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PROMETHIUM、StrongPity3 APT を利用して世界中に感染拡大


2020年7月16日


ニュースの概要

  • StrongPity の攻撃者は過去 4 年間で何度も特定されているにもかかわらず、攻撃をやめようとしていません。
  • 感染拡大は続き、一見関連がないと思われる国まで攻撃されています。
  • 国を超えた感染拡大が続いていることから、このマルウェアは他の攻撃者が利用できるように国外に輸出されている可能性があります。

エグゼクティブサマリー

2012 年に活動を開始した PROMETHIUM の攻撃者は、過去数年にわたって何度か特定されていますpopup_icon。それにもかかわらず活動を続け、しかも攻撃範囲を拡大しています。Cisco Talos は、コードの類似性、コマンドアンドコントロール(C2)パス、ツールキットの構造、悪意のある振る舞いなどの指標を照合することで、約 30 の新しい C2 ドメインを特定しました。PROMETHIUM のアクティビティは、作成された年月ごとに分類するとピークが 5 つあることがわかっています。

最近の変化:

Talos が取得したテレメトリから、PROMETHIUM が複数の国へと狙いを広げていることが判明しています。StrongPity3 に関連したサンプルは、コロンビア、インド、カナダ、ベトナムの住人を対象としていました。このグループには、トロイの木馬化された 4 つの新しいセットアップファイルが含まれています。Firefox(ブラウザ)、VPNpro(VPN クライアント)、DriverPack(ドライバパック)、5kPlayer(メディアプレーヤー)の 4 つです。

仕組み:

Talos は最初の感染経路を特定できませんでしたが、有名なアプリケーションのインストールファイルをトロイの木馬化して使用している点は、以前に公開されたキャンペーンと一致しています。そのため、2018 年の CitizenLab のレポートpopup_iconに記載されているように、初期の感染経路は水飲み場型攻撃か、ネットワーク上でリクエストを傍受するタイプのいずれかであると考えられます。
トロイの木馬化されたセットアップファイルによってマルウェアと正規のアプリケーションがインストールされます。この方法は、マルウェアの活動を隠蔽するのに最適です。マルウェアをドロップする前に Windows Defender を再設定することで検出されないようにしている場合もあります。

特徴:

このグループは主にスパイ活動に特化しており、最新のキャンペーンでもその傾向が続いています。PROMETHIUM は、システム上で検出した Microsoft Office ファイルを窃取します。これまでの調査popup_iconでは、国家が背後にいる脅威との関連さえ明らかになっています。攻撃者が特定された後ですら新しいキャンペーンが続いていることから、この攻撃者の使命を達成する決意が伺えます。
PROMETHIUM は年を追うごとに活発になっています。PROMETHIUM のキャンペーンは何度か特定されていますが、それでも攻撃をやめようとはしていません。

2019 〜 2020 年のキャンペーン

想定される感染経路

さまざまなサンプルを分析し、多くの C2 サーバを特定したにもかかわらず、Cisco Talos は感染経路を特定できませんでした。悪意のあるインストーラをホストするために実際のアプリケーションの Web サイトが侵害されたという痕跡はありません。感染経路は、サプライチェーン攻撃とも関連していないようです。

CitizenLabpopup_icon の以前の調査と新しいキャンペーンのアーティファクトから、感染経路は 2018 年のものと同じであると思われます。標的となったユーザが公式の Web サイトで正当なアプリケーションをダウンロードしようとすると、ISP は HTTP をリダイレクトします。過去に利用された手法の詳細については、CitizenLab のホワイトペーパーをご覧ください。

新たな被害者

CitizenLab のレポートでは、国家が背後にいると思われる最初の攻撃経路にサービスプロバイダーが介在していることが示されています。また、合法的なスパイウェア企業によって開発された有名なマルウェアである FinSpy から StrongPity2 に変更されていることも記載されています。当時、被害者の大半はトルコとシリアの住人でした。

Talos の調査によると、被害者は現在、世界のさまざまな地域に拡散しています。

StrongPity の影響を受けた国

PROMETHIUM に多くの異なるバージョンが存在することと、ドメインがハードコードされているという事実から、Builder などのツールがバイナリの生成に使用されていることがわかります。PROMETHIUM の攻撃者が新しい国に感染を拡大しようとしているか、この攻撃者が開発した悪意のあるフレームワークが、これまで考えていたよりも多くの国に輸出されているかのどちらかです。

トロイの木馬化された Firefox インストーラ

トルコの住民が最も多く標的にされたという CitizenLab の主張を裏付けるものとして、Firefox インストーラのトルコ語版があります。

C2 インフラストラクチャ

Talos は 2019 年 7 月以降、少なくとも 3 つの異なるキャンペーンを特定し、ドメインの作成日に基づいてキャンペーンを分類しました。

ドメイン分類

ドメインを各キャンペーンに分類していますが、順番に実施されたわけではありません。実際、各ドメインを分析したところ、複数のキャンペーンにまたがっているのものもあり、一部は 2018 年に遡ります。

