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企業ネットワーク・抽象化への取り組み

2014年 6月に行われた Interop Tokyo 2014 では、企業向けポリシーコントローラの参考出展として、APIC エンタープライズ モジュールの紹介とデモを行いました。こちらのブログでも、前篇後篇と二回に分けて紹介しました。

企業ネットワーク管理については、まだまだ実際のところ、Ping や SNMP(Simple Network Management Protocol)による装置管理が中心であるというお話をよく伺いますし、私もそうだと思います。ただ、この 5〜6年で、NetFlow や sFlow 技術を用いたフロー管理による可視化もようやく普及してきた感もあり、関連するお問い合わせも多くいただくようになっています。

加えて、データセンターや通信事業者のあいだで SDN(Software-Defined Network)や NFV(Network Functions Virtualization)、仮想化といったキーワードが盛り上がりをみせるなか、企業ネットワークにおいても運用コストの削減や、柔軟なネットワーク ポリシー制御など、適用することで既存運用を改善または省力化でき、新たな価値を盛り込める適用方法がわかってきました。企業の IT 担当者も、それらを検討され始める方、一部試験的に実装を試みる方が出てきているというのが現状かと思います。

さて、企業向けネットワーク仮想化・抽象化という観点でも、これまでシスコはさまざまな取り組みを行ってきました。もちろん自社開発技術や製品も多数ありますが、ここではいくつかの買収実績を紹介してみます。これらを振り返ることで、製品・技術開発の観点からも、様々な試行錯誤が行われ、現在の実装に活きていることを少しでもお伝えできればと思います。

2004年11月17日 Jahi Network買収発表

Jahi’s technology includes an external Programmatic Interface (PI) and other interface enhancements which complement Cisco’s existing CLI and PI strategy and will enable Cisco to provide an enhanced network management solution to customers.”

Jahi の技術は、シスコのコマンド ラインやプログラム インターフェイス戦略を拡張できる、外部プログラム インターフェイスなどの拡張を可能にし、顧客に対するいっそう強力なネットワーク管理ソリューションの提供をサポートします。

 2005年7月26日 Sheer Networks買収発表

“Sheer’s virtual network model hides the complexity of physical networks in a way that makes them accessible to a variety of management applications. This Dynamic Network Abstraction layer makes them transparent and accessible to a broad range of management applications. Building on the Sheer Networks technology and platform, Cisco will develop and sell device, network and service-level management applications enabling intelligent management across multi-vendor networks and network-based services. Cisco will also enable other hardware and software vendors to develop and deliver applications that can easily interoperate with Cisco applications through standards-based APIs. These same APIs enable easy integration into service provider OSS/BSS environments.”

Sheer の仮想ネットワーク モデルは、物理ネットワークの複雑性を隠蔽し、複数の NMS からは簡単にアクセスできるように見せます。「Dynamic Network Abstraction layer」によって、物理ネットワークは NMS に対して透過的になり、幅広い管理アプリケーションにアクセスできます。Sheer Networks の技術やプラットフォームを構築することで、シスコはネットワーク機器と、ネットワーク管理やサービスレベル管理アプリケーションを開発・販売し、マルチベンダー ネットワークやネットワーク サービスの高度な管理を実現できるようになります。さらに、他のハードウェア、ソフトウェア ベンダーが、標準的な API を通じてシスコ機器やアプリケーションと簡単に連携できるようなアプリケーションを開発・提供できるようになります。また、これらの API によってサービス プロバイダーの保有する OSS/BSS 環境とも容易に統合できるようになります。

2010年12月1日 LineSider 買収発表

LineSider’s software is designed to enable customers to organize their network resources into a flexible cloud infrastructure that integrates the network with customers’ existing IT operational tools and processes. This network abstraction layer allows customers to provision and deploy numerous individual network components much more quickly than previously possible, dramatically reducing network operations costs and accelerating service delivery.”

LineSider のソフトウェアは、顧客の保有するネットワーク資源を、顧客 IT ツールやプロセスと統合可能なクラウド インフラと有機的に組み合わせられるよう設計されています。このネットワーク抽象化レイヤによって、顧客は多数の固有ネットワーク コンポーネントを従来よりも高速に適用、展開できるようになり、劇的にネットワーク オペレーション コストを削減しながら、サービス デリバリを加速できます。


 

Jahi の買収後、直接的には Cisco Enhanced Device Interface(E-DI)という製品がリリースされました。これは、複数の Cisco IOS 装置の CLI を、ひとつのサーバ上であたかもひとつの装置のように見立てて操作できるものでした。また、上位 API から XML や Netconf で命令を受け付け、下位の IOS 装置にコマンドで設定をするといった、抽象化層のような配置を想定していました。

 

Cisco E-DI 配置イメージ

 

E-DI の各種機能は、現在の IOS のXML-PI(プログラマブル インターフェイス)や、初期の IOS Netconf の実装(確か IOS 12.4.9T あたりです)に活きています。Sheer Networks は Cisco Prime Network(旧Cisco ANA:Active Network Abstraction)として、主に通信事業者のネットワークに対して抽象化層を作り、下位と上位を分離することに貢献しています。

Cisco Active Network Abstraction

LineSiderCisco Network Services Manager として、通信事業者に特化せず、データセンターやクラウド環境の物理層を抽象化して上位と連携することを想定した製品としてリリースされています。

Cisco Network Servicees Manager Operational Model

最近は頻繁に SDN についてのお問い合わせをいただくようになりましたが、これらを振り返ってみると、ネットワーク運用関連については特に、これまで試行錯誤されてきた内容が、いよいよ注目されてきていることを実感しています。

これらを念頭に、ACI のソリューション、特に企業向けでは APIC エンタープライズ モジュールといった製品に向かい合ってみると、地道な積み重ねを繰り返してきた延長であるような気がします。参考までに、APIC エンタープライズ モジュールは自社開発の製品です 🙂

APIC エンタープライズ モジュールの詳しいアーキテクチャは、また別の機会に説明させていただきたいと思います。

 

Kazumasa Ikuta

シスコシステムズ合同会社 APJアーキテクチャー プリンシパルアーキテクト。2001 年入社。エリア担当 SE、通信事業者担当 SE、SDN応用技術室を経て、2021年よりアジア太平洋地域アーキテクチャーセントラルグループ所属、プリンシパルアーキテクト。主に企業向けのネットワーク運用管理全般および製品、SDNやネットワークプログラマビリティ関連、Cisco DevNetを担当。提案、構築、運用維持管理における技術サポート、本社開発部門と連携したアジア地域での製品や技術のロールアウトプラン策定と実行、対外的なプレゼンテーションなど、仕事を選ばず幅広く活動中。書籍:Ciscoネットワーク構築教科書[解説編](共著)Ciscoネットワーク構築教科書[設定編](共著)Cisco WAN 実践ケーススタディ(共著)