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シスコ派遣記Season2 EP10~国家公務員の働き方改革(前編)~

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京都府庁からシスコに派遣されております山本です。さて、今回から 2 回にわたり国家公務員の働き方改革についてルポしたいと思います。マスコミなどでは「不夜城」と言われ、その長時間労働が指摘される霞ヶ関。そんな霞ヶ関でも若手職員から新しい働き方の模索が始まっており、その取組は加速しています。組織の中で頑張っている若手職員のインタビューを通じて、国家公務員の働き方改革のリアルをお伝えしたいと思います。

今回は、各省庁の中でも積極的に働き方改革を推進している総務省において、その働き方改革を担当されている大臣官房 秘書課 働き方改革推進室の白倉侑奈さんにお話を伺いました。

「働き方は変えられる」という体験

山本:白倉さんはこれまで総務省のオフィス改革やテレワークのためのリモートアクセス環境整備、有志職員による働き方改革チームの立ち上げなど総務省の働き方改革をリードされてこられました。「働き方改革」に携わるきっかけは何だったのでしょうか。

白倉侑奈さん(以下、白倉):入省後、まもなく配属された部署が総務省から発出される法令などの行政文書を一言一句チェックする部署でした。毎日紙での情報のやり取りがメインで、紙に埋もれる職場環境でした。紙で出された資料に定規を当ててミリ単位のズレがないかチェックするような作業もありました。

でも、次の部署へ異動になると、システム関係の部署だったこともあり、かなり業務の電子化が進んでいて、例えばノート PC を持ち歩いて会議や打ち合わせを行うというスタイルが当たり前に行われている部署だったのです。紙ではなく電子での効率的な業務スタイルを経験して「霞ヶ関でもこんな働き方ができるんだ」ということを自ら実感することができました。

その部署で私は部署内のオフィス改革を担当することになります。総務省のオフィス改革の取組は、今でこそ省内で横展開されたり、日本全国の自治体からオフィス視察に来ていただいたりと大きな取組になりましたが、当初は僅か数名で始めたものでした。年末年始の休日に職場に出てきて什器の入れ替えに立ち会ったのが今では良い思い出です(笑) その頃はまだ「働き方改革」という言葉がそれほど認知されておらず、本当にスモール スタートでした。

オセロの色を一つひとつ変えていきたい

山本:スモール スタートが重要ですよね。現在の働き方改革推進室では有志職員による働き方改革チームを立ち上げられましたが、その経緯や現在の活動について教えてください。

白倉:総務省の働き方改革において、ツール面での整備はある程度進んできていますが、それを利用する職員側の意識が必ずしも変わった訳ではありません。職員の意識を変えないと、せっかく導入したツールや制度も利用されないままになってしまいます。意識改革を促すボトムアップの取組が必要なのです。

そのため、省内で働き方改革に関するボトムアップの取組をしたいと構想していたところ、省幹部からも若手に何かやらせてみないかというトップダウンの声があり、働き方改革チームの立ち上げが実現しました。

現在は総務省の 3 人の政務官に顧問になっていただき、課長補佐・係長級の 25 名の有志職員で活動をしています。まだ立ち上がったところで、働き方改革に取り組む他省庁や自治体と情報交換しつつ、メンバーそれぞれの問題意識に基づき議論を進めている段階です。

 

山本:政務官が顧問をされているとは凄いですね。チーム立ち上げには苦労されたのではないですか。

白倉:幹部にサポートしてもらうなど、チームの活動を組織的かつ実行力あるものにすることを最も重視しました。総務省として本気で働き方改革を進めて行くのだという姿勢を示すためにも、チームを作る段階からオフィシャルに活動をし、昼休みや勤務時間外ではなく時間内での活動ができるよう配慮しました。

組織で新しいことをやろうとする人は誰しも経験されると思いますが、チームを立ち上げるまでは、孤独な戦いと感じる時期もあり、有志 25 名ものチームが立ち上がったときは「一緒に働き方改革やろう」と継続的に発信し続ける体制が整いつつあることを心強く思いました。

今のようなチームになってしまえば、聞いてもらえる人は確実に増えると思いますし、このチームで継続的にメッセージを発信することで、オセロの色を一つひとつ変えるように総務省の組織風土を変えていきたいと思います。

組織に生活のすべてを委ねてはいけない

山本:総務省の働き方、組織風土をどのように変えていきましょうか。

白倉:ジェネレーションギャップだけが問題ではないと思いますが、働き方改革は「サボり」ではないか、若手が育たないのではないか、という声も聞こえます。国家公務員は自分が国を支えなければならないという高い使命感で仕事をしている方が多いですし、仕事に精一杯取り組む同僚を尊敬する反面、仕事に偏った生活をしている方をみると、組織に生活全体を委ねてしまっていて、職場以外で自分の人生を豊かにすることを諦めてしまっているようにみえます。結婚や出産といった今後迎えるライフイベントを考えると、無茶な働き方をいつまでも続けることは難しいと思うので、そういった方に対して、既存の制度の中でも自分なりの工夫を加えることで、自分にあった働き方ができるということに気づいてもらいたいなと思います。

働き方改革は、一律に業務時間を減らすことではなく、生産性を維持したまま、無駄な業務をなくし、成果を上げていくことだと思います。組織に生活全体を委ねる働き方ではなく、今の自分にあった働き方を選べる組織作りを継続して進めて行かないといけないと強く感じています。

現状として働き方は自分で選べないと感じている職員の方が多いと思いますが、在宅勤務制度やリモートアクセス環境など多様な働き方を支援する制度は徐々に整ってきています。そういった環境を利用して、少しでも自分の働き方を選ぶことができる職員が増えるように、この組織の風土を変えていきたいです。

山本:自ら働き方を選ぶ意思は重要ですね。白倉さん、本日はありがとうございました。

インタビューを終えて

白倉さんとは、シスコが事務局を務める働き方改革のワーキンググループで度々ディスカッションさせていただいていますが、今回腰を据えてじっくり議論させていただきました。

どのような働き方をよしとするかは、世代によっても価値観が異なりますし、個人によっても異なります。その多様な働き方を組織が保証し、職員自身も自ら働き方を選択する強い意思を持つことで、組織も個人も幸せな状態が実現できるのだと思います。

国家公務員、特に本省勤務の職員にとっては国会が始まると日々の業務に追われて働き方自体を考えることが困難なときもあると思います。白倉さんのように継続してメッセージを発信することが大切ですね。

 

 

 

 

 

 

 

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