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注目の脅威:MedusaLocker


2020年5月18日


概要

MedusaLocker は 2019 年に検出popup_iconされて以来、インシデントが続出しているランサムウェアファミリです。検出されてから複数の亜種が見つかっています。しかし機能はほぼ変わりません。主な違いは、暗号化ファイルに使用されるファイル拡張子と、データが暗号化された後、システムに表示される身代金要求メッセージの内容や外観くらいです。

MedusaLocker は最新のランサムウェアファミリの標準的な機能だけでなく、独自の機能もいくつか備えています。

  • MedusaLocker は、感染したシステムでマッピングされたネットワークドライブを見つけ、コンテンツを暗号化します。
  • 同じ暗号化目的で Windows の機能を改ざんし、ネットワークドライブのマッピングを強制的に上書きします。
  • 同マルウェアは、ICMP スイープによるプロファイリングで同一ネットワーク上のシステムを割り出し、より確実な身代金回収を試みます。

ICMP スイープには、同一ネットワーク上の他のシステムを特定する目的もあります。システムを検出すると SMB プロトコルを利用し、ネットワーク内でアクセス可能な場所の検出を試みます。ファイルが見つかると、ローカル保存データと同様に暗号化し、身代金を要求します。

MedusaLocker

MedusaLocker の基本的な特徴は、一般的なランサムウェアと大差ありません。実行に成功すると、%APPDATA%\Roaming\ ディレクトリ下に自己複製を送り込みます。

永続化を確立するため Windows 内でタスクスケジュールを設定し、前もって %APPDATA%\Roaming に送り込んでおいた PE32 を実行します。

特筆すべきなのは、最初の感染プロセスが完了すると、15 分周期でタスクを実行する点です。これにより暗号化の実行が 1 回限りで終わらず、ファイルなどのデータがいつまでも支配されます。

前述のとおり MedusaLocker は、感染したシステムからアクセス可能なディスクパーティションを同じプロセスで次々と暗号化するよう設定されています。

暗号化したファイルには、新しいファイル拡張子を追加します。現在は数個の亜種が広まっており、追加されるファイル拡張子には複数のバリエーションがあります。分析した図の例では「.encrypted」というファイル拡張子が追加されています。

またデータを見つけて暗号化したディレクトリには「HOW_TO_RECOVER_DATA」(データを回復する方法)という身代金要求のメッセージファイルが保存されます。身代金要求メッセージは、今ではよく見かける身代金要求書と役割が同じで、被害者から攻撃者に連絡を取り、身代金を支払うための具体的な指示が記載されています。

文面はサンプルによって異なり、HTML のスタイルにも若干のばらつきがあります。

被害者による暗号化解除を阻むため、MedusaLocker は Windows オペレーティングシステムに搭載された「vssadmin.exe」ユーティリティを悪用してシャドウコピーを削除します。同種の手口は多くのランサムウェアファミリでごく一般的に使用されています。

先ほど述べたとおり、MedusaLocker は ICMP を使用したネットワーク探索により、アクセスできるシステムを突き止めて、より多くのファイルの暗号化を試みます。

 

MedusaLocker は追加のホストを検出すると SMB を使用し、感染したシステムから接続できる共有データストレージのアドレス一式を突き止めます。

さらに Windows レジストリを使用して、感染したシステムを共有ネットワークドライブに強制的に再接続し、暗号化被害の拡大を試みます。

分析の結果、1 つのバイナリから次のデバッグアーティファクトも見つかりました。

MedusaLocker はネットワークの探索力に長けているため、ほんの一角に感染するだけで環境全体に多大な被害をもたらします。

MedusaLocker の特徴として注目に値するのは、どのサンプルでも使用されていた、ミューテックスの静的リストです。多量の MedusaLocker サンプルを分析するうち、ハードコーディングされた次のミューテックス値を特定しました。

{3E5FC7F9-9A51-4367-9063-A120244FBEC7}
{6EDD6D74-C007-4E75-B76A-E5740995E24C}
{8761ABBD-7F85-42EE-B272-A76179687C63}
{E398BEDC-2FD6-4BDE-BFC4-F5633E13B901}

組織は MedusaLocker の感染を防止する追加手段として、ミューテックスのブラックリストの作成を検討するとよいでしょう。これらのハードコードの値を使おうとするアプリケーションの実行はすべて、ブラックリストで効果的にブロックでき、感染を予防できます。

