想ネットワーク機能セットを定義できます。

セグメント ルーティングは、新たなサービス提供を実現するだけでなく、より優れたエンドユーザ エクスペリエンスの提供にも役立ちます。Alibaba Group 社のチーフ ネットワーク アーキテクトである Dennis Cai 氏は、これについて Sigcomm 2017 カンファレンスで次のように説明しています。

Alibaba Group は、どこでも簡単にビジネスができるようにすることを使命としています。私たちは、この使命を支えることのできるネットワーク インフラストラクチャの実現を、特に重視しています。その点で、セグメント ルーティング アーキテクチャは、多くのメリットをもたらしてくれます。まず、既存のネットワーク インフラストラクチャに簡単に導入できます。第 2 に、ステートレスでありながらネットワークによるアプリケーションの転送をきめ細かく制御できることは、柔軟性に関する弊社の要件を満たしています。おかげで、優れたエンドユーザ エクスペリエンスを提供することができます」。

エンドユーザ エクスペリエンスは、顧客満足度を向上させ、結果的に顧客生涯価値(CLV)の向上と正比例するため、特に重要です。新しいネットワーク サービスを提供し、CLV を押し上げることで、通信事業者の収益は短期的にも長期的にも増大します。

目に見えるビジネス成果が出ることにより、セグメント ルーティングは、多くの主要関係者にとって魅力あるものとなります。

  • CTO:復元力が強化され、かつてないトラフィック エンジニアリング機能が提供される一方で、ネットワーク インフラストラクチャが大幅にシンプル化される
  • COO:シンプル化およびトラブルシューティング機能強化により、ネットワーク運用の効率化を実現できる
  • CMO:新しい革新的なネットワーク サービスを提供できる
  • CFO:契約で定められた財務的責任のリスク頻度を抑制することができ、ネットワーク運用コストを削減できる

いかなるデジタル ビジネス戦略も、成功させるためには、強固なテクノロジーによる支えが必要であることは明らかです。セグメント ルーティングは、運用上およびビジネス上の厳しい要求に対応すべくネットワーク変革において重要な役割を果たしながら、お客様とエンドユーザのエクスペリエンスを向上させることが可能なのです。

SR によるイノベーションの最新情報については、セグメント ルーティングの Web サイト [英語] をご覧ください。

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