Cisco Japan Blog

シスコ派遣記4~シスコのテレワークの取り組み~

1 min read



これまで個人的な気づきを中心に書いてきましたが、今回のブログでは、なぜシスコにおいて、テレワークをはじめとした働き方改革が実現したのかという点に着目して、シスコのテレワークの取り組みについて紹介したいと思います。

シスコは、社員全員が共感・共振する企業文化、高い目標を達成する戦略プロセス、コラボレーション技術(映像や音声によるコミュニケーションツール)を通じた「働き方改革」を強力に推進しています。特に、テレワークにおいては、2008年に全社員を対象としてテレワークを推進することを宣言しており、現在では約1,200名の社員のほぼ全員が日常的にテレワークを実践しています。

あまり知られていない“テレワーク”

cisco-dispatched-04-teleworking-in-cisco-fig1そもそも「テレワーク」という言葉をどれくらいの人が聞いたことがあるでしょうか。どこかで耳にしたことがあるけれど、詳しくは分からないといった人が多いのではないでしょうか。平成28年度情報通信白書においても、テレワークの認知度について、日本の就労者のうち、54.2%が「ほとんど聞いたことがない」と回答しており、認知度の低さが露呈しています。正直なところ、あまり馴染みのない言葉だと思います。

テレワークとは、「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語であり、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。テレワークは働く場所によって、「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス」の3つ分けられています。

同白書によると、テレワークの導入状況について、「導入している」と回答した企業は 16.2%にとどまり、「導入していないが、具体的に導入予定がある」と回答した企業と合わせても全体の2割程度と、まだまだ普及していないのが現状です。そのような中で、シスコではほぼ全ての社員がテレワークを実践していますが、テレワークが実現できたポイントはどこにあったのでしょうか。

テクノロジーだけでは進まない“テレワーク”

シスコでは、テレワークをはじめとした働き方改革を進めるためには、3つの要素((1) 組織風土 (2) プロセス・制度 (3) テクノロジー)が必要だと考えられています。重要なポイントは、単にテクノロジー(IT ツール)だけを導入するのではなく、社員が最大限に専門性を発揮し、ビジネスに貢献できるように、全員が共有、共感して共鳴できるシスコの企業風土を浸透させ、さらに、透明度の高い目標管理・業績管理を実現するビジネスプロセスを展開するという三要素について一体的に取り組むというところにあります。

cisco-dispatched-04-teleworking-in-cisco-fig2つまり、全社員で共通の価値観を共有することで、社員同士がチームとして、場所や時間を問わず、自律的にコラボレーションしやすい文化を醸成し、同時に社員がいつでもテレワークを安心して活用できるよう人事評価や業務プロセスといった制度面を整備することが重要であり、最後に IT ツールの導入があって初めてテレワークが推進できるということです。

確かに、「働き方改革(テレワーク等)を進めるためには、とりあえずテレビ会議システムや WEB 会議システムといった最新の IT ツールを導入しておけば…」と思いがちですが、実際のところ、IT ツールを導入しても、それを受け入れる側の組織風土や周りの意識が変わり、活用しやすい雰囲気がないと「積極的に使ってみよう」とは思わないですし、在宅勤務をしたところで「仕事を怠慢しているのではないか」とか「自分はきちんと評価されているのだろうか」といった疑いや不安がクリアにならない限りは、本質的な働き方改革にはなり得ないのだと思います。

やはり、働き方改革を進めるためには、無駄時間の削減といった定量的な効果を見せること以上に、まずは職員自身に“働きやすさ”を実感してもらうことが大事であり、その中で多くの職員の意識を変革していくような波を内部から作っていくことが必要であるということを感じました。それがゆくゆくは、組織風土や制度を変えていく原動力になっていくのだと思います。

“テレワーク”導入がもたらした効果

cisco-dispatched-04-teleworking-in-cisco-fig4シスコのテレワークの効果として特筆すべきことは、なんといっても「女性の育児休業取得後の復職意欲の向上」ではないでしょうか。シスコの社内アンケート調査によると、2013年・2014年ともに育休後復職率は 100% であることに加え、産休・育休中/後の離職率は 0%、平均 7.8ヶ月で復職と驚異的な数字が出ています。また、復職した社員の 100% が、「在宅勤務やテレワークを含む柔軟な働き方が復職を促すサポート要因となった」と回答しており、シスコの進める働き方改革が間違っていなかったということを社員自らが証明していると同時に、働きやすさの恩恵を社員がきちんと享受しているということが分かります。

