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シスコ派遣記 Season2 EP11~国家公務員の働き方改革(後編)~


2018年3月23日


京都府庁からシスコに派遣されております山本です。さて、2 回にわたり国家公務員の働き方改革についてルポしております。今回はその後編。総務省 地域力創造グループ 地域政策課の田中佑典さんにインタビューさせていただきました。

前回は総務省の働き方改革をリードされている白倉さんにお話を伺いました。その際に白倉さんが強調されていたのが「多様性な働き方」です。現状として総務省では多様な働き方が実現しているのか、総務省で勤務されている田中さんへのインタビューを通じてお伝えしたいと思います。

二地域居住という生活

山本:田中さんは現在、二地域居住をされていると聞きました。

田中佑典さん(以下、田中):今私は東京と長野の二地域居住をしています。平日は東京で仕事をして、休日は基本的に長野で過ごしています。

 入省後に 2 年間長野県庁に出向していたのですが、そこで妻と出会って結婚しました。妻は長野県庁で勤務しており県内に住んでいるため、週末は妻の地元に向かいます。

長野県庁出向中に趣味で始めた狩猟や商店街振興等の地域活動、妻の実家の農業のお手伝いなど、週末は長野の生活を思いっきり楽しんで、月曜日の朝に直接東京の職場に向かっています。東京で下手に消費生活を続けるより、長野に帰って生活したほうが、生活にメリハリがあって自分には合っています。

山本:移動時間や二重生活の経済的な負担はないのですか。

田中:負担がないわけではありません。移動も新幹線利用で1時間半かかりますし、往復の交通費も負担です。私は当初から別居婚だったので、単身赴任手当も支給されません。

でも、移動中は 1 週間の出来事を整理したり、ぼんやりと物事を考えるには丁度良い時間ですし、長野では妻の実家が所有する空き家を借りているので、経済的な負担も軽減できています。全国の自治体で空き家対策が課題になっており、地方で住居を見つけることは今後容易になると思います。

働き方改革は地方創生

山本:なるほど。田中さんの二地域居住は空き家対策にもなっているのですね。

田中:働き方改革は地方創生に繋がると考えています。ネットワークやモビリティが向上することで、私たちは「いつでもどこでも」仕事ができるようになりました。仕事によって居住場所が縛られることはなくなり、今日は A 地域の住居から仕事をして、明日は B 地域の住居から仕事をするといった働き方をしている友人もいます。

これまでの地方活性化は、都会から地方に移住してもらうことを重視していました。でも、人口減少社会において、U ターン・I ターン施策は時に自治体間での補助金合戦になりかねません。年々人口そのものが減少していくため、パイは限られているのです。

そこで、二地域居住のように都会と地方のどちらにも住居を持ってもらって、その間を行き来して生活することができる仕組みを整えれば、地方を支える人口をもっと増やすことができると考えています。少し先の話ですが、自動運転などの技術がさらに進めば、都会と地方の体感距離はぐっと縮まるでしょうし、車など地域で暮らす必需品を複数人でシェアすることで、個々人の負担を減らす取組も始まっています。モビリティの向上、ICT の進化、地方の空き家など上手く活用することで、都会の生活と地方の生活両方を享受できるようになると思います。

山本:二地域居住してもらうことで、ふるさと納税も増えそうですね。

田中:そのとおりです。地方の「定住人口」や「交流人口」だけでなく、これからは二地域居住やふるさと納税をする「関係人口」を増やす取組も推進しなければならないと考えています。関係人口を増やすことで将来的に定住人口を増やすことにも繋がります。

次世代が働きがいを感じられるように

山本:田中さんの二地域居住はまさに総務省の施策を体現されているのですね。田中さんは総務省の働き方改革チームにも参加されていますが、働き方をどう変えたいと思っていますか。

田中:私は長野県庁や他省庁への出向を経験して現在総務省で働いています。いろいろな行政機関を回って改めて感じたことは、公務員は定年までの 40 年スパンでキャリアパスを考えるため、最初の 10 年は下積みとして経験を積む期間と位置づけられているということです。これにはメリット・デメリット双方あります。物事を動かしていくためには、単に目標を語るだけでなく、それに伴う資料作成や根回し、説明や調整が不可欠であり、そうした下積みで培われた基礎体力が将来生きてくる点は否定できません。一方、長時間労働に加え、達成感を感じられず、早い段階で疲弊してしまい退職する方がいるのも事実です。熱い志を持っているだけに、本当に残念です。

特に、次世代の若手たち、ミレニアル世代より下のいわゆる「Z世代」の大学生たちと話をしていると、彼らが非常に強く社会課題を意識しており、形式にこだわらずゴールに向かって一直線に向かう傾向があるように感じます。そのためか、組織としてよりも個々人のエンパワーメントを重視していて、短時間で自分がどれだけ成長できるか、より合理的に、冷静に判断しています。そして、そうした新たなニーズと官庁という大組織との間に乖離が生じてきているように思います。確かに国家レベルの仕事となると予算や事業規模が大きくなり、仕事に対して自分の関われる範囲が一部になることは仕方のないことですが、プロジェクトベースで計画段階から事業の執行まで自分の裁量において仕事をするチャンスがあまり多くないように思います。若手はあらかじめ決められたことを現実に落とし込んでいく作業を担当するケースが多いです。

山本:今、民間企業で仕事をしていると、若手でも自分の裁量で仕事を組み立て、自分の強みが発揮できる領域で仕事をするということが当たり前です。そのことは自分の成長にも繋がるし、仕事をジブンゴト化することに繋がると思っています。

田中:そうですね。そういった経験が少ないと思います。若手がもっと働きがいを感じることができる環境を作っていきたいです。

また、私は他省庁に出向中に上司からパワハラを受けたことがあります。上司に決裁書を持って行くと、投げられるし破られるし「こんな文書持ってくるな」と怒鳴れるようなことがありました。そのときは、勇気を出して同じ所属の数人でパワハラ相談員に相談に行くことで最終的に問題を解決できたのですが、そういった事態が起こらないようにピープル マネージャーをしっかり育成する環境が必要です。360 度評価の導入など人事評価制度の改革も必要だと考えています。また、霞ヶ関全体として、職位が上がり部下を持つポストになっても、プレーヤーとして業務をする上司が多いという声もよく聞きます。業務多忙もありますが、一定の年次になれば自然と管理職になってしまう霞ヶ関において、いかに部下をマネージメントする意識を涵養し、個々人の強みに合わせた仕事の割り当てができる人材を育成していくかは重要な課題と考えます。

山本:同じことが後輩職員に繰り返されないよう制度として未然に防ぐ必要がありますね。田中さん、本日はありがとうございました。

インタビューを終えて

前回と今回の 2 回に分けて、国家公務員の働き方についてルポしました。「不夜城」と呼ばれる霞ヶ関でも若手職員から多様な働き方の模索が始まっていることをお伝えできたと思います。

お二人とも同期職員や後輩職員など身近な職員の働き方を良くしたいという思いが働き方改革の活動を続ける原動力となっているということでした。職員個々人が、身近な職員が生き生きと働きがいを持って仕事ができる職場作りを考え、その取組を一つずつ実現していくことができれば、省庁という巨大組織も変わっていくように思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

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