Interop Tokyo 2021 基調講演「シスコによる5G活用への提言と取り組み」

2021年1月よりシスコシステムズ合同会社にて情報通信事業の統括を務めさせていただくことになりました濱田です。こちらでは 4月 16日に開催された Interop Tokyo 2021 で「シスコによる 5G 活用への提言と取り組み」をテーマに行った基調講演の内容をご紹介します。

5G を取り巻く環境~インターネット エコノミクスの再定義の必要性

日本ではすでに 5G の商用サービスが開始され、携帯事業者各社の新プランも発表されています。もはやインターネットは私たちの働く、遊ぶ、学ぶなど生活における必要不可欠な社会基盤であり、さらに今回のコロナ禍によりその重要性は高まる一方です。

しかし世界に目を向けると、まだ 30億人以上の人々がつながらないまま。情報格差やデジタルデバイドなどの目に見えない不都合は、解消しなければならない課題です。そんな中、現在のインターネットは提供事業者の経済合理性の観点で、課題を抱えています。

このインターネットのエコノミクスを再定義しなければ、次の 10億人をつなぐことができません。この再定義を可能にするためにシスコが考える 5G 時代のネットワークアーキテクチャについてお話したいと思います。

シスコの考える 5G 時代のネットワークアーキテクチャ

インターネットのエコノミクスを再定義には、3つのポイントがあります。それは、「収益性の確保」、「コストの削減」、そして「リスクの軽減」です。

①収益性の確保

サービスプロバイダーの収益は、これまでの 4G では一般消費者からの売上が 84%を占めていたのに対し、5G時代には企業および IoT における売り上げが 52%を占めると予想されています。

つまり、5G では目的と用途、サービス品質への期待値が異なるトラフィックが混在します。RAN・エッジデータセンターからトランスポート、パケットコアまでを SLA や目的に応じたエンドツーエンドのネットワークスライスをまず行い、さらに、サービスや区間での運用分割損やマニュアルでのハンドオーバを極力排除した「クロスドメイン オーケストレーション」の実現が必須となります。これにより、サービスの追加や変更があっても即時性を担保しつつ、OPEX がそれに比例して上昇するのを抑えることができます。

 

②コスト削減

年率 35%ものインターネットのトラフィック上昇に応じ、サービス基盤への継続投資が必要です。一方、トラフィックへの課金は同比率で上がることはなく、むしろビット単価は大幅に下げなければなりませんので、従来のアーキテクチャで継続していては、健全なビジネスの継続が難しくなります。

シスコはイノベーション、アーキテクチャ変革により大幅なコスト削減、TCO の最適化を進めることが可能であると考え、シリコン、オプティクス、ソフトウェア、システムの 4つの領域で技術革新に投資を行い、それらを総称して「Converged SDN トランスポートアーキテクチャ」として推進しています。

ここでもっとも重要な要素となるのは、ルーデッド オプティカル ネットワーキングです。これまでルータは IP トラフィックのルーティング、それらを飛ばすのはオプティカルトランスポートと役割が分かれており、レイヤごとの設計、導入、運用管理が必要でした。この課題を「デジタルコヒーレントオプティックス」技術により解消し、その技術をルータに取り込むことによってシンプルな構成を可能にするのがルーデッド オプティカル ネットワーキングです。セグメントルーティングにより、ルータが処理するトラフィックをすべて束ねて全体をオーケストレーションします。

 

さらにインターネットの経済性の再定義にとってもうひとつの重要な基盤がシリコンです。ムーアの法則が失速したと言われる中、シスコではシリコン設計を全面的に見直し業界トップクラスのパフォーマンスを実現するプログラマブル シリコン アーキテクチャ「Cisco Silicon One」を、2019年12月より提供開始しました。従来の2倍のネットワーク容量と2倍の電力効率を実現し、マーケットに非常に大きなインパクトを与えました。

2020年10月にはポートフォリオを7つに拡大。2021年末にはポートフォリオが10種類にまで拡大する予定です。特に 25.6Tbps をサポートする G100は、マーケットにさらなる大きなインパクトを与えると考えています。

