はじめまして、古川と申します。
シスコで無線 LAN のコンサルティング SE を担当しております。今日から、無線 LAN 関連の記事をつれづれなるままに書いていきたいと思います。
スマート デバイスの普及に伴い、3G/4G 網に流れるパケット通信のトラフィック量が爆発的に増え続けているのは皆様ご承知のとおりです。大勢の人が集まるスタジアムでは、現在の 3G/4G 網のサービスレベルでは観戦中に画像や動画を楽しむことは困難です。通常オフロード目的で導入される無線 LAN も、スタジアムという特殊な環境では無線 LAN 同士の電波干渉によって本来のパフォーマンスを発揮することは難しいと考えられてきました。
スタジアム Wi-Fi は高密度かつ高品質な Wi-Fi アクセスを可能とするものですが、先月 3月 29日に西武ドームで「Lions Wi-Fi」が開始されたというニュースがあったのをご存知でしょうか?
無線 LAN インフラの観点での技術的なポイントとしては、以下の 3 つがあります。
- 指向性の鋭いスタジアム アンテナを使って、観客席の後方から前方斜め下に向かってビームを向け、カバレッジ エリアを絞る
- 電波の自動調整機能(Radio Resource Management)を用い、さらにスタジアム向けにチューニングすることで、電波干渉を最小限に抑える
- 最適な設置ができているか、サイト サーベイを行い確認する
豊富なノウハウをもとに優れた製品や高度な設計・導入サービスを組み合わせることで、従来は実現が難しいとされてきた高密度で高品質な無線 LAN をスタジアムにおいて提供することができました。
スタジアム Wi-Fi は、数年前から米国で実験的な導入が始まり、指向性アンテナとして通常用いられるパッチ アンテナよりもさらに鋭い指向性を持つスタジアム アンテナが考案されるほどに改良・普及が進んできました。昨年のロンドン オリンピックでも、弊社の無線 LAN 製品が多くの場所に導入され大活躍しました。
Lions Wi-Fi では、西武ドームでしか見られないコンテンツにアクセスできるほか、無料インターネット接続も可能なことが特徴です。米国のメジャーリーグには、「At Bat MLB.com」というスマホ アプリがあり、試合結果や得点シーンの動画、ピッチャーの配球情報などをほぼリアルタイムに見ることができます。スタジアム Wi-Fi があればこのようなアプリとともに何倍もゲームを楽しむことができそうですね。
日本でも Lions Wi-Fi をきっかけに、スタジアム Wi-Fi の導入が進んで、新しいスポーツ観戦の楽しみ方が増えてくるものと期待しています。