AIエージェントとともにビジネスの成果を得る時代のネットワーク・セキュリティ――「Cisco Scale Innovation Day 2026」イベント開催レポート(セッション 後編)
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「Scale Innovation Day レポート」シリーズ
[第1回:セッション前編] | [第2回:セッション後編] | [第3回:シスコ体験ブース編] | [第4回:販売パートナー・ディストリビューター編]
中堅・中小企業をはじめとするお客様や販売パートナーの皆さまに向けて開催した「Cisco Scale Innovation Day」。そのハイライトを全 4 回のレポートでお届けします。第 1 回ではセッション前編として、AI エージェントの世界観や AgenticOps によるネットワーク運用の自律化、グローバル展開をテーマにしたパネルディスカッションの模様をお届けしました。今回はセッション後編です。
攻撃者は「つなぎ目」を狙う!だからこそ「点」の防御から「面」の防御へ
「ランサムウェア対策の新定番! まもる、つなぐ、まとめる。Cisco User Protection Suite」と題したセッションは、シスコシステムズ セキュリティ事業 アカウントエグゼクティブの島田実央と、スケールビジネス事業 アカウントエグゼクティブの西本閑在が、コミカルな寸劇を交えて展開しました。

舞台は、大阪の街で 5 代続く中堅繊維商社。同業他社がランサムウェア被害に遭ったというニュースを聞いた社長(西本)が、「うちは大丈夫なんだろうな」「細かい話はいい。大丈夫なのかどうか、それだけを聞いている」と情報システム部長(島田)に問いただす光景で幕を開けました。
攻撃者は生成 AI と自律型 AI を組み合わせ、偵察からマルウェアの作成、実行までを自動化。そして脆弱性の公表前から、企業の端末、ID、ネットワークといった「点」への対策の隙間、つまり「つなぎ目」を狙います。島田は「バラバラに管理・対策するのではなく、つなぎ目のない面の防御が必要」と述べ、「Cisco User Protection Suite」を紹介しました。
続くデモンストレーションでは、スケールビジネス事業 ソリューションズエンジニアの島津良が、多要素認証ソリューション「Cisco Duo」とクラウド提供型のセキュリティサービスエッジ(SSE)ソリューション「Cisco Secure Access」を連携させることで、ユーザーの信頼度(トラストレベル)に応じてアクセスの許可/ブロックが自動的に切り替わる様子を実演しました。信頼されたユーザーは Web サーバーに正常にアクセスできる一方、信頼されていないユーザーは瞬時にブロックされ、その理由がダッシュボード上に表示されます。「アクセスリストで細かくポリシーを組んでいるのではなく、ユーザーレベルの共有と Duo との連携だけで自動的にブロックが働く」と島津は説明しました。

再び始まった寸劇では、社長が AI 活用による機密情報の流出を懸念します。これについても Cisco Secure Access で対応可能であることをデモで紹介。生成 AI に機密情報をアップロードしたり、社外宛メール送信を指示したりすると、0.1 秒に満たない速さで自動的にブロックされる様子が実演されました。島田は「AI エージェントにも人間と同じように ID を付与し、その行動を監視・制御することが非常に重要」「AI への機密情報流出は、人間に悪意がなくても発生してしまう必然的なリスク。我々が目指すべきは、注意喚起による教育ではなく、システムによる制御」と強調しました。
セキュリティ製品が増え続けることへの悩みに対しては、2026 年 6 月の Cisco Live で発表されたばかりの統合運用プラットフォーム「Cisco Cloud Control」が答えとなります。これまでバラバラに管理されていたシスコ製品群の司令塔として、AI がインフラ全体のデータを検知・分析した上で修正ポイントまで提案。つまり、運用に関しても点ではなく「面」での対応を可能にします。米国ではすでに本番運用している事例もあり、日本での提供は 2027 年前半を予定しています。
セッションの後半では、リンテック株式会社 情報システム部 システム管理課 課長代理の布施智章氏に、Cisco Duo 導入事例を紹介していただきました。粘着関連製品を製造・販売する同社は、リモートワークやクラウド利用の拡大に伴い、VPN 攻撃や ID、パスワード漏えいへの危機感を抱いていました。布施氏は「Cisco Duo の多要素認証により、仮に ID、パスワードが漏れてもすぐに侵入されるリスクは大きく下がった」と説明します。あわせて、認証ログやユーザーの利用状況が可視化されたことで、不審なアクセスを認識できるようになったメリットにも言及しました。全社展開についても「設定がシンプルでユーザーにとって使いやすく、スムーズに進んだ。管理者側の運用負担も含めて大きな不安はなかった」と振り返りました。今後については、AI の普及によるセキュリティ課題の複雑化を念頭に、全体最適でのシンプルなセキュリティを志向していく考えとのことです。


