近年では、パンデミックを契機にクラウドサービスを利用して本格的にテレワーク環境を整える中堅中小企業（SMB：Small Medium Business）が見られ始めましたが、IT人材の不足や経営者の理解不足により、度重なるセキュリティ関連に対する脅威パッチワーク的なアプローチを実行するにとどまっているケースが多く、本格的にハイブリッドワーク環境を構築する取り組みを進められないケースは少なくありません。
そこでNTTデータ ルウィーブは、セキュアインターネットゲートウェイである「Cisco Umbrella」をSMBでも利用しやすいように、独自のサポートサービスを加えた「クラウドセキュリティ マネージドサービス」の提供を開始し、課題の解決を後押ししています。同サービスはSMBにどのような価値をもたらしており、導入済みの企業からはどのように評価されているのか、NTT データ ルウィーブ ISソリューション事業本部 ISS営業部 副部長の石川洋次郎氏に話を伺います。（聞き手は、シスコシステムズ合同会社 執行役員 SMB・デジタル事業統括 石黒圭祐）
“キーワード指定”での問い合わせが増加
石黒 まずは、ISソリューション事業本部の事業内容と石川さんの役割について教えてください。
石川氏 ISソリューション事業本部は、シスコ製品をはじめとするITインフラ製品のインテグレーションを行う部署です。私は、その中の営業組織であるISS営業部の副部長として営業全体をマネジメントしたり、市場の動向やお客さまの声を基に新サービスやマーケティング施策を企画したりしています。
私たちのお客さまは9割以上が民間企業で、日本を代表するような大手企業と取引することもあれば、従業員が数10名程度の中小企業の課題解決をお手伝いすることもあります。SMBのお客さまはIT部門が小規模であったり、専任の担当者が不在だったりするケースも珍しくなく、そうした企業のお困りごとに対応するサービスも提供しています。
石黒 ここ数年はコロナ禍で、お客さまの事情が変わってきたのではないでしょうか。SMBのお客さまと向き合うなかで、最近どのような変化を感じていますか。
石川氏 ITソリューションやセキュリティに関して、お客さま自身が持つ情報量は増えた印象があります。恐らくはコロナ禍でテレワークを導入することになり、担当者の方がインターネットなどを使って積極的に情報を収集したからでしょう。
以前であれば、お客さまが困っていることをヒアリングすることが多く、それに対して最適なソリューションをご提案する流れがほとんどでした。今でも基本的には変わっていませんが、なかには「ゼロトラストネットワークを検討している」、「クラウドPBXを検討している」というように、具体的なキーワードを使ったお問い合わせが増えています。コロナ以前では、お客さま側から「ゼロトラスト」という言葉を聞いた記憶はありません。
石黒 お客さまが挙げた具体的なキーワードや、導入を検討しているソリューションが、必ずしもお客さまの課題解決に最適だとは限りませんよね。
石川氏 おっしゃるとおりで、キーワードを挙げられたときこそ注意が必要ですね。これまでの営業経験を通して感じているのは、十人十色ならぬ「100社100様」だということです。以前と変わらず、ヒアリングでお客さまの課題を深掘りすることで、課題の本質を探ることが大切だと考えています。
石黒 クラウド関連のキーワードの認知度が上がってきたのは、それだけSMBのお客さまの中にクラウドが浸透して身近な存在になっているからかもしれませんね。
石川氏 そうですね、クラウドが登場して10年以上が経過し、市場も慣れてきているのが理由の1つでしょう。
もう1つの理由は、価格面でメリットが大きいためだと受け止めています。オンプレミスとは異なり、クラウドサービスの大半はユーザー数や端末数で価格が決まるライセンス体系なので、同じ機能を利用する場合には企業の規模が小さくなるほど割安です。また、1年更新などの短期間契約のサブスクリプション型が登場したことで、支払いもしやすく、気軽に導入できるようになったことはSMBのお客さまにとって大きな変化です。
石黒 とはいえ、クラウドであっても管理する人は必要ですし、ある程度の専門知識も求められますよね。
石川氏 そのとおりです。IT担当者の人数はあまり変わっておらず、SMBのお客さまには1社に1人か2人専任の担当者がいるか、業務を兼任しているか、といった具合です。クラウドの活用によってIT担当者の負担は減っているものの、導入や運用をサポートする当社への期待の大きさは変わっていないと受け止めています。むしろ、多くのお客さまにはクラウドの導入や運用の知見が少ないため、私たちが果たすべき役割は大きくなっています。
