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複雑化するIT 課題はシスコ×AIでスマートに解決できる!「Cisco Scale Innovation Day」レポート(セッション 後編)

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中小・中堅企業の課題解決に貢献する最新ソリューションを紹介した「Cisco Scale Innovation Day」のセッション 前編体験エリア「Meet the Expertsのレポートはいかがでしたでしょうか?今回は、セッション後編のハイライトをお届けします。

都知事選で実証された AI 活用の可能性

AIエンジニア・起業家・SF 作家の安野貴博氏による講演「1%の変革が未来を創る ~ 生成 AI 時代の DX 戦略 ~」では、生成 AI を活用した DX 事例として、2024年東京都知事選挙での取り組みが紹介されました。

安野氏は、東京都知事選に挑んだ 30代の候補としては都知事選史上過去最多の票を獲得しました。その理由として同氏は、意見を受け取りながら考えをブラッシュアップしていく「ブロードリスニング」の手法が功を奏したと分析します。これは、インターネットの普及と SNS の発達、そして AI によって実現可能になった双方向のコミュニケーションによるものです。

都知事選では「聞く」「磨く」「伝える」の3ステップを高速で回すことで、双方向コミュニケーションを実践したといいます。まず約 90ページの具体的なマニフェストを議論の出発点として用意し、SNS 上の意見を AI で可視化して政策改善に活用。そして「コラボレーションによって開発を進めていく」というオープンソースソフトウェア開発の手法を政策立案に応用し、15日間で 232件の課題提起と 104件の変更提案を受け、85件を実際に反映させる成果を上げました。安野氏は「たった 2週間のうちにマニフェストが 85回バージョンアップされた選挙は過去に例がありません」と説明します。

さらに、AI アバターが質問を 24時間受け付け、YouTube ライブと電話で合計約1万件の質問に対応しました。このシステムでは、AI に向けられた意見のログデータを安野氏らのチームが解析し政策に反映していく「増幅されたコミュニケーション」の実現にも寄与しています。

このブロードリスニングの技術は、おすすめアルゴリズムによって分断が進む従来の SNS とは逆に、ありとあらゆるデータを統合して、異なる立場の意見を可視化し、相互理解を促進する効果が期待されます。

DX には段階があり、レベル1の DX は既存プロセスをデジタル化する従来の手法です。そしてレベル2の DX では、新しい技術を前提として、これまでにない価値を創出していきます。安野氏による都知事選での取り組みは、ブロードリスニングという新しい価値を生み出すレベル2のDXだったといえるでしょう。

安野氏は講演を総括し、「AI と遠いと思われている分野も、よくよく考えると使いどころは山ほどある」「今までのプロセスをただデジタル化するのではなく、新しい価値を作ることを考える」「AI エージェントを人間同士のコミュニケーションの間に入れることで、いろいろな分野でAI を活用できる」と、3つのポイントを示しました。

効率的なインフラ管理で SE が AI に専念できる時間を創出

シスコシステムズ クラウド&AI ソリューション事業部の小山内静による「AI 時代に対応する効率的な DC インフラ管理の新提案」では、AI 時代を支えるインフラに焦点を当て、シスコの Nexus HyperFabric が紹介されました。

現在のデータセンター運用では、Software Defined Network(SDN)や VXLAN などの新技術導入が難しく、地方拠点での人材派遣コスト、ハードウェア選定の工数などが課題となっています。

小山内は「この AI 時代に競合他社へ勝っていくためにも、インフラストラクチャの導入のスピード感は非常に重要です」と述べ、従来の半年から 1年かかるハードウェア選定プロセスの改善が急務であると強調しました。

Nexus HyperFabric は、こうした課題を解決するクラウド型ソリューションで、全てのオペレーションをワンストップで解決可能です。シスコアカウントがあれば無料で利用でき、とくに物理ハードウェアを購入する前に設定を完了できる機能が、お客さまから高く評価されています。

デモンストレーションでは、最小1台の構成や Spine-Leaf 構成の設定などを実演。さらに、従来であれば要件定義をする際、詳細にスペックを確認しながら進める必要があるところを、Nexus HyperFabric なら数クリックで見積もりができる様子も披露しました。これなら代理店とのやり取りに費やしていた時間を短縮できます。また、AI で新しいアプリケーションを素早くリリースしたいというニーズが高まる中、ハードウェアの購入後に不備が発覚するリスクも軽減が可能です。

