Cisco Japan Blog

やわらかいインフラ for SP-運用高度化編 (4) – 運用もやわらかく

1 min read



これまでの本ブログシリーズでは、通信事業者における課題、とくに人材・装置・セキュリティに関しては個別に紹介してきました。
今回は、設備や機器の仮想化や自動化、業務への AI 活用が進む中、それを扱う“組織”や“人”にとっても、同様の“やわらかさ”が求められていることをいくつかの事例を挙げながら説明していきます。

透明性が信頼を生む時代へ 〜サービス品質指標のモニター〜

2030年の通信事業者は、これまで以上に社会的責任を問われることとなります。サービス品質の指標や SLA(Service Level Agreement)は、社内管理指標に留まらず、社会全体に開かれたものとして「常時参照可能」であることが求められます。

この「透明性の常態化」は、社会に対する責任を果たすと同時に、現場の緊急報告業務をも軽減します。経営・現場・社会が同じダッシュボードを使用することで、運用は「経営の延長線上」に再定義されるのです。

“Software Defined Operation”という考え方

以前の記事でご紹介した通り、通信事業者にとって「労働人口の確保」は大きな課題であり、限られた人員でサービスを安定稼働させるにあたって、もはや人手による監視が限界を迎えている状況です。

開発・導入の現場ではCI/(Continuous Integration/Continuous Delivery:継続的インテグレーション/継続的デリバリー)による自動化が進んでいるにも関わらず、運用は依然として人海戦術に頼りがちです。

そこで求められるのが「SDO(Software Defined Operation)」――ソフトウェアによって定義・拡張される運用の仕組みです。AI やクローズドループ(自動検知→分析→対処→検証)を活用することで、運用チームの能力をスケールアウトし、より少人数でも安定した品質を保つことができます。

運用の自動化は、単なる効率化ではなく「収益を支える能力の再設計」でもあります。

コアとサテライト ― 組織の柔軟な構成

やわらかい運用の鍵は、組織構成そのものにもあります。ホワイトペーパーでは、将来の運用組織を「コア」と「サテライト」に分ける考え方を提案しています。

  • コアチーム:長期的に人材とスキルを育てる組織。データレイク構築や可視化、教育・戦略を担う。
  • サテライトチーム:短期・変動的な要素へ柔軟に対応。ベンダー別設定、在庫管理、新技術(例:LLMやAI)の習得などを担う。

 

両者の関係は固定ではなく、状況に応じて移動・再編成できるのがポイントです。たとえば、AI運用(LLM活用)は現状サテライト領域ですが、将来的に事業の中核になればコアに移ることもあり得ます。このような“流動性の設計”こそ、やわらかい組織の本質です。

スキルセットを「組織で」マネジメントする

2030年の運用現場では、個々のスキルだけでなく、組織全体のスキルポートフォリオが重要になります。人口減少が進む中で、「入社してもらう」「スキルを更新してもらう」ための仕組みが求められるからです。

具体的には、スキルを次の2つに分けて管理します。

  • 必須グループ:自動化やサービス品質向上に直結するスキル(例:可視化、Infrastructure as Code、AI活用)
  • 選択グループ:特定状況に対応する専門スキル(例:特定ベンダー装置対応など)

この分類は固定ではなく、ビジネスへの貢献度に応じて「必須 ←→ 選択」を柔軟に入れ替えることが推奨されます。

さらにSRE(Site Reliability Engineering)の考え方を取り入れ、「対処」業務と「開発・改善」業務の比率をモニターし続けることで、組織が“作業”に追われることなく、持続的な成長を実現できるようになります。

おわりに

“やわらかく”あるべきなのは、インフラそのものだけではありません。それを支える運用、そしてその運用を形づくる人と組織こそが、変化に最も柔軟である必要があります。

自動化やAIが進化する中で、私たちは単なる効率化ではなく、“変化に対応し続ける力”を育む段階に入っています。シスコは、TM Forumのメンバーとして培ってきたグローバルな運用モデルと自律ネットワークに関する知見を活かし、通信事業者と共にAI時代における運用アセスメントや持続的な変革支援にも取り組んでおり、2030年の運用がより強固でやわらかくあることを目指しています。

 

やわらかいインフラ ホワイトペーパー SP 版
シスコが考える運用の課題とあるべき姿[PDF-1.9MB]

「やわらかいインフラ」の詳細はこちら
DX を支える柔軟な IT インフラ

過去のブログ一覧はこちら
「やわらかいインフラ」ブログ

 

Authors

Yuhei Otsuka

High Touch Engineering Technical Leader

Customer Experience (CX)

コメントを書く