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「聞こえる・聞こえない」の壁を越えて:100名が集まったMeet Upでの登壇と、私がITの道を選んだ理由

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2026年 2月 4日、シスコの東京オフィスで、認定NPO法人サイレントボイス主催のイベント
「 Meetup : 聞こえる人と聞こえない・聞こえにくい人 これまでと、これからの 10年」が開催されました。

私は RSG のチャンピオンとしてサイレントボイス支援に関わってきたご縁からゲストとして登壇しました。本記事では当日のレポートとあわせて、私自身が登壇してお話しした「なぜ IT の道を選んだのか」も書き残します。

※ RSGプログラム( Regional Solution Grant ):シスコが地域社会の課題解決に取り組む NPO 等を支援するための助成プログラム。社員が推進役(チャンピオン)として支援活動を伴走します。

 

1. イベントの概要と、舞台裏で見えたもの

会場となったシスコのオフィスには 100 名近い方が来場されました。開始前から席が埋まっていくスピードに驚きました。「聞こえる/聞こえない/聞こえにくい」という違いを越えて、同じテーマのもとにこれだけの人が集まる。その事実だけで、すでに強いメッセージだと思いました。

今回、私にとって大きかったのは、登壇者としてだけでなく運営面にも初めて深く関わったことです。来訪者の受け入れや当日の導線、必要な手配など、イベントが“当たり前に進む”ための準備は、想像以上に細かく、そして重みがありました。

「誰もが心地よく過ごせる空間」をつくるのは、理念だけではできません。具体的な手間と判断の積み重ねで、ようやく成立する。終わった瞬間に残ったのは疲れよりも、やり切った達成感でした。

 

2. トークショー:夢と挫折、そして「インフラ」への想い

私が当日お話しした内容の“核”です。
私の中の一本の軸は、ずっと「インフラ」でした。

幼少期:医師を志したが、最初の壁は“制度”だった

子どもの頃、医師に憧れていました。しかし当時は、障がいがあることで進路に制限がかかりやすい時代でした。本人の意思や適正より先に、制度や前提が壁になる。悔しさというより、飲み込みにくい虚しさがあったのを覚えています。

中高時代:父の仕事から見えた「地図に残る仕事」

次に私の心を強く引いたのが、父の仕事でした。土木の現場を通じて、社会を支える“土台”の価値を知りました。表に出にくい。でも止まった瞬間、生活が立ち行かなくなる。そういう仕事に魅力を感じました。

二度目の壁:安全の前提が違うと、同じ入り口に立てない

大学はエネルギー業界、とりわけ原子力工学の道を考えました。しかしここでも壁がありました。安全の現場では、警報音など「音」を前提とする設計が多い。聞こえない私にとって、その前提がある限り“リスク”として扱われやすい現実がある。これは誰かを責める話ではなく、安全を守る設計が「聞こえる人」を前提にしているという構造の話です。
二度目の挫折は正直こたえました。でも同時に、「社会を支える仕事がしたい」という想いだけは、諦めたくありませんでした。

 

3. 転機:ドイツでの出会いと「インターネット」という新たなインフラ

転機は 1996年、ドイツへの一人旅でした。旅の中で出会ったアメリカ人のろう者との会話が、私の進路を大きく変えました。

その方は、こう言いました。

「これからはインターネットが最も重要なインフラになる」

当時の私は、今のようにインターネットが生活に溶け込む未来を、具体的に想像できていたわけではありません。でも、その言葉は不思議なくらい腑に落ちました。

土木のインフラ。エネルギーのインフラ。そして次は、情報のインフラ。
社会を支える土台は形を変えていく。ならば私は、その新しいインフラの側に立とう。
そう決めて IT の世界へ飛び込みました。

今、私はシスコで働き、IT という形で“つながり”を支える仕事に関わっています。かつて目指した「社会を支えるインフラ」を、別の形で実現できている。そのことを誇りに思っています。

 

4. 参加者の声と、「これからの 10年」

イベント後、参加者の方からこんな感想もいただきました。

  • 「話に引き込まれた」
  • 「知らなかったことが多く、あっという間だった」
  • 「”インフラ”でつながるストーリーが印象に残った」

とてもありがたい言葉でした。

そして、今回のテーマ「これまでと、これからの 10年」に対して私が強く思うのは、次のことです。

テクノロジーは、障壁(バリア)をゼロにする魔法ではない。
でも、設計と意思があれば、障壁を”低くする力”にはなれる。

違いそのものより、社会の前提や設計が壁をつくってしまうことがある。
だからこそ、これからの 10年は「技術そのもの」以上に、技術をどう設計し、どう運用し、誰の声を起点にするかが問われる 10年になるはずです。

 

終わりに:舞台裏と打ち上げで気づいた、真の「インフラ」

今回の Meet up は、私にとって登壇という役割だけでは終わりませんでした。運営の裏側に深く関わったことで、来場者の案内や細かな手配など、イベントを滞りなく進めるための準備がいかに緻密で、重みのあるものかを痛感しました。こうした裏方の支えがあってこそ、あの”当たり前”の素晴らしい時間が生まれるのだと、身をもって知る貴重な経験となりました。

イベント後、サイレントボイスの皆さんに誘っていただき、打ち上げにも参加しました。
支援者や寄付者の方々も集まっていて、活動を「支える側」の空気を間近で感じる時間でした。

そこで印象に残ったのは、代表の尾中さんの人柄です。場を仕切るというより、人と人の間に自然に橋をかけていく。だからこそ支援が“単発”で終わらず、長く続いているのだと腑に落ちました。

私自身も、「サイレントボイスとご一緒してよかった」と素直に思えた夜でした。

インフラは技術だけじゃなく、人と人の信頼でもできているーーーそんなことを思った夜でした。

シスコの I&C( Inclusion & Collaboration )に関わる立場としても、今後こうした対話の場を大切にし、社内外のつながりを育てていきたいと思います。

最後に、認定 NPO法人サイレントボイスの皆さま、そして当日ご参加くださった皆さまに、心から感謝します。

 

Authors

Daisuke Sugihara

Web Developer / I&C Communication

APJC Field Marketing

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