cisco-dispatched-04-teleworking-in-cisco-fig3私の周りを見渡しても、育児や介護といった理由で在宅勤務をしている社員は多く見受けられ、いわゆるワークライフ インテグレーションを意識した働き方を実践しているということを感じます。少なくとも自治体においては、育児や介護といった問題に直面すると、「仕事を休む」もしくは「仕事を辞める」といった選択を迫られ、仕事に影響が出てしまうことが多いと思いますが、シスコでは育児や介護をしながらでも仕事ができるという「在宅勤務」という新しい選択肢を与え、同時に復職しやすい組織風土を醸成することで、社員の働きやすさを担保し、かつ仕事にもタイムラグや支障を生じさせないという、会社にとっても社員にとってもメリットの大きい仕組みになっています。

また、テレワークの効果は社内に留まらず、モバイルワーク等の活用により、場所にとらわれない、迅速かつ的確な顧客対応を実現することで「顧客満足度の向上」ひいては、「生産性の向上」にもつながっています。さらに、BCP(事業継続計画)や環境対策の強化にもつながっており、特に災害時では、テレワークを駆使することで、事業の継続が可能になるという効果もあります。実際に、2011年の東日本大震災時には 2週間に渡って、シスコの全社員が完全在宅勤務を行う等して、滞りなく事業を継続したという実例もあります。

この点については、私も前職場で危機管理や防災に携わる仕事をしていたこともあり、非常に興味深く感じており、特に災害時に危機管理職員が出勤できないとか、災害対策本部となる自治体の機能が停止した場合を想定すると、職員の安否確認、連絡調整や災害情報収集等、様々な観点からテレワークの必要性や可能性を感じています。

こういったテレワークをはじめとするシスコの働き方改革は、数多くの外部機関から評価されており、厚生労働省の「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰」といった国の表彰も受賞する等、日本における働き方改革をリードしています。

仕組み2

今回のブログでは、シスコのテレワークの取り組みについて、ごく一部をご紹介しましたが、個人的には、「会社が必要だと思うこと」と「社員が求めていること」がマッチングしているところに驚きがありました。自治体で働き方改革を進めるとなっても、「進めたい部署」と「使う側の職員」との間には必ずギャップが生まれると思います。そのギャップをどのようにして埋めていくのかが非常に重要なポイントであり、クリアすべき課題なのだと思います。IT ツールを入れるだけのやり方ではなかなか理解は得られないと思います。

シスコでは、その課題を「組織風土→プロセス・制度→テクノロジー」といった論理的な流れに落とし込み、それぞれを丁寧にバランスよくアプローチすることでクリアにしており、同時に社員の理解も得ながら進めているからこそ、会社と社員との間に乖離がなく、高い社員満足度に結びつけることが出来ているのだと思います。また、働きやすさを追求する上で、上司と部下との目標の共有やコミュニケーションは欠かせないものであり、そういった部分も定期的な1対1のミーティングといった形できちんとフォローされており、働き方改革を実現させるための重要な要素の一つなのだと思います。

シスコのような社員に寄り添った働き方改革こそ、今の時代に求められているものであり、一つの成功事例として振り返ることで、働き方改革を進めるための重要なヒントが得られるのではないかなと感じました。次回のテーマは「シスコ派遣記5-京都府とシスコが進める新たな試み-」です。

 

京都府とシスコが進めるスマートシティプロジェクトのプロモーションビデオが完成しましたので、是非ご覧ください!

シスコHP「スマートシティ京都プロモーションビデオ」

Youtubeスマートシティ京都プロモーションビデオ

Authors

籾井 隆宏

Japan Public Sector Operations

コメントを書く


2 コメント

  1. いつも興味深く拝読しています。
    「働き方改革を進めるための3要素」について、技術の会社であるにも関わらず、最初に「組織風土」を挙げておられるのが、さすがというか、実現できる所以なのだなと感じました。
    テクノロジー至上主義ではなく、テクノロジーの使い方、使われ方も含めて提案されているのが肝なのですね。
    過去のブログを拝見していて、一部疑問に感じていたものが、今回なるほどと、私にも少し理解できた気がします。
    まだまだ、奥が深そうですね。

    • 籾井 隆宏

      古橋様 コメントありがとうございます。極端に言えば、テクノロジーは一番最後で良いというのがシスコの考え方です。目が行きがちなテクノロジーの良さを押し売りするのではなく、まずは組織風土や制度のような非常に繊細な部分の変革にトライして成功しているところに驚きを感じます。公務員の世界では、また勝手が違ってきますが、ヒントになり得るのではと感じています。災害時における事業継続の観点から、テレワークは活用できるのではと個人的には思います。