急速に進むデジタル化と技術革新により、企業が直面する IT 課題はますます複雑化しています。そこでシスコシステムズは 2025年 7月 1日、「Cisco Scale Innovation Day」を開催し、中堅・中小企業をはじめとするお客様や販売パートナーの皆さまに向けて、最新のソリューションをご紹介しました。
当日は多くの方々にご来場いただき、セッションやデモンストレーションも大変盛況となりました。
本ブログでは、イベントのハイライトをダイジェスト版として連載でお届けしてまいります。
第1回は、セッションパートの中から、IT 課題を AI を活用しスマートに解決する次世代ネットワーク、そして三菱地所・サイモン株式会社によるプレミアム・アウトレットでの Wi-Fi 導入事例、Cisco x AI による統合セキュリティの実現、そしてダイワボウ情報システム、セコムトラストシステムズ、NTT西日本によるマネージドサービスの現状と展望についてのパネルディスカッションの模様をレポートします。
開会にあたって、シスコシステムズ アジアパシフィックジャパンチャイナ地域 スケール営業事業担当 バイスプレジデントの鎌田道子が登壇。進化し続ける脅威に対して AI を既存のセキュリティツールと統合し、より強固な防御体制を築く必要があると強調しました。
AI の活用で IT 課題をスマートに解決する次世代ネットワーク
「IT課題をスマートに解決する次世代ネットワーク~シスコで実現する安心・快適な未来~」と題したセッションは、シスコシステムズ グローバルネットワーキング事業部 プロダクトセールススペシャリストの高橋奈子が、「未来のネットワーキングとは?」「IT の課題をスマート解決するプラットフォーム」「未来のネットワーキングを支える最新デバイスとセキュリティ」について説明しました。
ネットワーク監視には多大な工数がかかり、これをどう削減していくかは多くの企業において共通する課題。そこで AIが 24時間体制でネットワークを監視するようにすれば、異常を検知して自動改善も行い、日々の運用負担が大幅に軽減されます。実際のクラウド管理画面を使用したライブデモでは、これまで別々だった Meraki と Catalyst が統合された新しい管理環境が紹介されました。この統合により、クラウド管理とオンプレミス機器の両方を単一画面で管理できるため、運用の効率化を図れます。
今後提供予定の AI アシスタントは、自然言語での問いかけに対し、AI が自動で分析を行って問題を特定し、さらには設定方法まで具体的に提示します。高橋は「IT 運用の相談役がサポートし、誰でも迷わず動ける」と紹介。
また、シスコの ThousandEyes と連携をすると、社内のネットワークに留まらず、クラウドアプリまで見通してボトルネックを特定することが可能です。
顧客事例:商業施設に欠かせない Wi-Fi サービスの改善
顧客事例紹介では三菱地所・サイモン株式会社デジタル戦略部長の柿﨑一則氏が登壇し、同社が運営する「プレミアム・アウトレット」施設でのWi-Fi導入成果が報告されました。
プレミアム・アウトレットは御殿場や鳥栖など全国 10カ所にあり、そのどれもが広大で、かつ郊外立地のため、混雑時には通信環境が不安定になりがちです。特に書き入れ時である繁忙期ほど状況が悪化してしまい、スマートフォン決済が利用できなくなるという大きな問題が発生していました。同社では独自の QR コード決済サービスを展開しており、通信環境の悪化は直接的な機会損失につながる重要な課題です。さらに、各ブランド店舗から寄せられるクレームも増加していたといいます。
この課題を解消できるソリューションを選定する際、各店舗がすでに設置済みのアクセスポイントとの干渉を回避するために、デュアルバンド機能の有無を重要視したといいます。加えて、遠隔監視機能やセキュリティ性能の観点で、シスコ製品を採用しました。
そうして Cisco Meraki MR を導入したところ、効果は即座に現れました。柿﨑氏は「導入後最大の繁忙期がゴールデンウィークでしたが、期間中にお客さまからのクレームはありませんでした。各店舗からのクレームも解消され、一定の改善効果を実感しています」と説明します。
今後の展開として、Wi-Fi 7 の整備を拡充していく方針も示され、柿﨑氏は「通信環境の改善により、これまで以上に有効なアプリとなるよう機能を拡充し、CRM 強化にも積極的に取り組んでいくよう準備を進めています」と締めくくりました。
AI 活用でセキュリティ強化と負担軽減を両立
突如会場内にアラート音が鳴り響き、情シス担当者が混乱――そんな演出で始まった「Cisco Security×AI で実現するセキュリティ強化と負担軽減の両立」では、架空の企業でセキュリティインシデントが発生したという設定の下、それがどのような経緯で起きたのか、またそれをシスコのセキュリティソリューションによって解決するまでのシナリオを紹介しました。
