「Cisco Data Center 3.0」から「Cisco ASAP Data Center」までの10年 〜 シスコのデータセンター戦略とソリューション
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この 2017 年の春で、Cisco Nexus データセンター スイッチが発表されて 9 年、Cisco UCS サーバが発表されて 8 年が経ちます。それ以前も含めて、この 10 年間、シスコのデータセンター戦略とソリューションがどのように変化してきたかを振り返り、さらに今後どのような展開を予定しているかについて説明したいと思います。
ちょうど 10 年前、2007 年の春にシスコは「Cisco Data Center 3.0」というデータセンター戦略を発表しました。当時シスコは仮想化やクラウドといった新たなデータセンターの要求に応えるため、Cisco Catalyst スイッチ シリーズとは別ラインナップのデータセンター スイッチ「Cisco Nexus 7000」(開発コード:DC3)を開発中でした。つまり、このときすでにシスコのデータセンター戦略は、Nexus の発表を見据えた仮想化およびマルチサイトのアクティブ-アクティブ データセンター ソリューションをメッセージとして発信していました。
その後、シスコからスピンアウトしたメンバーが設立した Nuova Systems を買収し、自社開発の Nexus 7000 に加えて、ユニファイド ファブリックのベースとなる世界初の FCoE(Fibre Channel over Ethernet)対応データセンター スイッチ「Cisco Nexus 5000/2000」、さらにはコンピューティングとネットワーク、管理ツールを集約した「Cisco UCS(Unified Computing System)サーバ」を発表、サーバ市場に参入します。それまでの Catalyst シリーズ中心のデータセンター ネットワークから Nexus 中心のデータセンター ファブリック(この頃からシスコをはじめとしてデータセンター イーサネット スイッチベンダーは「ファブリック」という言葉を使い始めます)へ移行するとともに、UCS とエコパートナー ストレージからなるコンバージド インフラがシスコのデータセンター戦略の中心になっていきます。あらゆる業種、規模のお客様のデータセンター内で Nexus が一般的になったことはもちろんですが、シスコがゼロからスタートしたサーバ ビジネスにおいて、世界のブレード サーバ市場シェア 2 位、コンバージド インフラ市場シェア 1 位にまで非常に短時間で成長したことは、IT 業界に大きな衝撃を与えました。2016 年第 3 四半期には、日本国内市場でも ブレード サーバ市場シェアが 2 位となりました。
今振り返ってみると、この「Data Center 3.0」そして Nexus と UCS の相次ぐ発表が、現在までのシスコのデータセンター ビジネスを大きく成長させたトリガーでした。すでにサービスを含む全世界のシスコ データセンター ビジネスは 100億ドルを超え、非常に重要なビジネスのひとつであり、成長のための投資が継続的に行われています。
2009 年に Tidal Software(その後のWorkload Automation)を、2011 年に newScale(その後のPSC: Prime Service Catalog)、2012 年に Cloupia(その後のUCS Director)といったハイブリッド クラウド時代に対応するための自動化ソフトウェア企業を相次いで買収しました。すでに「Data Center 3.0」のときに仮想化の次は自動化というメッセージを出していましたが、まさにそのステップ通りに自動化ソリューションを取り込んでいきました。同時にデータセンター戦略も「Cisco Unified Data Center」に変化し、この辺りから自動化を進めるにあたってのオープンなプログラマビリティや SDN、さらにパブリック クラウドとプライベート クラウド連携を意識したマルチクラウドに対するメッセージやソリューションが強く打ち出されるようになりました。
2013 年、シスコからスピンアウトしたメンバーが設立した Insieme Networks を買収すると、シスコはこれが SDN の本命、次世代 SDN と銘打って、ACI(Application Centric Infrastructure)を発表、そして ACI の物理ファブリックとして、またスイッチ単体としてもクラウド時代向けにさらに進化したパフォーマンスを提供する最新のデータセンター スイッチ「Cisco Nexus 9000」を発表します。ちなみに、先の Nuova Systems、こちらの Insieme Networks、さらに 2002 年の買収まで遡って Catalyst ベース(現在はNexusベース)のファイバ チャネル スイッチ「Cisco MDS シリーズ」を開発した Andiamo の 3 社の設立メンバーはすべて一緒で、この 3 度のスピンアウトとスピンインは大きな影響をシスコのみならず業界全体に及ぼしました。
ACI は物理と仮想を一緒に管理するそれまでにない画期的なアーキテクチャで、データセンター ファブリックを大きく進化させました。ACI には他社製品の L4-7 ネットワーク サービス、セキュリティも連携でき、シンプルな運用とトラブルシューティングの簡素化を実現しています。ACI はその後シスコの重要ソリューションとして進化をし、今では国内でも多くのお客様に利用いただいています。
さらに 2016 年、シスコはこれまでの UCS の成功実績を元に、成長著しいハイパーコンバージド インフラ市場に新しい HyperFlex で参入します。HyperFlex はこれまでの他社製品と比較して発表から最短の 10 ヶ月で全世界で 1,000 社のお客様を獲得した初めてのハイパーコンバージド インフラ製品となりました。加えて CliQr Technology の買収により、パブリック クラウドとプライベート クラウドをまたがったハイブリッド クラウド管理を容易にする CloudCenter の発表、ハイブリッドクラウド環境のリアルタイム モニタリング、アプリケーション依存関係の可視化、セキュリティや SDN のポリシー作成およびシュミレーションを実現する Tetration Analytics などを相次いで市場に投入します。
この年、世界でもトップクラスの実績を誇るシスコのセキュリティ ポートフォリオと組み合わせて最新のデータセンター戦略「Cisco ASAP データセンター」を発表します。
デジタル化がハイブリッドクラウド化、インフラのデリバリ時間の短縮をさらに要求、加速させる中で、新たなセキュリティの脅威やインフラ自体のブラックボックス化が課題となっています。これまでの仮想化、自動化対応のインフラだけでなく、ビジネス トランザクションからインフラ レベルまでを可視化するアナリティクスと、プライベート クラウドからパブリック クラウドに至るまでのセキュリティの両方を、エンド・トゥ・エンドで実現可能なデータセンター アーキテクチャーが「ASAP データセンター」です。AppDynamics の買収も完了し、よりお客様のビジネス、アプリケーションに対して密接に連携、サービス提供、最適化できるアーキテクチャに進化しています。
そして今後、シスコのデータセンター ソリューションがどう進化していくのか興味深い点かと思います。シスコは今後も(広義の)ネットワーク中心のアーキテクチャをさらに進化させ、データセンターやクラウドのあり方自体を変えていくようなソリューションを市場にどんどん投入していきます。データセンターの各ポートフォリオはそれぞれが今まで以上に緊密に連携するようになり、これまでのオンプレミス側だけの管理だけではなくクラウド管理機能も実装し、さらに大きな相乗効果を生み出します。ソフトウェアのより柔軟なプログラマビリティと新たな購買モデルも積極的に提供していくでしょう。
10 年前の「Data Center 3.0」の時代にここまでのポートフォリオの拡大を予想されていらっしゃった方はほとんどいなかったと思いますが、当時シスコが唱えていた未来予想図は今、正に現実のものとなりました。これから先もシスコのデータセンター アーキテクチャおよびソリューションにご注目ください。