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注目のセキュリティ研究者:博士号に挑む前に「うっかり」入社した Talos で活躍中の Ashlee Benge


2022年12月7日


Talos のデータ戦略およびインサイト部門のリーダーを務める Ashlee Benge。大変な重荷をかついで日々を乗り切る彼女の特技とは?

Ashlee Benge に初めて会って彼女の経歴を聞いた人は、たいてい度肝を抜かれます。

ネットワーキングのイベントに参加しているセキュリティ専門家なら、大学でコンピュータサイエンスの学位を取得し、何年かコードをいじくり回していたら「その道の達人」になっていた、というのが平均的な経歴でしょう。

Benge の経歴はそれとはまったく異なります。天体物理学の学位を持つ彼女は、オリンピックにも出場した重量挙げ選手で、マッスルカーの愛好家でもあります。しかし、巡り合わせというのは面白いもので、彼女は今 Talos の一員となって、ロシアに侵攻されたウクライナの安全を守るために重要な役割を果たしています。

そもそも Talos には「うっかり」入社することになったのだと彼女は冗談を言います。

天体物理学の学士号を取得した Benge は、ほかのことに数年取り組んでから博士号を目指そうと考えて就職活動を始めました。Talos 検出チームのアナリスト職に応募した際、担当のリクルーターからは何かの間違いで Talos に応募したのではないかと尋ねられました。サイバーセキュリティ分野の正式な経験こそ持ち合わせていませんでしたが、実は天体物理学を学ぶ過程でコーディング、データベース管理、データ分析に関する優れた能力を身につけていました。

Benge は面接を受けて採用され、サイバーセキュリティの世界に飛び込むことになりました。最初に配属されたのは Talos のアウトリーチチームです。ブログ記事を執筆し、講演者として頭角を現しました。セキュリティカンファレンスでは、セキュリティ分野における雇用の多様性や、女性がセキュリティ分野に参入しやすい環境の実現、といったテーマについて何度も講演を行いました。

その後、シスコの脅威ハンティングチームでしばらく働いてから、Talos に戻ってデータ戦略およびインサイト部門のリーダーになりました。Talos のチームメンバーをリソースとして活用してサイバーセキュリティの知識を高めています。

彼女は今でも天体物理学で学んだことを活用し、セキュリティ分野での長年の経験を活かして、大量のデータセットの中から Talos の研究者に役立つ実用的なインテリジェンスや情報を抽出しています。

「Talos が持っているすべてのデータが水だとすると、配管やフィルタを組み立てて、できる限りきれいで使いやすいデータを、できる限りよい方法で各チームに供給するのが私の役目です」と Benge は言います。「天文学や天体物理学の研究では、数学的モデリング、コード作成、大規模なデータセットの処理が中心的な作業になります。こうした分析スキルや問題解決能力は今でも常に利用しています」。

Benge が取り組んでいるのは、自分の職務だけではありません。ロシアに侵攻されたウクライナを支援する Talos とシスコの大規模な取り組みにも今年の 3 月から参加しています。彼女は Cisco Secure Endpoint 製品チームで働いたことがありますが、このサービスは現在、ウクライナのあらゆる組織に無償で提供されています。また、現在は経営学修士号(MBA)を取得するために大学に戻っています。

こうしたスキルや経験を買われて、J.J. Cummings のチームとともにウクライナの組織や企業を支援しているより大きなチームに参加することになりました。

「この活動では運営側に立つという特別な経験をしています。ウクライナに関する調査結果をスムーズに伝達し、パートナーとのパイプラインを構築しながら、ウクライナでの作業を追跡するのに使用しているあらゆるプロセスを合理化して、J.J. のチームが最善を尽くせるように支援しています」と彼女は言います。

ウクライナ以外では、MBA を取得したら営業関連やマーケティング関連のチームとより緊密に連携して、Talos がしている仕事や強力なセキュリティプログラムを構築することのメリットについて議論を深めていきたいと Benge は考えています。

「なぜそんなことをしたいのかとよく不思議がられます」と彼女は言います。「でも、私がこれまで学んできたのは純粋な科学や数学といったものばかりで、ビジネスや金融には本当にうといのです。Talos が素晴らしい仕事をしていることは誰もが認めるだろうと思いますが、たとえば CISO などがセキュリティ製品を購入したいと考えていても、組織の意思決定者は Talos を利用することでどのような成果が得られるのか正確には理解できていないと思います」。

というわけで、Benge は仕事を山ほど抱えているため、プライベートではスマートフォンやラップトップを触らない時間を毎日設けるようにしています。重量挙げのジムで自己新記録や次の大会に向けてトレーニングを行ったり、愛犬を散歩させたりするのがお気に入りの過ごし方です。Talos での現在の職務は、勤務時間帯を柔軟に選択でき、自分の時間を確保できるので気力と集中力を高めて仕事に戻れると彼女は言います。

Benge は、公演やプレゼンテーションをもっと行いたいと考えています(Talos のライブストリームpopup_iconには何度も出演しています)。そして自分の体験談やユニークな経歴を披露して、あらゆる経歴の持ち主がサイバーセキュリティの分野に飛び込めるように応援したいと考えています。

人口統計に基づいて多様性のあるチームを構築するのは大切なことですが、経歴や経験レベルの多様性もセキュリティチームでは考慮する必要があります。

「セキュリティの分野に興味を持っているユニークな考えの持ち主に出会うことがあるのですが、『典型的』な経歴を持っていないのでこの分野に進むのをためらっていることが多いのです」と彼女は語ります。「これは本当に残念なことです。こうした多様な経歴の人々を採用すれば、より創造的で、ダイナミックで、興味深い成果を生み出せるようになるはずです」。

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本稿は 2022 年 11 月 29 日に Talos Grouppopup_icon のブログに投稿された「Researcher Spotlight: How working for Talos started out as an ‘accident’ for Ashlee Benge before coming a second careerpopup_icon」の抄訳です。

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