現地作業員向けには、電源投入や LED 点灯の確認といった粒度でのステップ・バイ・ステップガイドを自動生成する機能があります。QR コードをスマートフォンで読み取ることで詳細な作業手順が確認できるため、IT 系ではない現場担当者でもミスなく設定が可能です。

小山内は最後に「今の SE 人材を AI にフォーカスしていかなければならない中で、ネットワークのインフラストラクチャ構築に時間をかけてほしくありません」と述べ、Nexus  HyperFabric がエンジニアリソースを AI 活用に集中させるためのソリューションであることを強調しました。

プログラミング不要の 3ステップで作れる能動的な AI エージェント「Webex AI Agent」

続いて、シスコシステムズ コラボレーションアーキテクチャ事業部 コラボレーションエキスパートの長谷川峻による「顧客体験を変革する次世代 AI エージェント『Webex AI Agent』」では、普及が進む一般的な生成AIとは一線を画した、能動的な AI エージェントを紹介しました。

従来の生成 AI が人間の指示を受けてから行動する受動的なものであるのに対し、Webex AI Agent は、達成すべきゴールを自律的に考えて判断しながら、業務を能動的に行います。

デモンストレーション動画では、花屋での注文対応において、「おばあちゃんの誕生日用の黄色い花で、ベル型の中心部と細い茎」という曖昧な説明を聞いた AI が、適切な商品(水仙)を提案しました。さらに、取り扱いのない商品(シャンパン)については代替案(花瓶)を提示し、テキストメッセージでの決済リンク送付まで自律的に処理します。

 

セキュリティ面での懸念については、機密情報の漏洩を防ぐためのガードレール機能がすでに搭載されています。さらに今後は、シスコが買収した Robust Intelligence の技術も順次組み込まれる予定です。これにより、AI による不適切な情報の取り扱いリスクの低減や外部からの攻撃への耐性強化、事前の脆弱性テストの実施などが可能となります。

その結果、機密性の高い情報も安全かつ高い信頼性をもって提供できるシステムになる、と長谷川は説明しています。

技術的な複雑さを解消していることも Webex AI Agent の特徴です。従来のプログラミング知識を必要とせず、エージェントのタイプ選択、目的設定、プレビューという3ステップで構築が完了。長谷川は「AI 構築の民主化時代が到来しました」と強調しました。

この AI エージェントは、単純なチャット対応だけでなく、バックエンドシステムとの連携による業務自動化も可能です。長谷川は、感情的な対応や細やかな人間ならではの対応は AI では困難であることを認めた上で、協働体制を提案。フロントに立つ AI エージェントが顧客対応を行い、難しい案件は人間オペレーターにバトンタッチ。その際、AI アシスタントがオペレーターをサポートし、対話の要約や業務支援を提供することで、AI と人間が連携した顧客体験の実現が可能になる、というストーリーを提示します。

シスコの優位性は、一部の機能にとどまらず、コンタクトセンターから音声通話ソリューションまで、全てを統合して提供できることです。これらは Webex プラットフォーム上で一元的に提供・管理され、既存の Webex Calling 利用者もシームレスに活用できます。さらに、AI 活用にはネットワークとセキュリティの見直しが必要ですが、シスコはインフラからアプリケーションまでエンドツーエンドでサポートできる体制を整えています。

AI 時代も変わらぬ使命「つないで、保護する」

全ての講演が終わり、シスコシステムズ 社長執行役員の濱田義之が登壇。ゲストスピーカーへの謝辞を述べ、「Cisco Scale Innovation Day」を総括しました。

その上で濱田は、「急速に進む DX、そして AI 時代に、お客さまを『つないで、保護する』ことが、私たちのミッションだと考えています」と語り、1985年の創業以来の「つなぐことの専門家」としてお客さまのジャーニーをともに進む使命を、AI 時代においても継続していく決意を表明しました。

以上、全3回にわたり Cisco Scale Innovation Day のハイライトをお届けしました。

イベントの魅力や臨場感は文章だけではすべてをお伝えしきれませんが、次回開催時にも多くのデモンストレーションや体験機会をご用意したいと思いますので、ぜひご来場いただければ幸いです。お待ちしております。

 

Authors

石黒 圭祐

執行役員

スケールビジネス事業統括

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