MedusaLocker 対策

MedusaLocker から身を守るには、よく練られた多層型のサイバーセキュリティ プログラムが不可欠です。

  • MedusaLocker の中心的な拡散手段は電子メールであるため、防御にはスパムメールフィルタも重要です。
  • MedusaLocker は SMB 共有データとローカルストレージデバイスの中身を暗号化しようとするため、こまめに SMB 共有データを更新し、システムを強化しましょう。
  • 従業員に対しては、フィッシングに関するトレーニングや啓発プログラムを定期的に実施しましょう。
  • 強力なパスワードポリシーを採用し、Cisco Duo などの多要素認証を使用しましょう。
  • Cisco AMP for Endpoints など、最新のエンドポイント セキュリティ ソフトウェアをネットワーク全体に展開しましょう。

併せて、堅牢なオフラインバックアップとリカバリ戦略をプロアクティブに整備しておく必要もあります。戦略は時間の経過やビジネス要件の変化に応じて定期的に確認・刷新し、実際のリカバリ場面で機能することを確認してください。

まとめ

今回紹介したようなランサムウェア攻撃に対し、組織としての防御策は必須です。一攫千金を狙う攻撃の台頭を見れば、バックアップとリカバリの戦略が不十分なことは一目瞭然です。堅牢な多層防御戦略を実践し、MedusaLocker などのマルウェアから環境を保護する必要もあります。ランサムウェア開発者は、身代金をより確実に搾り取れるよう、企業ネットワークに最大限の損害を与える機能を絶えず追加しています。同様の傾向は今後も続くと考えられます。組織は十分な対策・リカバリプランを用意しておき、高度なランサムウェアなどの破壊的な攻撃を受けても、速やかに通常業務を再開できるようにする必要があります。

カバレッジ

お客様がこの脅威を検出してブロックするための方法を以下に記載します。

Advanced Malware Protection(AMP)は、これらの攻撃者がマルウェアを実行できないようにするための最適な方法です。AMP 内に存在するエクスプロイト防止機能は、このような未知の攻撃からお客様を自動的に保護するように設計されています。

Cisco クラウド Web セキュリティ(CWS)または Web セキュリティアプライアンス(WSA)の Web スキャンは、悪意のある Web サイトへのアクセスを防止し、上述の攻撃で使用されるマルウェアを検出します。

Cisco AMP ユーザは、Orbital Advanced Search を使用して複雑な osquery を実行し、エンドポイントが MedusaLocker などの脅威に感染しているかどうかを確認できます。類似の脅威に対応する osquery の具体例については、こちらpopup_iconをクリックしてください。

E メールセキュリティは、攻撃の一環として攻撃者が送りつける不正な電子メールをブロックします。

次世代ファイアウォール(NGFW)、次世代侵入防御システム(NGIPS)、Cisco ISRMeraki MX などのネットワーク セキュリティ アプライアンス。

AMP Threat Grid は、悪意のあるバイナリを特定し、すべてのシスコセキュリティ製品に保護機能を組み込みます。

Umbrella(シスコのセキュア インターネット ゲートウェイ(SIG))は、社内ネットワークの内外で悪意のあるドメイン、IP、URL への接続をブロックします。

オープンソースの Snort サブスクライバルールセットをお使いであれば、Snort.orgpopup_icon で購入可能な最新のルールパックをダウンロードすると、最新状態を維持できます。この脅威を検出する目的でリリースされた SID は、53662-53665 です。

侵害の兆候(IOC)

MedusaLocker に関連する侵害の兆候としては、以下が確認されています。

ファイルのハッシュ(SHA256)

00ebd55a9de1fcdd57550d97463b6bc417184730e3f4646253ba53c4b473b7c0
02f250a3df59dec575f26679ebd25de7c1d5b4d9d08016685f87a3628a393f92
03df9dbf3fa35b88d948935e122a0217228ed7d1d3c892265791b55e38fae24c
03ebe8dc4828536fea08858fdfc3b53237eb514fe8cf6bc7134afb41b22f96a2
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0a82724cfb44769e69d75318b0868cd6de4aa789951362b3e86199e6c7922610
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本稿は 2020年4月23日に Talos Grouppopup_icon のブログに投稿された「 Threat Spotlight: MedusaLockerpopup_icon」の抄訳です。

 

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