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ネットワーク アーキテクチャ考 (14) 「『仮想化』は何のため(再び)、そして変革へ」

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前回前々回と、仮想化における課題を書きました。しかし、これらはまだ初期段階の課題です。現時点での仮想化、少なくとも SP(サービスプロバイダー)領域で NFV と呼んでいるものは、従来のアーキテクチャで実装した機能をほぼそのまま VM でエミュレートしているに過ぎません。仮想化ならではの恩恵を活かすためには、現在のプロセス モジュール構成でよいのか、そのまま VM に載せるのではなくコンテナとして実装した方が良いのではないか、プログラミング パラダイムやコーディング手法自体を見直した方がよいのではないか、などのことを、じっくり吟味する必要があります。

もう一つ。「仮想化の目的はコスト削減」と言う声を多く聞きますが、これには異を唱えたい。もちろん仮想化によって、初期投資を削減することはできます。しかし、ある程度のキャパシティ、性能を実現しようとすると、仮想化だけではコスト削減にはなりません。むしろ、仮想化のオーバーヘッドがある分、電源容量なども増大する可能性があります。さらに、オープンソースを含めた、より多様で複雑なインテグレーションが必要となるため、そのままではコストは増大する傾向にあります。

これらのコスト上昇リスクを抑えるためには、入念な検討が必要です。一方、仮想化の目的や大義名分をコスト削減だけに置いてしまうと、仮想化プロジェクトの予算は削られ、限られたリソースで無理難題を強いられることになりますから、プロジェクトは成功するどころか疲弊して迷走します。せっかくの変革の契機なのに、これでは本末転倒です。既存の価値のままコスト削減を追求するのではなく、新たな価値を追求する方が良いと思います。

では仮想化の価値とは一体何でしょうか。以前「仮想化は何のため」というエントリーで、次の 2つを挙げました。

  1. 必要なときに必要なサービスやリソースを、迅速にそして自動的に提供することを可能にすること
  2. あるオブジェクトを仮想化エンティティへと断片化することにより、並列分散処理を行うこと

しかし、何よりもまず重要なのは、これら仮想化アーキテクチャのメリットを十分に活かせるような、これまでの技術実装やアーキテクチャの見直し、サービスの迅速な展開を実現するアジャイル体制への変革なのではないかと、最近は痛感しています。これは言う程簡単なことではありません。現在の構造にもそれを必要として来た理由がある訳ですから。

このことを同僚と議論していたら、最近彼が出たアジャイル基礎のセミナーで、Kotter の 8つのステップが取り上げられた、と話してくれました。Kotterの『Leading Change』[1]!元は 1995年の Harvard Business Review の論文ですが、書籍化され何度となくベストセラーになっています。私も数年前、行き詰まりを感じていたときに当時の上司に読まされました。なかなか継続的に実践するのは難しいのですが、よい機会なのでここに引用させて戴こうと思います。現実を直視し、徹底的に危機感を持ち、チームを形成して行動し、周囲に影響を与え、文化として定着させる。これぞ、生きて仕事をすることの醍醐味というものではないでしょうか。変革を愉しみましょう!!

The Eight-Stage Process of Creating Major Change

1.  Establishing a Sense of Urgency
「危機意識を徹底させる」
現状に安住してはならない。現実の競合やマーケットを直視する。

2.  Creating the Guiding Coalition
「先導するチームを形成する」
孤軍奮闘というよりは、十分な力と知識、そしてリーダシップを持ったチームで変革を乗り切る。

3. Developing a Vision and Strategy
「ビジョンと戦略をつくる」
変革の為にはビジョンが必要。ビジョンを実現する為に戦略が必要。

4. Communicating the Change Vision
「変革のためのビジョンを周知する」
あらゆる手段を使ってビジョンを継続的に伝達する。先導チームは手本を示す。

5. Empowering Employees for Broad-Based Action
「従業員の幅広い活動を促す」
障害があれば取り除く。リスクを取ることや、新しい発想やアクションを奨励する。

6. Generating Short-Term Wins
「短期的な成果をつくる」
少しでも達成できることから積み上げる。達成を賞賛し分かち合う。

7. Consolidating Gains and Producing More Change
「改善を積み上げて、さらなる変革へ」
築いた信頼を基に、さらに構造的な変革を推進する

8. Anchoring New Approaches in the Culture
「新たな方法を、文化として根付かせる」

 

[1] John P. Kotter, “Leading Change”, Harvard Business Review Press

 

 

Authors

Miya Kohno

Distinguished Systems Engineer, CTO for GSP Japan

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