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5G-シスコが考えるサービスプロバイダー E2E アーキテクチャ 第1章 5G時代の無線アクセス(3)


2019年12月2日


シスコが考えるサービスプロバイダー エンドツーエンドアーキテクチャ第1章「5G時代の無線アクセス」

前回前々回と 2 回に分けて 5G 自体における代表的な 3 つの無線アクセス技術のカテゴリについてご紹介してきました。今回は、これらの無線アクセス技術のすみわけについて考察します。

1.4 Multi access

4G は、2010 年に日本で初めて NTT ドコモがサービスを開始しました。Wi-Fi は IEEE802.11n(Wi-Fi 4)が  2009 年に策定されました。同時期からモバイル端末にも Wi-Fi が実装されることが当たり前になり、同じ端末で 2 つの無線アクセス方式を使用できるようになると、モバイルと Wi-Fi はそれぞれ、通信料はかかるもののライセンス帯におけるマネージドサービスで屋外でもどこでも使える 4G と、使用場所が制限されアンライセンス帯であるため通信品質が不安定なものの 4G と比較して格安の Wi-Fi という棲み分けがされるようになりました。

Wi-Fi は当時の 4G と比較してスループットが高く、4G のトラフィックが爆発的に伸び始めると、4G のトラフィックをオフロードさせるための技術としても注目されました。

一方で 、IoT の観点では、センサネットワーク等を中心に当初の 4G ではターゲットになっていなかった、通信速度は低いものの低消費電力かつ安価な端末で広いカバレッジエリアというニーズを満たすために各種 LPWA の検討も進みました。

しかし、モバイル技術の世代が 5G になると、使用される周波数としてが mmW(ミリ波)が追加され周波数幅が Wi-Fi と比べても格段に広く、5G が Wi-Fi のスループットを上回るようになりました。ミリ波は伝搬による電力の減衰量がこれまでのモバイル用の周波数帯と比較して大きいため、高スループットが期待できるエリアは小さく(スモールセル)なる傾向があります。

また、同じモバイルの設備を用いて低速回線・低消費電力に特化した NB-IoT の検討が進み、5G 時代のモバイル技術は LPWA としても活用できるようになりました。一方で Wi-Fi も Wi-Fi 6 ではモバイルと同様の OFDMA を採用し、アンライセンス帯でありながら、モバイルのような集中制御を取り入れて品質が安定しました。

ブロードバンドの観点から見ると、5G と Wi-Fi 6 は技術的に歩み寄りを見せており、特にミリ波の 5G と Wi-Fi 6 は、どちらの方式も狭いエリアで高スループットが期待できるという意味で近しいものとなってきました。

日本では、ローカル 5G と呼ばれる制度が新設されたことで、特定の市区町村、特定の敷地内といった地域限定で既存のモバイルオペレータ設備に頼らずに独自のモバイルサービスを提供できる下地が整い、多くの企業が参入を目指す状況になっています。この結果、 5G の通信料金使用量が下がり、さまざまなサービスが創出されることが期待されています。

それでは、スループットは Wi-Fi を上回り、エリアの観点から運用方法も Wi-Fi に近づき、 Wi-Fi よりも安定した品質を持ち、広カバレッジで低消費電力の 5G モバイル技術があれば、 Wi-Fi も LoRaWAN も不要になるのでしょうか。いえ、そうではありません。

まず、ブロードバンド観点で Wi-Fi と 5G の比較を考えてみます。5G のサービスをユーザが受けるためには、インフラが整備されることは当然として、併せて端末も 5G に対応した端末に替える必要があります。

現時点で Wi-Fi は、多くの企業内 LAN 等で使用されていますが、これを 5G に置き換えるためには、インフラの整備に加えて端末をすべてリプレースする必要があるため、現実的とは言えないでしょう。

一方 、Wi-Fi であれば常に下位互換性を持つため、 AP を Wi-Fi 6 に置き換えたとしても端末を取り替える必要はなく、端末の緩やかな入れ替えを待つというマイグレーション方法が可能です。また、モバイルと比較して品質が求められない代わりに、安価に実装できる Wi-Fi は、常にモバイルよりもサービス料金そのものが安価となるため、金額面での関係性もこれまでと変わりありません。