シスコシステムズ セキュリティ事業部 アカウントエクゼクティブの藤田佑未子は、ランサムウェア被害の 70パーセントが事前に盗まれた正規アカウント情報を使った侵入によるものだと説明。さらに、AI の悪用により従来の日本語の壁という天然の防壁が機能しなくなり、攻撃者も AI を活用することで脅威が増していることも指摘します。
続いて XDR(Extended Detection and Response)を用いた統合的な脅威対応のデモンストレーションでは、従来は大量のアラートに管理者が混乱していた状況が、AI による自動分析により重要度に応じて整理された形で提示されることを実演しました。
また、AI がアタックフローを図示化し、クライアントとネットワーク機器を含む資産の中から問題箇所を特定する機能や、対処方法について AI がレポートを自動生成する機能も紹介されました。このレポートは、インシデント発生時に必要となる社内報告書としても活用できるという実用性があります。
こうした AI 連携やアプリ間の相関分析により、検知と対応を迅速化。さらに管理者の負担軽減も実現します。
また、シスコのセキュリティソリューションは、メール、認証、エンドポイント、SASE、XDR など業界最大級のポートフォリオを包括的に提供できることが特徴です。これだけを聞くとコスト面を懸念しがちですが、パッケージ化により単品購入と比較して 40パーセントのコスト削減効果も実現しています。
パネルディスカッション:マネージドサービスの価値と展望
パネルディスカッション「マネージドサービスから考える IT トレンドと今後の展望」では、モデレーターを務めた鎌田道子が、マネージドサービスを取り巻く環境を説明。深刻な IT 人材不足、多様な働き方への対応、セキュリティ脅威の高度化を挙げました。こうした背景もあり、シスコのマネージドサービスビジネスは日本の中堅・中小企業市場において、急成長しています。
続いて 3社のマネージドサービス事業者(MSP)が登壇し、市場の現状と今後の展望について議論しました。
ダイワボウ情報システムは、IT 人材不足対応からシスコの SASE ソリューションまで含めた包括的なサービスを提供。Cisco Meraki と Umbrella の連携設定や Wi-Fi セキュリティ強化などに対応し、Meraki についてはマネージドサービスと自営保守の両方を提供することでシームレスな運用を実現しています。
同社 取締役 技術戦略本部長 兼 情報戦略部長の谷水茂樹氏は、シスコの AI を取り入れたソリューションを積極的に組み込むことで、適正価格での高品質サービス提供を継続していく考えを示します。また、シスコの XDR はコストパフォーマンスに優れており中小企業にも適用可能であること、XDR のマネージドサービス化によりマルチベンダーの統合的なネットワークセキュリティ実装に貢献できることを説明しました。
セコムトラストシステムズは、IT リソースが限られる企業でも安定したサービス利用を可能にするマネージドサービスを展開。同社は Cisco Umbrella の MSP 国内事業者として最多の実績を持ち、Cisco Secure Connect では国内第 1 号の MSP 契約を獲得するなど、シスコとのパートナーシップを構築しています。
同社 ソリューション営業本部 プロフェッショナルサポート営業部長の今村崇志氏は、既にシスコの XDR を活用して SASE の SOC サービスの分析自動化や効率化を実践していることを紹介。今後も AI や XDR 等の新技術を活用したサービス提供を重視し、中堅・中小企業のサイバーセキュリティ底上げに貢献していきたい方針を語りました。
NTT 東日本、NTT 西日本は、100年にわたり固定電話事業を提供してきましたが、リモートワークの普及と AI 対応を見据え、NTT 東西で Cisco Webex をベースとした「ひかりクラウド電話 for Webex Calling」へと軸足を移しています。
NTT 西日本 光ビジネス営業 コミュニケーション基盤部門 サービスデザイン担当の北本仁志氏は、音声サービスにおける AI 対応の可能性に言及。電話サービスには、障害発生箇所の特定が困難でパートナーにとって扱いにくいという問題があります。これに対し、シスコソリューションが持つ可視化、即座の対処判断、スキルレベルに依存しない対応といった要素を適用できるのではないかと展望を示します。また、シスコとの連携により、音声サービスに AI を積極的に活用していきたいと述べました。
ネットワーク、セキュリティ、コミュニケーションという3つの視点から、マネージドサービスの実際の活用事例や今後の展望についてご紹介いただきました。ご来場いただいた皆さまにとって、今後のご判断の参考材料としてお役立ていただけたのではないかと思います。
次回は、シスコが講演の中で取り上げたソリューションについて、プロダクトエキスパートやエンジニアが詳しく解説し、実機に触れることもできる体験エリア「Meet the Experts」の模様をお伝えします。セッション後編もお見逃しなく。



