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やわらかいインフラ for SP-2030編 (4) –これまでのインフラからの脱却と変革

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前回までのブログで「やわらかいインフラ」がもたらすサービスプロバイダーにとってのベネフィットについてお話してきました。今回は、サービスプロバイダーのインフラのこれまでの構築方法と課題、そして今後のあり方について説明します。

これまでのインフラ

これまでのサービスプロバイダーのインフラは、固定通信、モバイル通信、法人向けサービスなど、特定のサービスや顧客セグメントに特化した形で設計・構築され、それぞれが独立した管理体制で運用される、いわゆる「サイロ化」状態となっていて、システム同士の連携もあまり考慮されていないことが一般的でした。

サイロ化したシステム内では、新しいサービスを開始するたびに、そのサービス要求に応じた機能やネットワークを既存のインフラに追加するといった、パッチワークのような手法を余儀なくされてきた結果、インフラ全体の複雑化を引き起こしています。

さらに、このように複雑化してしまったインフラに対する人手による運用管理も大きな課題です。一つひとつのタスクを手動で行うことは非効率的でコストがかかり、人為的なエラーが発生しやすく、セキュリティリスクも増大します。

第2回で取り上げた「2030年までに求められる主なネットワークインフラの要件」を満たそうとすれば、これまでの考え方の延長線上で構築・拡張していっても、より複雑さを増す結果になることは容易に想像できます。

ビジネスモデル変革

クラウド事業者にとってネットワークインフラは、サービス提供の核となります。同時に単なる技術的資産に留まらず、収益を生み出す重要な基盤と認識されています。

サービスプロバイダーは、市場への接続性と高付加価値サービスの基盤を提供しなければならなくなっています。そのためには、新技術を導入し古いインフラを更新することが必須となります。データセンターやクラウドへの接続性要求が増大する状況では、ネットワークアーキテクチャから変革することが重要となっています。

サービスプロバイダーのビジネスモデル革新において、シスコはサービスプロバイダー向けの新たなサービスフレームワークを提唱し、そのなかで「Network as a Platform」と「Service Factory」という2つのコンセプトを定義しています。

サービスオーバーレイとネットワークアンダーレイをつなぐフレームワーク

収益を生み出すフレームワーク

 

「Network as a Platform」とは、ネットワークを単なる接続手段ではなく、競争力のあるサービスが展開されるプラットフォームとして捉えるものです。このプラットフォームは複数のクラウドやネットワーク構成に対応したアーキテクチャを必要とし、消費者とクラウドサービスをつなぐ中心的な役割を果たします。また、サービスの抽象化とアプリケーションプログラミングインターフェース(API)の公開、自動化が不可欠な要素となります。第3回で説明した、やわらかいインフラの機能を持ったプラットフォームがこれに当たります。

「Service Factory」とは、このプラットフォーム上で展開されるビジネスモデルで、エンタープライズ顧客のニーズに答えるために必要な、エンドツーエンドで保証されたサービスレベルアグリーメント(SLA)の提供、顧客体験(QoE)を満たすサービス品質、接続要件に応じたクラウド接続の提供などの要件を備えます。

これら2つが相互補完することで、サービスプロバイダーにとっての新たな収益源が創出されます。サービスプロバイダーとエンタープライズ顧客はそれぞれ以下のようなメリットを享受でき、結果として業界内での競争優位を獲得することが可能となります。

サービスプロバイダー

  • 迅速なサービス提供: 柔軟性と拡張性のあるプラットフォームにより、サービス開発を効率的に行え、迅速に市場に提供できるため、競争力を強化し、他社との差別化が図れます。
  • 効率的な運用: 運用プロセスの自動化によるOpex削減と、リソースの最適化によるCapexの削減が図れます。
  • リスク管理の向上: 統合プラットフォームにより、セキュリティ管理が一元化されるため、システム間の連携不足によるセキュリティリスクを減少させます。

エンタープライズ顧客

  • 迅速なサービスアクセス: 新しいサービスが素早く提供されるため、最新技術やサービスを早期に利用できます。
  • カスタマイズ: ニーズに合わせたパーソナライズされたサービスを受けられます。
  • 高品質な顧客体験: 安定したネットワーク基盤が、途切れのない高品質なサービスを保証し、顧客満足度を向上させます。
  • 透明性と信頼性の向上: 統合されたサービス提供により、サービスの透明性と信頼性を享受し、長期的な関係を構築できます。

 

最後に

インフラの全国的な更新機会は極めて限られているのが実状ですが、インフラの使われ方や価値観が目まぐるしく変化している今こそ、「やわらかいインフラ」のコンセプトを考慮し、最新技術の採用を検討するタイミングではないでしょうか。

次回からは、サービスプロバイダーのビジネスモデル変革において中核となる「NetCo – Network as a Platform」とその要素を掘り下げて説明します。

 

やわらかいインフラ ホワイトペーパー SP 版
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Authors

Ryosuke Aoshika

High Touch Engineering Technical Leader

Customer Experience

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