新型コロナウィルスの感染拡大でシスコが全世界でリモートワークに移行してから、一年半以上が過ぎました。感染が落ち着いてきている国では政府や会社が定めるルールの元で出社が可能ですが、未だ自宅でリモートワークを続けている従業員が大多数の状況が続いています。
もともとシスコでは、コロナ禍以前よりオフィスでも自宅でもどこからでも働けるハイブリッドワークスタイルを実現しており、柔軟な働き方を支える3要素である「企業文化」、「制度」、「テクノロジー」がありました。
しかしパンデミック下での完全リモートワークとなると、少し話が違ってきます。集中できる環境が自宅になかったり、対面で人と話せないもどかしさや先行きの見えない不安から、初めのころは「早く以前のようにオフィスに戻って仕事をしたい」と話す人も多くいました。
しかし人間は変わりますし順応します。今では、リモートワークはパンデミックとともに去るものではなく、シスコにおける基本のワークスタイルとして、すっかり定着したと感じています。
そんなシスコ従業員のリモートワークをテクノロジー面で支えているのがシスコ IT です。
こちらは私が Cisco on Cisco(グローバルで展開されるシスコ IT の取り組みをお客様にご紹介するプログラム)でシスコ IT のリモートワーク事例をご紹介させていただく際に使っている資料の1ページです。
もちろん実際はこれ以外にたくさんのシステムやツールが存在しており、従業員が直接使うデバイスやアプリケーションから、バックエンドのセキュリティやネットワークなどのインフラまで多岐に渡ります。このスライドでは主に従業員目線から見たツールなどを中心に代表的なものを載せています。
ここでのポイントは、コロナ禍になったからといって新たに追加されたものは一つもないという点です。基本的なアーキテクチャを変える必要がなかったので、全世界 14 万人の従業員が短期間でリモートワークに移行することができました。
では3つのカテゴリーに分けて、少し詳しく説明してきたいと思います。
リモートアクセスとゼロトラストセキュリティ
リモートアクセスというと、まず初めに思い浮かべるのは VPN ではないでしょうか。シスコでは自社のVPNソリューションである AnyConnect を利用しています。コロナ禍で VPN の利用が一気に増えたことで VPN のキャパシティを二倍に増強、また一部のトラフィックを スプリットトネリング するようにもなりました。
またリモートアクセスする方法は AnyConnect だけではありません。自宅に Cisco Virtual Office (CVO) または Meraki Virtual Office (MVO) というルータを設置することで、オフィスにいるのと同じように社内ネットワークへの常時接続が可能になります。
更に Duo テクノロジーを使ったゼロトラストの実装によって、VPN を接続しなくても一部アプリケーションにアクセスできます。多要素認証や証明書でユーザーそしてデバイスの認証と検証をしっかり行うことで、VPN を使わずにオンプレミス、クラウド両方のアプリケーションにアクセスが可能となっています。現在は対象アプリケーションは 80 以上にのぼり、今後も追加されていきます。
ゼロトラストはセキュリティとユーザーの利便性を同時に向上させる取り組みであり、セキュリティの境界線がネットワークからユーザーやデバイスに移ってきている今、シスコ IT でも最も注力しているエリアの一つになります。
セキュリティに関してはその他にエンドポイントセキュリティ、ネットワークセキュリティ、データセキュリティ、クラウドセキュリティ、ユーザー向けセキュリティ教育など広範囲にわたる取り組みがあり、今後ますますの進化に注目です。
デバイス
次は従業員が使うデバイスについてです。オフィスでもリモートワークでも、社内ネットワークやアプリケーションにアクセスするには、デバイス管理システムに登録されセキュリティ対策がされた「Trusted Device(信頼されたデバイス)」である必要があります。これは会社支給のラップトップでも BYOD のモバイル端末でも同じです。エンドデバイスセキュリティには AMP for Endpoints、モバイル端末のデバイス管理には Meraki Systems Manager、ネットワーク認証には ISE、デバイスヘルスチェックには Duo、ウェブアクセスの保護には Umbrella、と様々なシスコソリューションを活用しています。