ミリ波の 5G と Wi-Fi を比較すると、 どちらもスモールセルで運用されという点では同じであるものの、Wi-Fi は周波数帯が 2.4GHz 帯および 5GHz 帯であるため、壁の多いオフィス内等でのサービスエリア化を想定した場合、ミリ波よりもエリアの構築が容易となると考えられます。そして Wi-Fi は、アンライセンス帯であるため、周波数免許の取得が不要であり、特殊技能を持つ技術者を備える必要がなく難しい申請をすることもなく誰でも構築運用が可能です。

一方で、下位互換性を保つために Wi-Fi は、従来の端末で使用されていたランダムアクセスの基本思想を受け継いでいます。そのため、全ての端末・AP が Wi-Fi 6 に対応している場合には、安定した通信が可能となりますが、1 つでも未対応の端末がエリア内に存在する場合に効率は劣化してしまいます。また、アンライセンス帯であるため、想定外の干渉波を受けて通信に支障を来す場合も考えられます。

次に、 LoRaWAN と 5G の比較を考えます。Wi-Fi と同様ですが LoRaWAN はアンライセンス帯で運用を想定されている無線アクセスシステムです。そのため誰でも 5G と比べて容易に無線設備を構築運用することが可能です。センサネットワークの需要があるエリアでNB-IoTに対応した 5G 基地局がタイムリーに構築されるかどうかは、サービスプロバイダの設備計画次第になってしまうため、迅速なサービス展開に支障を来すことが考えられます。また、バッテリー寿命の観点から見ると LoRaWAN は 3 倍以上の寿命を実現できるとされているため、センサ端末のメンテナンスが大幅に楽になります。

一方で、 NB-IoT 等のセルラー系 LPWA は、サービスプロバイダが所望の地域のサービスエリア化を完了させてしまえば、ユーザは、面倒なインフラ構築やメンテナンスを行うことなくセンサネットワークを利用できるため、そのような場合においてはセルラー系 LPWA が適していると考えられます。

 

表 1-2 : 各無線アクセス技術の特徴

表 1-2 各無線アクセス技術の特徴

表 1−2 に 5G と Wi-Fi 6 の特性を示します。

図 1-7 各種無線アクセス技術の使い分け

図 1-7 各種無線アクセス技術の使い分け

特に Wi-Fi は、 5G が普及すると不要になると考えられがちですが、上記の表のように、モバイルと Wi-Fi の根本的な特性は 5G/Wi-Fi 6 の時代においても変わらず一長一短があるため、ユーザとしてはユースケースに応じて適切なアクセスを使い分けることが重要となります(図 1-7)。

広範なサービスエリアを求められる場合には、当然 sub 6(6GHz 以下の周波数帯)を用いた 5G(4G LTE)が必須となります。周波数の特性上、より帯域が低い方が電波が遠くまで飛びやすく障害物にも耐性を持つためです。また、スモールセルの観点からも、安定した通信、低遅延/低ジッタが求められる交通システム、Factory Automation (FA)、Virtual Reality(VR)/Argumented Reality(AR)システム等には 5G が適しています。

反対に、モバイル程の高品質は不要だがブロードバンドアクセスが求められるオフィス用アクセス回線としては、安価にインフラを整えられる Wi-Fi 6 が適していると考えられます。どちらか一方だけというものではなく、両方のアクセスを跨って、使い常に適切な回線を使い分けたいというユースケースも出てくると思われます。

5G 時代における通信インフラはよりアプリケーションセントリックなものとなるため、ユーザからはアクセス回線を意識させないことが重要です。今後は、複数のアクセス回線を同じポリシーの下で運用可能とするコントローラが非常に重要な位置を占めることになるでしょう。

 

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用語集

Sub 6:6G Hz未満の周波数帯の電波
FA (Factory Automation):工場における生産工程の自動化を図るシステム。
VR(Virtual Reality):ユーザの五感を刺激することで仮想的に物事を知覚させる技術
AR(Argumented Reality):仮想空間を重ね合わせることで人間が知覚する現実環境を拡張する技術

 

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