Cisco Umbrellaのマネージドサービスを提供開始
石黒 そうしたなかで、新たにマネージドサービスを始めたと聞きました。
石川氏 2022年夏から、クラウドセキュリティ マネージドサービスを提供しています。Cisco UmbrellaにNTTデータ ルウィーブの運用サービスを組み合わせたもので、運用負荷をかけることなくセキュリティを強化できます。しかも、1カ月単位で利用できるフレキシブルさと低価格を両立しています。
石黒 実際に導入したお客さまからの評判はいかがですか。
石川氏 とても好評で、「求めやすい価格で、サポートも付いているので安心」という声をたくさんいただいています。私たちが想定していたとおり、お客さまは100ライセンス以下のSMBが中心で、もっとも大きな規模でもユーザーは200名ぐらいですね。
石黒 お客さまの業種に偏りが見られるなど、何か特徴はありますか？
石川氏 業種は製造業やサービス業などさまざまで、特定の業種が多いことはありません。テレワークを継続して推進しているという共通点はありますね。少なくとも問い合わせが入らない週はなく、SMBの皆さまがかなり興味を持っているようです。
石黒 問い合わせの動機についても教えてください。サイバー攻撃の被害に遭ったり、被害までは遭わなくてもインシデントが発生したり、そうしたきっかけから検討を始める企業が多いのでしょうか。
石川氏 被害に遭ったから、という話は聞いたことがありません。テレワークが増えてから検討を始めたケースが多いですね。旧来はオフィスにVPNでつないでからインターネットを利用するようなネットワークでしたが、ウィズコロナ/アフターコロナを前提にテレワークを継続するつもりでネットワークを抜本的に見直す流れがあります。
先ほど具体的なキーワードでの問い合わせが増えているとお話しましたが、Cisco Umbrellaも同様です。最初からCisco Umbrellaを第一候補に挙げているお客さまが多いですね。いろいろなインテグレーターのサイトを見比べてみて、当社が一番安いので問い合わせた、というお客さまも少なくありません。また、サポート付きのCisco Umbrellaを導入したいと検索した結果、当社にたどり着いたというケースがいくつもあります。
Cisco Umbrellaを使い始めてからセキュリティ意識が高まった
石黒 一般的には企業の規模が小さいと、ITやセキュリティに関するリテラシーがあまり高くない方が多いと言われています。それだけに導入によるメリットを享受できているお客さまもいらっしゃるのではないですか。Cisco Umbrellaのダッシュボードに表示されるレポートでは、不正なサイトへのアクセスをブロックしたリクエスト数などが一目瞭然ですよね。
石川氏 企業規模が大きくなるほどユーザー数も増えるので、一概にブロック数だけを見て比較はできないですね。それにSMBのお客さまは、あまりレポートを気にしていないように感じます。
ただ、おっしゃるとおり一般論としては、そもそもWebサイトの閲覧時に危険性を意識することが少ないようですね。いつも当たり前のようにアクセスしていたサイトが、Cisco Umbrellaを導入してからブロックされるようになり、そこで初めてユーザーがセキュリティを意識したという企業は多いと思いますよ。
石黒 「このサイト、見てはいけなかったのか！」と。会社のネットワークから不用意に見てはいけないという教育にもなっているわけですね。
石川氏 お客さまを訪問したとき、ランチの美味しい店を紹介しようとしてくれたのですが、お客さまがいつも見ていたサイトがCisco Umbrellaでブロックされたことがありました。「Cisco Umbrella、仕事していますね。入れてよかったですね」といった話で盛り上がりました。
改めて個人のスマートフォンでそのサイトを見せてもらったのですが、大手が運営しているわけではなく、個人ブログのようなサイトでしたよ。
石黒 確かに本文のコンテンツには問題がなくても、サイトに埋め込まれたバナー広告の配信元を基にCisco Umbrellaがブロックする場合もありますからね。
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NTTデータ ルウィーブが提供する「クラウドセキュリティ マネージドサービス」が評価されているのは、価格やライセンス体系だけではなく、クラウドを利用する際に悩みがちなポイントを押さえていることに価値を感じているからにほかなりません。その価値や、Cisco Umbrella以外のクラウド活用サポートについては後編でご紹介します。
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