なおコロナ前は、新入社員は初日にオフィスに来てラップトップを受け取って設定を済ませてから帰宅するのが当たり前でしたが、今は自宅郵送されるラップトップを自宅の Wifi につないで設定できるようになりました。これは全社リモートワークになったことで大きく変わったプロセスです。
また、ウェブ会議には専用のビデオ端末を使うのがシスコらしい点かと思います。私も Webex デバイスの個人用モデルを自宅に設置して使っていますが、専用機ならではの音声や画像のクオリティの高さが、いわゆるビデオ会議疲れを大きく軽減してくれると感じています。
コラボレーションツールと業務アプリケーション
そして日々業務に使用する様々なアプリケーションがありますが、やはりリモートワークにおいて重要なのはコラボレーションツールです。シスコのコラボレーションの中心は Webex です。
コロナ禍初期に海外でロックダウンが始まった頃、Webex ミーティングの使用率は一か月で 65% 増加、Web アプリでのファイル共有とメッセージングはそれぞれ 35% と 45% 増えました。対面のコミュニケーションが Webex を使ったバーチャルのコミュニケーションに置き換わったことがわかります。
シスコではパンデミック前からも、マネージャーの 52% は別の国や都市に部下がいましたし、従業員の 50% はリモートのメンバーと仕事をしていましたので、もともとバーチャルのコミュニケーションには慣れていました。
今では何千人が視聴する全社向け会議から毎週のチーム定例会議、また同僚同士での雑談的な情報交換の場まで Webex ミーティングをフル活用しています。また、Webex メッセージングを使ってプロジェクトの細かい進捗報告や情報共有も効率よく行うことができますし、何かちょっと話して確認したいなと思ったら Webex コーリングでワンクリックで電話もできますので、全員リモートワークの状態でも問題なく仕事を進めることができていると思います。
その他、業務に使うアプリケーションは 2,000 以上あり、その内の約 500 はクラウドの SaaS アプリケーションを使用しています。今後もパブリッククラウドやプライベートクラウドの利用はどんどん増えていくでしょう。そして社内で特に広く使われていたり、従業員の生産性向上に大きくつながるアプリケーションについては、前述の通りゼロトラスト対応がされ VPN 接続なくアクセスできるようになっています。
パンデミック後のハイブリッドワーク
さて、今はコロナ終息後の働き方が世界でも広く議論されています。業態や職種、企業文化によって最適な働き方というのは本当に様々だと思います。完全リモートにシフトする、オフィスとリモートと半々にする、オフィスが基本だけど状況に応じてリモートワークする、など色々なバランスがあると思いますが、程度の差はあれ場所を問わない「ハイブリッドワーク」の要素が取り入れられていくのは確かでしょう。
新しいハイブリッドワークスタイルへの転換はシスコにとっても新しい挑戦です。
シスコが 2021 年 2 月と 8 月に実施した グローバルの社内サーベイ では、コロナ収束後も週に 3 日以上オフィスで働くと回答した従業員は全体の四分の一以下でした。
コロナ前の働き方ともフルリモートワークとも違う、新しいハイブリッドな働き方とはどのようなものになるでしょうか?働く場所に関係なく、誰もが同じようにチームに貢献できて意見が尊重される、そんな「インクルーシブ」な環境づくりがより一層大切になります。そして、コロナ禍前は当たり前に通っていたオフィスは、目的をもって行く場所に変わっていくでしょう。
そのような中、IT が担う役割は引き続き重要です。上でご紹介したような既存の取り組みの更なる拡大や改善の他、DNA Spaces を使ってオフィスの利用状況をモニタリングしたり、ThousandEyes でネットワークやアプリケーションのパフォーマンスを可視化し技術的な問題をより迅速に解決するような取り組みが続いていきます。
パンデミックの状況はまだまだ変わると思いますが、シスコ IT は変化に対応して社内の新しいハイブリッドワーク環境を支えていきます。今後もシスコ IT の取り組みにご注目ください。
【参考記事】
- Remote Work: Keeping It Secure – How Cisco scales our secure remote workforce
- Collaboration for a remote workforce
- Moving to a hybrid world: What we’ve learned
- Hybrid Work Index
1 コメント
This is a very informative blog Tomoyo – congratulations!