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やわらかいインフラ(1) – 誕生の背景と概要

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本年の Cisco Connect Japan 2023 では、「やわらかいインフラ」について複数のセッションに分けてお伝えしました。

これから「やわらかいインフラ」についてシリーズで解説をしていきます。ぜひ、お楽しみ頂きたいと思います。第1回目となる本ブログでは、「やわらかいインフラ」というキーワードが誕生した背景と、「やわからいインフラ」の概要について紹介します。

IT インフラの現状

社会環境やユーザーニーズの変化、パンデミックなどにより、IT インフラを取り巻く環境は大きく変化しています。これまでオフィス中心だった働く場所は、リモートオフィスや自宅など様々な場所にも拡がり、ハイブリッドワークが一般的になりつつあります。また接続されるデバイスは、BYOD(Bring Your Own Device)や IoT (Internet of Things)により多種多様なものになりました。ビジネスで利用するデータの保存場所は、オンプレミスのサーバと複数のクラウドプラットフォーム上のハイブリッド環境になり多様化しています。

さらにアプケーションの開発ライフサイクルは、DevOps の利用により日々のアップデートがおこなわれるようになっていますし、セキュリティの考え方は、これまでFirewallで作っていた境界線が曖昧になり、社内でも信頼しないゼロトラストに変わってきています。

このような加速度的で劇的な変化により、ITインフラは複雑化し、企業のコントロールが届かない領域が増えています。

ITインフラのビフォー&アフター

IT インフラのビフォー&アフター

一部のお客様は、すでにこの問題を認識しており、IT インフラの複雑性に対応するための対処を実践しています。そのために IT インフラを活用したデジタルビジネスへの取り組みにおいて二極化してしまっているのが現状です。

経済産業省のDXレポート2.2で示されている既存ビジネスを中心とした企業から、デジタル化により収益の向上を目指す企業に変化するためには、経営層が全社的な変革アプローチを指示することが必要となります。

DXレポート2.2(デジタルで収益向上を達成するための要因①)

出典:デジタルトランスフォーメーション DXレポート2.2(デジタルで収益向上を達成するための要因①)

有名な 2025年の崖では、レガシーシステムを放置することで、2025年以降に大きな経済損失が生じると予測していました。つまり、2024年までに対策が必要であると考えられます。しかし、日本の多くの企業が DX に取り組んでいるにもかかわらず、DX によるビジネス変革がうまく進まず、DX が本来もたらすべき成果を出せていない状況が見受けられます。

DXを支えきれないITインフラ

DX を支えきれない IT インフラ

DX を進めるための投資が、ビジネスに直接関係するアプリケーションやデータに集中しており、それらを支える重要な土台となる IT インフラはコスト削減の対象となっています。また、様々なビジネス要件が出るたびに IT インフラに変更を加え、それが複雑化を引き起こしています。これも、DX ビジネスがうまく進まない要因です。

複雑化するITインフラ

複雑化する IT インフラ

つぎはぎに進化しすぎた IT インフラが足かせとなり、デジタルプロジェクトがうまく進まないのです。

さらに、IT インフラの運用・保守の現場でも、急速な技術進化や社会環境の変化、ユーザニーズの変化によりインフラの複雑化に加えてブラックボックス化しています。そのために仕事が増える一方でリソースが減るという状況となり、現場エンジニアの疲弊は限界を超えているといえます。

IT部門 現場の疲弊

IT 部門 現場の疲弊

DX 成功のためには、将来的なアプリケーションやデータの変化に対応できる、DX を支えられる柔軟な IT インフラが必要不可欠です。

抽象化され柔軟な「やわらかいインフラ」

先に述べたように、日本のビジネスにおいて、ネットワークやサーバーといった従来型の IT インフラに対するコストダウンが迫られる一方、クラウドプラットフォーム、DX アプリケーション、データといった、より上位レイヤに対しての投資のみが大きくなることで、IT ネットワーク全体が非常に不安定な状態となっています。足下のレガシーインフラの運用が限界を超えて管理不能なレベルとなり、新たな要件追加もできず、DX を支えきれない状態では、アプリケーションやビジネスのデジタル機能にどんなに多額の投資をしても、無駄に終わります。

DXを支えきれないITインフラ から やわらかいインフラへ

DX を支えきれない IT インフラから「やわらかいインフラ」へ

これらの問題を解決するためには、IT インフラ上にあるアプリケーションおよびデータの大きさや種類・負荷に応じて、ITインフラも大きさや性能を柔軟かつ迅速に変化させる必要があります。そのためには複数の機能からなるITインフラを抽象化し、ITインフラ全体を一つの概念として捉えることが重要なポイントとなります。

この抽象化より、ユーザやデバイス、アプケーションやデータの変化に柔軟に対応できるインフラが、Ciscoが提唱する「やわらかいインフラ」です。

やわらかいインフラ = 抽象化され柔軟なインフラ

やわらかいインフラ = 抽象化され柔軟なインフラ

やわらかいインフラは、従来のネットワーク・コンピュート・クラウド・セキュリティといったかたいインフラを、オレンジ色の枠で示すように抽象化し将来の要件変化に柔軟に対応することができます。

次回は、やわらかいインフラを構成する各要素について説明します。

 

参考資料:

[1]経済産業省 – DXレポート2.2(概要) 令和4年7月 デジタル産業への変革に向けた研究会
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/covid-19_dgc/pdf/002_05_00.pdf

[2] IDC 2023/01 – Market Forecast – Doc # JPJ49207823 By: Hitoshi Ichimura国内IT市場 地域別予測、2023年~2026年https://www.idc.com/jp/research/report-list?document=JPJ49207823

 

「やわらかいインフラ」の詳細はこちら
DX を支える柔軟な IT インフラ

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Authors

小池 正仁

Principal Architect

Customer Experience

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