今回のブログでは、「やわらかいインフラ」を構成する5つの要素、Connect / Secure / Optimize / Automate / Observeのうち、「Automate」について解説します。前回の「Optimize」では、仮想環境による物理システムの抽象化、各ドメインコントローラーと統合コントローラによるインフラの一元管理と標準化、統合管理機能によるプロファイルの一元管理を通して、物理構成にとらわれないリソースの柔軟な最適活用について定義しました。
今回は「Automate」は、運用性を高めるための「やわらかいインフラ」の要素となります。
APIによる連携制御
例えば、ある NW サービスを実装しようとするとき、どのようなシステム機能があるとよいと思いますか?そのサービスに必要なプロビジョニングを、シームレスかつ素早く、しかも正しい順番で複数のシステムに投入できる自動化の仕組みが重要だと考えるでしょう。
これを実現するためには、サービスを有効化するための統合コントローラがあり、そこでは各サービスがカタログ化され、各ドメインコントローラと標準化された API で連携して、クロスドメインでのプロビジョニングを可能とする自動化ソリューションが有効となります。
NW サービスの例の場合、仮想基盤のコントローラと連携して VM を作成し、ポートを作成し、リンクがアタッチされます。その後、統合コントローラは、ドメインごとに設置されているコントローラと連携してライセンスを設定したり、コンフィグを投入します。そして、サービス正常性確認を行う機能を使って状態確認を行います。さらに統合コントローラは、この新しい “NW サービス” に対する監視を有効化するための登録作業をサービスアシュアランスシステムに対して実施します。
ここで重要なのは、統合コントローラには、様々なサービスの有効化を実現するためのサービスカタログをもち、それらはすべてサービスオーダーとして、ドメインコントローラや他システムとAPI を通して連携する、迅速かつ確実にサービスが実装できる仕組みづくりが必要ということです。
「Automate」で必要なソリューション
そのような自動化、つまり「Automate」を実現するためには、どのような機能が求められるのでしょうか。前述したように統合コントローラには、各ドメインコントローラと連携するワークフロー機能やプロビジョニング機能が必要です。統合コントローラに具備されるべきワークフロー機能は、各ドメインコントローラや他システムとの連携を行います。またプロビジョニング機能は、冪等性を保った形にて実装される必要があります。
また、「Optimize」にて定義した一元化されたプロファイルデータは、統合コントローラレベル、ドメインコントローラレベルで適切に管理され、それらプロファイルデータへのアクセス連携も重要です。
このように「Automate」では、「Optimize」にて実現されたシステム構成の中で、業務やサービスにて求められる要件を“サービスオーダー”として統合コントローラに実装する API 連携が求められます。そこには、統合コントローラとしての CRUD、加えてロールバック機能等もドメインコントローラーの API と連携して実装されていることも重要です。
「Automate」におけるシスコのソリューション
シスコでは、上記のような連携を実現するための様々なソリューションを準備しています。そのなかの 1 つが、ネットワークに対するサービスをオーケストレーションするためのシステム「Network Service Orchestrator (NSO)」です。
NSOでは、様々な機器をサポートするドライバやアダプテーションが用意されており、ネットワーク機器はもちろんのこと、仮想基盤ソフトウェアへのオーケストレーションをElastic Service Controller(ESC)というVNF マネージャコンポーネントと連携して行うことができ、冪等性を担保した上で、様々な機器へのプロビジョニングやロールバックが可能になっています。
また、統合コントローラーにおけるオーケストレーションには、同期/非同期を含む連携、並行実行、作業の一時停止から再実行など、複雑なワークフロー制御が求められます。これらの制御は、各ドメインコントローラや他システムとの連携も含めて実行されなければなりません。
シスコのサービス部門であるCustomer Experience (CX) では、そのような複雑なワークフロー要件に対応できるよう、これまでのシステム運用に求められる要件をベースにHEART[1]というソリューションサービスを日本のお客様向けにも開発しています。
やわらかいインフラの 4 つめの要素である「Automate」では、自動化によって迅速な展開や対応を可能にします。従来のインフラの運用は、各ドメインの装置にフォーカスしていました。やわらかいインフラでは、各ドメインを管理するコントローラを中心にして、インフラ全体をインフラアズコードのように運用します。
上記は一例となりますが、いきなりインフラ全体を自動化するのは簡単ではありません。そのため、各ドメインからインフラ全体への広げていくような戦略を立てることを推奨しています。また、すでにドメインごとの自動化が実装されている場合には、さらなる高度化を目指して、E2Eや自立機能のようなものに向かっていくべきと考えています。
最後に
今回は「やわらかいインフラ」の4つ目の要素「Automate」について解説しました。Automate では、Optimize に付随する統合コントローラやドメインコントローラ、さらに一元化されたデータを利用して、横断的に制御するための仕組みが必要です。そのためにはインフラ全体を API で制御できるようになることが重要となります。統合コントローラ部分はビジネス要件により異なるため、ビジネスの将来性を考慮し構築しなければなりません。
次回は、マルチドメインで連携することで、ワンストップで迅速な運用を実現する5つ目の要素である「Observe」について説明します。「Observe」では、ユーザーからアプリケーションに至るまでエンドツーエンドで可視化を行い、ユーザーのデジタル体験に影響を及ぼす問題を迅速に解決することを目的としています。
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[1]HEART は Cisco カスタマーエクスペリエンスプロフェッショナルサービスの運用支援サポートサービスで提供しているソリューションサービスです。