セッションの締めくくりとして西本は、ID、デバイス、アクセス保護を個別に最適化するのではなく、包括的に統合することの意義を説明しました。その利点として「面の防御」「将来への備え」「面の運用」の 3 点を挙げ、AI を悪用したサイバー攻撃に迅速に対応するための対策の重要性を改めて強調しました。
シスコのハードウェアを深掘り「テクノロジー Deep Dive」
最後のセッションとなる「テクノロジー Deep Dive」では、進行役を務める執行役員 スケールビジネス事業統括の石黒圭祐が「AI と切り離せないのはインフラストラクチャー。私たちシスコのアイデンティティのコアにあるのは、ハードウェアでありテクノロジーの卓越性」と切り出し、技術的な深掘りを進めました。
まず紹介されたのは「Cisco Secure Router」です。スケールビジネス事業 ソリューションズエンジニアのVlad Ivanovic が「従来 Meraki と Catalyst に分かれていた 2 系統の製品ハードウェアを 1 台に統合し、型番の選択だけで Meraki 管理と IOS XE 管理のいずれのスタイルも柔軟に選べるようになった」と説明しました。

ハードウェア内部は独自開発の専用チップによって大幅に強化。その理由の 1 つが量子コンピューター時代を見据えたセキュリティ対応です。量子コンピューターが実用化されれば、現在解読に 100 万年かかるとされる暗号が将来 8 時間程度で破られる可能性があり、暗号化通信を今のうちに収集し将来的に解読しようとする「Harvest Now, Decrypt Later(今のうちに収穫し、後で解読する)」という攻撃もすでに確認されています。これに備え、Cisco Secure Router では耐量子計算機暗号「PQC」への対応を今年内に、ファームウェアアップデートのみで実現する予定です。
続くデモでは、スケールビジネス事業 ソリューションズエンジニアの遠藤祐輝が 2 台の Cisco Secure Router(8111-G2-MX)に対し、ファイアウォールや高度なマルウェア防御、IPS、コンテンツフィルターといった多数のセキュリティ機能を投入し、そのような状態でも高いパフォーマンスを実現している様子を実演。前世代のルーターと比較して約 3 倍のスループット(一定時間あたりのデータ処理量)が出ています。

続いて登壇したクラウド&AI ソリューション事業 アカウントエグゼクティブの小山内静は、新発想 AI サーバー「Cisco Unified Edge」を紹介しました。これはコンピューティング、GPU、ストレージ、ネットワーク、さらには Cisco Secure Router の機能までを1台に統合し、クラウドから一元管理できるモジュラー型のオールインワンボックスです。監視カメラでのリアルタイムな危険検知や手術ロボットのように、クラウドとの通信遅延が許されない用途では、AI を動かす場所の一番近くで処理を完結させることが不可欠です。小山内は「AI の需要そのものが拡大しているからこそ、エッジの役割が増えている」と述べました。

なお Cisco Unified Edge は、管理面では Cisco Intersight を搭載しています。それにより、事前にクラウド上でハードウェアやソフトウェアの構成を定義しておけば、現場では箱を設置してケーブルを接続しスマートフォンでデバイスコードを読み取るだけで、クラウドから設定が自動的に反映されます。
AI 活用には知の蓄積が欠かせない。日本には大きな可能性がある
すべてのセッションを終え、シスコシステムズ 社長執行役員の濱田義之が登壇し、参加者へ感謝を伝えた上でイベントを総括しました。

濱田は「AI は、まったく何もないところから新しい価値を生み出してくれるわけではなく、そこには積み重ねてきた『知』が必要になる」と述べ、製造業をはじめとする脈々と続くビジネスの蓄積を持つ日本こそAI によって大きなイノベーションを起こせる国だと、自身の見方を示しました。そして、かつてインターネット普及では出遅れながらもブロードバンド網であっという間に世界有数の水準に達した日本の実績を引き合いに、「AI をうまく使えば、日本はあっという間に他国を追い越す可能性がある」と力を込めます。
また、シスコが新製品のリリース時、AI に関しては日本市場を優先していることを明かしました。
その一方で濱田は、AI の成長と両輪で進めるべきものとして基盤整備、とりわけサイバーセキュリティ対策の重要性を強調します。生成 AI の普及によって言語の壁がなくなり、日本もサイバー攻撃の対象にされやすくなった状況を念頭に、シスコは国家サイバー統括室や防衛省、NICT(情報通信研究機構)などと脅威情報の共有や教育面で連携を進めていると説明。「AI の成長を進めながら、皆さまとともに日本を守っていきたい」と締めくくりました。

盛況だった体験ブース。パートナー・ディストリビューターの展示も
セッション終了後、会場に隣接する体験エリア「Meet the Experts」において、この日紹介したソリューションを実機でじっくり確認したり、シスコのプロダクトエキスパートやエンジニアと直接対話したりできる機会を設けました。
あわせて会場内には、シスコの販売パートナー・ディストリビューター各社によるブースも設置しており、それぞれ特色あるサービスを紹介。販売パートナーでは NTT データ ルウィーブ、NTT 東日本、高千穂交易、日本ビジネスシステムズ、ユニアデックスが、ディストリビューターでは SB C&S、ダイワボウ情報システム、ネットワンパートナーズ、マクニカに出展いただきました。
次回からは、「Meet the Experts」に設けられた各ブースについてお届けします。