この記事は、Mass-Scale Infrastructure Group のプロダクトマネージメント担当シニアディレクター Mauricio Cruz Covarrubiasによるブログ「Mass-Scale Infrastructure Innovations to Benefit Cloud Providers」(2022/10/18)の抄訳です。
Web で検索したり、電子メールを使用したり、動画を観たり、勧められたリンクをクリックしたりするときは、ハイパースケーラ ネットワークを使用しているかもしれません。ハイパースケーラ ネットワークでは、クラウドでホストされているアプリケーションから人工知能/機械学習を利用したニューラルネットワークまで、あらゆるものがサポートされています。今日では、データの生成や取り込みがアプリケーションによって途方もない速度で行われるようになっており、データセンターは膨大なトラフィック量を処理しています。国際エネルギー機関(IEA)によると、1 ビットのデータがデータセンターからネットワークを通じてエンドユーザーに送信されるたびに、5 ビットのデータがデータセンター内やデータセンター間で送信されています(「Data Centres and Data Transmission Networks」、2021 年 11 月)。
全世界の電力の 1% がデータセンターによって消費されており、エネルギー使用量はこの数年間、毎年 10% ~ 30% ずつ増加していると IEA は推定しています(IEA 2022 年)。
課題
クラウドプロバイダーは、この膨大な需要に対処するためにキャパシティの高いサーバーを追加しており、データセンターの内外でさらに多くのデータがネットワークを駆け巡るようになっています。適切な規模のインフラを
整備していないと、ネットワークがボトルネックになって、ユーザーがパフォーマンスの低さをソーシャルメディアで嘆くようになります。
今日の環境問題や地政学的な問題を考えると、エネルギー効率の向上と CO2 排出量ネットゼロの達成は、クラウドプロバイダーにとってますます重要になりつつあります。しかしデータセンターでは、規模を拡大して、ネットワーク帯域幅を大量に消費するアプリケーションをサポートする必要があります。そこで問題になるのが、環境目標を達成しながら、どれだけの電力、スペース、冷却を使用する必要があるかです。
ネットワーク帯域幅を高めれば簡単に問題を解決できるように思えるかもしれませんが、やがてトレードオフが発生し始めます。キャパシティを増やすには、より多くの機器と電力が必要になります。さらに、過熱やラックスペースの不足を避けるために、より多くのスペースと冷却も必要になります。たとえばリーフ/スパイン構成のネットワークで、1RUの32x400G スイッチを使用して、25Tbps を超すキャパシティに拡張するには、6 台のスイッチが必要になります。これは、約 3,000 ワットの電力と、6RU のスペースと、36 個の冷却用ファンが必要になることを意味します。
解決策
しかし、省スペースで大きなキャパシティを構築できれば、コスト削減とパフォーマンス向上を実現しながら、環境にも貢献できます。この不可能にも思える解決策を実現するのが、Cisco 8100 シリーズに最近追加されて出荷が開始された Cisco 8111-32EH です。この製品を使用すれば、コンパクトな 1 RU のフォームファクタで 25.6T のキャパシティを実現できます(プレスリリースをご覧ください)。Cisco 8111 は、Cisco Silicon One G100 25.6T ASIC を使用した超高速 QSFP-DD800 ポートを備えているため、同じ 1 RU のフォームファクタで 64x400G ポートをサポートでき、消費電力も約 700W に抑えられています。
シスコのラボの調査1 によると、12.8T ASIC スイッチを複数使用して同等のキャパシティを実現した場合と比べて、電力を最大 77%、スペースとファンの数を最大 83% 削減できます(図 1 を参照)。
クラウドプロバイダーは、運用コストと電気料金を大幅に節約できるだけでなく、この節約によって年間で約 9,000 kg の CO2 に相当する温室効果ガス(GHG)の排出削減を達成できます(内部調査に基づく推定)。また、節約した電力を利用して収益性の高いサーバーを追加できるため、ビジネスの拡大にも役立ちます。
このような大幅な省エネを実現できた背景には、Cisco Silicon One をはじめとするシスコの大規模投資があります。たとえば、最先端の 7nm テクノロジーによって電力効率を向上させ、256x112G SerDes によってシングルチップで 25.6T を実現しているため、電力、スペース、冷却の大幅な削減が可能となっています。
新たに導入した 2x400G-FR4 モジュールと 8x100G-FR モジュールでは、
高密度 QSFP-DD800 モジュールを使用することで 100G および 400G インターフェイスへの高密度ブレークアウトを実現しており、わずか 1 RU で 64x400G ポートまたは 256x100G ポートをサポートしています。
これらのモジュールによって、これまでよりも高収容の次世代ネットワークを設計でき、銅線、シングルモードファイバ、マルチモードファイバによる効率的な接続によって、使用ネットワーク帯域密度を 2 倍に引き上げることができます。QSFP-DD800 フォームファクタでは、より高い消費電力が必要となる可能性がある次世代のプラガブル コヒーレント モジュールがサポートされており、効率向上と冷却機能も実現されています。
