シスコのInclusion & Collaborationの取り組みの1つであるWomen of Ciscoでは、3月8日の国連国際女性デー*1のお祝いと重ねて、女性のこれまでの歩みを称え、今後のさらなる活躍を目指す『Women of Impact』というイベントを毎年3月に実施しています。
今年のWomen of Impactは3月22日に会場とオンラインによるハイブリッド形式で開催され、UN Women*2の岡田絵美氏*3をお招きして、ジェンダー格差・ジェンダー平等についてお話しいただきました。Women of Cisco のジャパンイベントでは、東京オフィスとWebexによる全国からのオンライン参加含め過去最大の300名ほどが参加し、日本と世界におけるジェンダー格差の実態、企業として、 そして個人として取り組めることについて理解を深めました。当日の様子をブログにてお伝えします。
もっと包括的で平等なテクノロジーをつくるために
今年の国連国際女性デーのテーマが「ジェンダー平等のためのイノベーションとテクノロジー」であり、シスコのパーパス(存在意義)である「全ての人にインクルーシブな未来を実現する」とまさに一致しているため、今回の貴重なご講演をシスコのイベントにて実施いただけることになりました。
まず、デジタルイノベーションは社会・経済開発の推進力になる一方で、ユーザ側、開発・販売側に存在する男女のデジタルスキルギャップやジェンダーバイアスにより、現存のジェンダー不平等を拡大させかねないという側面についてお話しいただきました。
ジェンダー格差を生む背景として、IT業界における女性の技術職・管理職が少ないため、必然的に男性の意向で開発・販売がなされていること、また、オンラインでの標的になりやすいのが少女や若い女性であることなど、様々なデータから示されています。
ジェンダー平等までにかかる時間
なかでも衝撃的なデータとしては、UN Womenのレポートによると、法の下でのジェンダー平等を達成するには286年かかるということでした。また、職場や国会においても男女平等を達成するには長い時間が必要されると推定されています。
ジェンダーギャップ指数からみる日本
世界経済フォーラムが発表した2022年のジェンダー・ギャップ指数について、日本は116位/146か国と先進国なのに非常に遅れている結果となっており、この背景には、教育面・健康面で女性はエンパワーメントされているが、経済面・政治面での女性管理職・技術職あるいは議員・閣僚の男女比が低い指数の原因を占めているということが分かりました。
特に経済面では、無償ケア労働時間の男女比データを見ると、OECD加盟国全体では平均が2倍であるところ、日本では女性が男性より無償労働を5.5倍やっていると指摘されていました。冒頭で、女性のリーダーシップ参加の欠如というデータを見ましたが、女性も社会に位置付けられた一個人であり、社会的な期待値が変わらなければ、環境が整わなければ、女性管理職を増やすことはできないということでした。
ジェンダー平等推進:シスコができること
エンパワーメントには何が必要なのか?という問いについて、制度といったハード面での整備だけでなく、ソフト面、根底にある人々の意識改革が非常に重要ということで、「HeForShe」「アンステレオタイプ・アライアンス」「女性のエンパワーメント原則(WEPs)」の3つのグローバル取り組みをご紹介いただきました。
ジェンダー平等推進:あなたができること
ここまでは企業としてできるソフト面での意識改革を見てきましたが、一個人としてできることとして、「まずは周りの人の意識改革から始めていってはいかかでしょうか?」というところからご紹介いただきました。
・家族、友人、同僚との会話で、あえてジェンダーに関する「常識」「当たり前」に対して疑問を呈すること。
・自分が買うもの、サービスがどこから来ているのか調べてみる。例えばサプライチェーンにおいて人権侵害はないのか、女性の権利の侵害はないのか。
・日常の生活の中でおかしいと感じることに声をあげること。できれば同時に対案も考えること。
・ジェンダー平等な社会や世界をつくろうと声をあげる人達を明示的に支援する。
・ジェンダー平等を実現するために不可欠なデータ・情報の収集に貢献する。
最後は国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏の言葉で締めくくられました。
“女性を変えるのではなく女性の可能性の実現を阻む仕組みを変える時が来ています”
女性一個人が変わっても社会そのものは変わらないので、周囲も一緒に変わって、ジェンダーの在り方、平等の在り方が変わっていく、といったUN Womenの考えを共有いただきました。
また講演後は、イベントに参加したシスコ社内の様々な方とネットワーキングしながら意見交換できる場ともなり、Women of Ciscoのメンバーの会場での仕事ぶりや雰囲気を実際見て、仲間になりたいと言ってくださった方、Women of Ciscoメンバー同士でも会話がたくさんでき、インパクト!がとても大きいWomen of Impactイベントとなりました。
*1 3月8日は国連国際女性デーであり、国連加盟国に対して、女性の平等な社会参加機会の環境整備を促す日です。
*2 UN Womenとは?(HPより抜粋)
UN Womenはジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための機関です。女性と女児のためのグローバルな支援者として、世界全域で女性と女児のニーズに応じた変化をさらに加速させるために設立され、国連加盟国がジェンダー平等の達成をめざし、国際基準を策定する支援をします。
2023年3月8日の国際女性デーのテーマは、「DigitALL: Innovation and technology for gender equality(ジェンダー平等のためのイノベーションとテクノロジー)」です。
*3 岡田絵美(おかだえみ)氏略歴
UN Women日本事務所 パートナーシップ専門官
岡田絵美(おかだえみ)氏
シドニー大学国際政治学科・法律学科卒業。東京大学人文社会系研究科博士課程修了。博士論文の課題は非暴力と大乗仏教。オックスフォード大学国際開発学科にて第二修士号を取得。西オーストラリア州最高裁判所で裁判官補佐を二年近く務め、オーストラリア弁護士資格を取得。法律分野での職務のほか、内閣府国際平和協力本部事務局研究員、国連大学学長室ジュニアフェロー、日本紛争予防センター事務局長補佐、多摩大学グローバル学部非常勤講師、日本大学人口研究所英語編集者など、各種業務に従事。2015年3月よりJunior Professional Officer (JPO)として国連開発計画(UNDP)東ティモール事務所民主ガバナンス・ユニットへ着任。その後同事務所でプログラム・スペシャリストに昇進。2017年にUNDPミャンマー事務所の民主ガバナンス・ユニットに半年出向。2018年7月よりUN Womenミャンマー事務所にてプログラム・マネージャーを勤める。2022年6月より現職。