ドメインアクティビティのタイムライン

これらのドメインの一部はすでにシンクホール化されている可能性があるため、脅威にはなりません。ただし、ヒット数が依然として多いため、感染経路はまだ有効です。興味深い点は、この攻撃者が C2 で HTTPS を使用していることです。常に自己署名証明書を使用しています。

StrongPity2 と StrongPity3 の主な違い

StrongPity3 は StrongPity2 を進化させたもので、いくつか違いがあります。StrongPity3 は libcurl を使用しておらず、C2 へのすべてのリクエストに winhttp を使用しています。HKCU\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Run レジストリキーを使用することで永続化していた仕組みは、サービスを作成する方法に置き換えられています。このサービスはパッケージごとに名前が違います。サービス実行ファイルの役割は、サービスの起動時に C2 接続モジュールを起動することだけです。それ以外のマルウェアのフローは両バージョンで同じです。

ドロップされたファイルは、4CA-B25C11-A27BC などのような常に同じパターンで C:\DOCUME~1\<ユーザ>~1\LOCALS~1\Temp\ フォルダに保存されます。C2 のパスパターンも変更されています。Talos では、ini.php、info.php、parse_ini_file.php といったパスを特定しています。パスパターンはランダムではなくなり、動物の名前も使用されていません。

マルウェア

トロイの木馬化されたアプリケーション

Talos は 2019 年 7 月以降、トロイの木馬化された 4 つの異なるバイナリを検出しています。5kplayer、ドライバパック、Firefox のトロイの木馬化されたソフトウェアは、永続化するためにサービスを使用します。トロイの木馬化された VPNpro アプリケーションは AutoRun レジストリキーを使用します(2019 年 7 月以前に発表された文書参照)。

トロイの木馬化された Firefox インストーラのウイルス対策ソフトチェック

ツールキットをハードドライブに書き込む前に、偽の Firefox インストーラは PowerShell コマンドを実行します。このコマンドは、マルウェアが使用するディレクトリを Windows Defender の除外リストに追加しながら、サンプルの送信を防ぎます。その後マルウェアをドロップする前に、ESET または BitDefender ウイルス対策ソフトがインストールされているかどうかを確認します。インストールされている場合は何もドロップしません。

次に、トロイの木馬化された 5kplayer のインストーラについて説明します。5kplayer のセットアップでは、ツールセットに含まれる 3 つのファイル(rmaserv.exe、winprint32.exe、mssqldbserv.xml)が導入されます。

実行フロー

実行フローからわかるように、セットアップでは rmaserv.exe のみが実行されます。残りのモジュールは、rmaserv.exe がサービスとして実行されるときに rmaserv.exe によって実行されます。

悪意のあるサービス:RMASERV.EXE

RMASERV.EXE には主に 2 つの機能があります。1 つは、「help」パラメータを指定して実行するとサービスをインストールし、自身をサービスとして起動する機能です。このパラメータは、トロイの木馬化されたインストーラで使用されます。このタスクを実行するコードを次に示します。

rmaserv.exe エントリ関数

この関数は、Microsoft Windows のドキュメントに記載されている設計パターンに従っています(こちらpopup_iconを参照)。これには大きな別の効果があります。サンドボックス上で rmaserv.exe が単独で実行された場合(パラメータがない場合)、サービスが作成されないということです。そのため、実行されても何も発生せず、動的分析が正しく行えません。

2 つ目の主な機能はサービスです。このサービスには 2 つの機能があります。まず、winprint32.exe 実行ファイル(C2 接続モジュール)を起動し、イベントが発生するまで待機します。このイベントは C2 接続モジュールが利用する仕組みで、サービス実行ファイルにすべてのコンポーネントを削除するように警告します。

C2 接続モジュール:WINPRINT32.EXE

サービスは、Explorer の実行状況をチェックすることでユーザがログインしているかどうかを定期的に確認します。explorer.exe が実行されるとサービスは環境を設定し、C2 接続モジュール winprint32.exe を実行します。

winprint32.exe はドキュメント検索モジュールを起動し、C2 に接続して、収集したドキュメントを送信します。「YeucqCcpgapiZISEdRSNiLpopup_icon」という名前のミューテックスが作成された後、次の 2 つのプロセスが開始されます。

  • C:\DOCUME~1\<USER>~1\LOCALS~1\Temp\4CA-B25C11-A27BC\mssqldbserv.xml
  • C:\DOCUME~1\<USER>~1\LOCALS~1\Temp\4CA-B25C11-A27BC\wintasks.xml

ミューテックスの作成

その後、無限ループが開始されます。ループ内の最初のステップは、HTTPS で C2 に接続することです。最初の接続時に、ハードディスクボリュームのシリアル番号に基づいて被害者の ID を送信します。

C2 接続ループ

6,050 ミリ秒待機した後、「sft」ファイル(窃取するドキュメントを含むエンコードされたアーカイブ)を検索し、C2 に送信します。

その後、再起動する前にさらに 6,050 ミリ秒スリープします。このモジュールは、ツールキットの他のモジュールとは独立して実行できます。Talos では、サンドボックス回避メカニズムも特定できていません。