電力コストは 100G 1ポートあたり年間の家庭の冷暖房費からコーヒー 2杯分へ。輸送コストは 900キロ・10パレットから 15キロのダンボール箱一つへ。これは単なる電力、輸送コスト削減だけではなく、環境問題、低炭素型社会モデルへの対応についても Silicon One の技術革新が貢献することを意味しています。

 

③リスクの低減

今やネットワークはあらゆる業種にとっても、また個人の生活にとっても必要不可欠なインフラとなっています。そのため、サイバーセキュリティ対策はもちろんのこと、サービスプロバイダーのネットワークインフラについても、信頼できる技術のプラットフォーム上に構築されていなければなりません。

シスコ製品にはセキュアブートや Trust Anchor Module など、ハードウェアの偽造やバックドアを抑止するシステムが、幾重にも組み込まれています。

またソフトウェア開発においては、必ず準拠すべきプロセス「Cisco Secure Development Lifecycle」があります。CSDL には各開発段階において何をすべきか、どういった観点でアセスメントをすべきか、どのようなツールを使って診断をすべきかが規定されています。

このように、重要インフラに使用される製品のハードウェアから、ソフトウェアまで、さらに信頼性の見える化とレポートまで、信頼性の高いシステム供給に向けて、シスコはアクションを取り続けています。

シスコが支援する 5G ユースケース紹介

5G のサービス提供形態には、広域エリアでサービスプロバイダーが5Gインフラをスライスして切り出しサービス提供する「5G Public Network」と、企業・自治体の敷地内で独自利用する「5G Private Network(ローカル 5G)」があります。こちらは企業が自前で構築・運用するケースもあれば、サービスプロバイダーのサービスとして提供される場合もあります。

すでに、製造業や医療の分野で 5G のユースケースが創出されておりますが、5G のポテンシャルを考えれば、その活用分野はますます広がると考えられます。

ただし、いままでにないユースケースを実現するには、多くのイノベーションと最適化が必要です。パートナー様、メーカー様とみんなで社会を変えていきたい、そんな5Gの未来を実現するためシスコは 2020年11月、東京オフィスに「5G ショーケース」を設立しました。シスコはこの5Gショーケースにより収益性の確保、コストの削減、リスクの軽減を実現する最適なアーキテクチャを提言し、日本のデジタル化に貢献していきたいと考えています。

「5G ショーケース」の詳細はこちらの記事をご確認ください。

発表以来、すでに多くの企業から具体的なユースケース検証を実施したいというご要望が相次いでいます。ぜひパートナーの皆様に多くのソリューションを持ち込んでいただき、このショーケースからイノベーションを起こしていきましょう。

今回は、5G 活用へのシスコの提言と取り組みについてお話しさせていただきました。5G 活用によるデジタル変革はひとつの企業で達成できるものではありません。私たちシスコは皆さまと一緒に、新しい時代を創り上げて参りたいと思います。

Interop Tokyo 2021 でシスコが提供した 5G 関連の講演は、下記のページでご覧いただけます。

https://www.cisco.com/c/m/ja_jp/5g-showcase/interop-tokyo02021.html

シスコが考える 5G 時代のエンドツーエンドアーキテクチャについては、ホワイトペーパーをご参照ください。

https://www.cisco.com/c/dam/global/ja_jp/products/catalog/pdf/cisco-5g-white-paper.pdf

濱田 義之

2021年1月より専務執行役員 情報通信産業事業統括として、サービスプロバイダー事業を統括しています。現職以前は、NTT 事業本部長として、NTT グループ事業を統括してきました。

それ以前は、最高技術責任者および最高セキュリティ責任者として、日本における技術戦略を統括するとともに、シスコのサイバーセキュリティ技術の普及、国内でのパートナーシップ強化を推進してきました。

大学卒業後、住友電工通信エンジニアリング株式会社に入社、光伝送機器の開発支援構築業に従事しました。1999年、KVH株式会社(現Colt Asia)に入社。デザインエンジニアリングマネージャ、サービス開発・ネットワーク計画部部長、サービスストラトジー&デザイン執行役員、テクノロジー本部長執行役員を歴任し、同社のネットワークおよび IT サービスの戦略立案から、プラットフォーム開発・導入、アジア太平洋地域への拡張などを推進しました。2016年1月よりシスコシステムズに在籍。

1997 年 日本大学理工学部卒。