コンパクトなフォームファクタで大幅に高い密度を提供する、パブリック クラウド データセンターなどに適したこの画期的なイノベーションを導入すれば、お客様は運用コストを大幅に削減できるようになります。費用対効果の高い方法で拡張できるようにすることで、シスコはクラウドネットワーキングの経済性向上に貢献しています。
Cisco 8000 シリーズのイノベーション
Cisco 8000 ポートフォリオは、大規模インフラストラクチャに適した製品群です。ハイパースケールのお客様や、ハイパースケール アーキテクチャを採用している Web スケールのお客様は、Cisco 8000 ポートフォリオを導入することでクラウドネットワーキングのパフォーマンスと効率を大幅に向上できます(「Enabling the Web Evolution」をご覧ください)。Cisco 8000 ポートフォリオには、次の製品とクラウドでのユースケースが含まれています。
- Cisco 8100 シリーズ製品は、1 RU および 2 RU フォームファクタの固定ポート構成で、TOR/リーフ/スパインのユースケースにおける Web スケールスイッチングに最適化されています。この製品ラインには 8101-32H、8102-64H、8101-32FH が含まれており、Cisco 8111-32EH が今回新たに加わりました。8100 は、IOS XR を使用したシステムとしてだけでなく、Software for Open Networking in the Cloud(SONiC)などのサードパーティの NOS を使用したディスアグリゲーションシステムとしても提供されます。
- Cisco 8200 シリーズ製品は、1 RU および 2 RU フォームファクタの
固定ポート構成で、Cisco 8201 と Cisco 8202 が含まれています。データセンター インターコネクト(DCI)のユースケースで IP トランスポートを使用してデータセンター間を接続するために使用できます。この製品は IOS XR を使用したシステムとして提供されます。 - Cisco 8800 シリーズはモジュラーシステムで、Cisco 8804、Cisco 8808、Cisco 8812、Cisco 8818 が含まれています。スーパースパイン、ハイキャパシティ DCI、WAN バックボーンなどのさまざまなユースケースで使用できます。
詳細については、Cisco 8000 データシートをご覧ください。
Cisco 8000 では、さまざまなフォームファクタ、速度、クライアントオプティクスをお客様が柔軟に選択できます。速度は 100G/400G/800G ポート等の中から選択できます。IOS XRルータとして使用できるだけでなく、オープンソース ネットワーキングのユースケースで SONiC を使用したディスアグリゲーションシステムとしても使用できます(「Rise of the Open NOS」をご覧ください)。
またシスコの自動化ソリューションも活用できます。
シスコではお客様に寄り添う姿勢を大切にしており、お客様のユースケースや要件に合った、高い成果を生み出すソリューションを提供しています。
ネットワークキャパシティを拡張しても電気料金が大幅に増えたり、非効率な冷却ソリューションを使用したりせずに済むようになっており、CO2 排出量が急増することはありません。お客様はコスト削減を実現し、環境保護に貢献できるだけでなく、優れたエクスペリエンスを通じてユーザーの不満を最小限に抑えることができます。シスコは、大規模なクラウドインフラを運営しているクラウドプロバイダーに環境目標の達成か規模の拡大のどちらつかずの選択を迫るのではなく、その両方を実現できるように支援しています。Cisco 8000 シリーズの詳細をご覧ください。
Open Compute Project(OCP)Global Summit
2022年10 月 18 日~ 20 日、サンノゼで Open Compute Project(OCP)Global Summit が開催されました。2022年のテーマは「オープンの推進(Empowering Open)」です。シスコは、オープンソースコミュニティとのオープンなコラボレーションを通じてこのテーマを全面的に支援しています。2020 年前の OCP Global Summit では、固定システムとモジュラーシステムの両方で利用できる SONiC をサポートした Cisco 8000 を初めて紹介しました。シスコはその後も、OCP コミュニティと協力してオープンソリューションを開発し続けています。たとえば OCP 2021 Global Summit では、Wedge400C というディスアグリゲーションシステムを Meta 社とシスコが発表しました。これは Cisco Silicon One を利用した 12.8 Tbps のホワイトボックスシステムです(プレスリリースをご覧ください)。
2022年は、 OCP では 8100 ポートフォリオを紹介します。8101-64H、8102-32FH、8101-32H に加えて、8111-32EH と QSFP-DD800 オプティクスが今回新たに追加されています。また、デュアル TOR や 8800 を使用したモジュラーシステムなど、さまざまなユースケースにおける SONiC のデモも行います。さらに、シスコの Rakesh Chopra が「Evolved Networking, the AI Challenge」と題してエグゼクティブトークの講演を行いました。
1 出典:特定のサンプルサイズとテスト実行時間に基づくシスコの内部ラボテスト。