ドキュメント検索モジュール:MSSQLDBSERV.XML

このモジュールについては、以前こちらpopup_iconの記事で説明されています。このツールの目的は、ハードドライブを解析して特定の拡張子を持つファイルを抽出し、抽出したファイルのアーカイブを作成することです。作成されたアーカイブは最後に C2 に送信される前にエンコードされます。

mssqldbserv.xml メイン関数

興味深い情報がいくつかありますので公開します。この関数が最初からバックグラウンドで実行されるように設計されたものでないことは明らかです。メイン関数の最初の命令でコンソールウィンドウが非表示になります。その後、古い「sft」ファイルはすでに窃取したものとして削除します。6,500 ミリ秒待機した後、ターゲットファイルの検索を開始します。

SFT ファイル作成ルーチン

作業ディレクトリがベースのパスとして使用されます。このサンプルケースでは C:\DOCUME~1\<ユーザ>~1\LOCALS~1\Temp\4CA-B25C11-A27BC\ です。選択された各ファイルが kr.zp ファイルに圧縮されます。次に kr.zp データが読み取られ、独自の同じエンコード方式でエンコードされます。

byte = byte XOR (byte >> 4)

ファイルが 2048 X 53 バイト(〜 106kb)より大きい場合は、以下の命名規則に従って分割され、複数の sft ファイルとして保存されます。

gui_app0_[VolumeSerialNumber]_[MonthDayHourMinuteSecondMilliseconds]_[Counter].sft

このモジュールにはループがなく、通信モジュールの起動時にのみ実行されます。つまり、サービスの開始時に一度だけ実行されるということです。

不思議な WINTASK.XML

サンドボックスでの最初の分析では、C2 接続モジュールがドキュメント検索モジュールと同じパスでこのファイルを検索して実行しようとすることがわかっています。手動分析でさらにその裏付けをとろうとしましたが、このファイルを取得できませんでした。ツールキット内のすべてのファイルは、トロイの木馬化されたソフトウェアによってドロップされます。C2 接続モジュールがこのファイルの存在を想定していることは明らかです(具体的な名前はドロッパーごとに異なります)。Talos が分析したトロイの木馬化されたソフトウェアはいずれもこのファイルをドロップしませんでした。手動分析では、ファイルをドロップするかどうかを判断する箇所が見つかっていません。1 つ可能性があるとすれば、分析したソフトウェアが途中で放棄された古いコードの残骸であるということです。

まとめ

PROMETHIUM の攻撃者はひたむきな活動家で、特定されても攻撃の手をゆるめることはありません。最初にレポートされた後、ツールキットは変更されましたが、手法や手順は変わりませんでした。それ以来ツールキットは同じまま、活動を可能な限り効率的にするための更新だけが行われています。この間、ヨーロッパと中東を最初のターゲットにしていた裏でほとんどの大陸の組織を対象にして世界中に拡散しています。

これらの特徴から、この攻撃者が実際には雇用に関する企業向けサービスに属している可能性があります。各マルウェアは非常に類似している点が多いものの、わずかに変更されて異なるターゲットに対して利用されているため、専門家によってパッケージ化されたソリューションであると考えられます。

また、Citizen Lab で説明されているように、過去には StrongPity ではなく合法的なスパイウェアが使用されていたこともありました。このことは Talos の見解を裏付けている可能性があります。

カバレッジ

今回の脅威は、以下の製品で検出してブロックすることが可能です。

Advanced Malware Protection(AMP)は、これらの攻撃者がマルウェアを実行できないようにするための最適な方法です。AMP 内に存在するエクスプロイト防止機能は、このような未知の攻撃からお客様を自動的に保護するように設計されています。

Cisco クラウド Web セキュリティ(CWS)または Web セキュリティアプライアンス(WSA)の Web スキャンは、悪意のある Web サイトへのアクセスを防止し、上述の攻撃で使用されるマルウェアを検出します。

E メールセキュリティは、攻撃の一環として攻撃者が送りつける不正な電子メールをブロックします。

次世代ファイアウォール(NGFW)、次世代侵入防御システム(NGIPS)、Cisco ISRMeraki MX などのネットワーク セキュリティ アプライアンスは、今回の脅威に関連する不正アクティビティを検出します。

AMP Threat Grid は、悪意のあるバイナリを特定し、すべてのシスコ セキュリティ製品に保護機能を組み込みます。

Umbrella(シスコのセキュア インターネット ゲートウェイ(SIG))は、社内ネットワークの内外で悪意のあるドメイン、IP、URL への接続をブロックします。

オープンソースの Snort サブスクライバルールセットをお使いであれば、Snort.orgpopup_icon で購入可能な最新のルールパックをダウンロードすると、最新状態を維持できます。

IOC(侵入の痕跡)

ハッシュ

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ドメイン

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hostoperationsystems[.]com
inhousesoftwaredevelopment[.]com
mentiononecommon[.]com
safecopydisk[.]com
fileservingpro[.]com
network-msx-system33[.]com
mx3-rewc-state[.]com

 

本稿は 2020年6月29日に Talos Grouppopup_icon のブログに投稿された「PROMETHIUM extends global reach with StrongPity3 APTpopup_icon」の抄訳です。

 

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