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Cisco Hierarchical Controller 登場の背景

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近年シスコは「Internet for the Future(未来のインターネット)」のアーキテクチャである Routed Optical Networking ソリューションの大幅な強化を実施しています。このソリューションは、シスコのコンバージド SDN トランスポート アーキテクチャの一部として IP ネットワークと光伝送ネットワークを統合することにより、ネットワーク設計、運用、エンジニアリング、計画、管理をシンプルにするという新しいアプローチです。

Routed Optical Networking アーキテクチャを導入することで、光伝送ネットワークの Transponder を IP ルータに組み込むことが可能になります。この革新的なアーキテクチャはトランスポートネットワークを再定義して、IPネットワークと光伝送ネットワークに分かれていた設計に大きなインパクトを与えています。

このインパクトを設計だけに止めず、運用、計画、管理についても広げてゆくことは非常に重要なことと考えています。

本来ネットワークの運用はサービス受益者であるエンドカスタマー向けに最適化されていくべきものです。ところがトランスポートネットワークの運用は、HW 構成そのまま 2つのネットワークを別々の運用チームが独立して運用しています。両者間でトラブルチケットを手動で作成し、別々に問題解決にあたるということが日常的に起きています。

昨今、サービスプロバイダー (SP) 事業者が提供するアプリケーションサービスは日に日に複雑さを増してきています、その結果エンドユーザからは厳密な SLA 保証や可視化性が求められています。取り巻く環境が大きく変化している中で、旧来の運用モデルのままでは将来の経済性の向上は期待できませんし、運用コストの増加に歯止めがかけられないばかりか障害発生時の問題解決までにかかる時間の短縮も期待できません。そこには自動化を念頭に置いたプロアクティブな運用、計画、管理モデルが必要です。

多層アーキテクチャ (サービス、IP、光伝送) で構成されている SP ネットワークの運用を大胆に改革しシンプルにすることがシスコのネットワーク自動化戦略で掲げている目標です。

Cisco Hierarchical Controller 概要

Cisco Hierarchical Controller (HCO) は、マルチベンダー、マルチドメインの自動化、ソフトウェア定義型ネットワーキング(SDN)を可能にする階層化コントローラの分野で市場をリードしています。HCO は、5G ネットワークスライシング、Routed Optical Networking、ネットワークのディスアグリゲーションといったネットワークの HW / SW 両面の変革を力強く推進するための中核となるコンポーネントです。

よりシンプルなメッセージとして HCO はマルチベンダー構成が前提となっている IP と光伝送ネットワークを、各レイヤのコントローラから収集するリアルタイムの情報をモデル化することで光ファイバからサービスまでトランスポートネットワーク全体の複製を作成します。さらにレイヤ間の接続状況を高度な分析によって自動的に解決します。この分析を IP/光伝送チームでバラバラに管理されている既存の運用で実現するためには情報をマニュアルで分析する必要があります。そのようなアプローチはそれ自体が高コストであり間違いのリスクや実行できる人的リソースの確保など大きな課題です。

HCO では自動的に分析したトランスポートネットワークの全体の複製を使って次のような可視化 (3C) を提供します。

  • Complete: マルチレイヤ・マルチベンダ・マルチドメインのトポロジとサービスモデルを作成
  • Current: コントローラから自動的に最新情報を収集反映
  • Correlated: レイヤ間の接続性を動的に管理

 

これらの特徴を持つネットワークデータを利用して、SP が抱えるより具体的かつ大きな以下の課題を解決します

  • 光伝送ネットワークでの障害が (VPN) サービスにどう影響するか事前に確認することが困難
  • (VPN) サービス障害の根本原因が IP ネットワークなのか光伝送ネットワーク起因なのか判断が難しい
  • 効率的運用には IP チームと光伝送チームが協力する必須であるが両者が共有できる網羅的ツールがない

 

ここからは HCO の機能を説明しつつ、HCO が SP が抱えている課題をどう解決できるかを紹介します。

Exproler

Exproler は、HCOの最も基本的かつ最も重要な機能である可視化を提供するアプリです。HCO が保持するネットワーク情報をマルチレイヤで可視化します。図では指定した IP リンク (L3) を構成する物理・論理接続をファイバ (L0) まで分析しています。右側のペインには該当 IP リンクの地図上の位置 (関連する光伝送リンク含め) が表示されます。ここでは各リンクの Up / Down が確認できます。左側のペインに選択したリンクの接続構成が表示され、左側が解析開始レイヤ (L3)、右側が最終レイヤ (L0) となり、その間にある各レイヤでの接続を構成する情報を表示されます。この情報は既存運用ですと IP/光伝送チームがマニュアルで分析することが多く、HCO の優位性を最も体感できるものです

Failure Impact

ネットワーク設計やリスク分析を強力に支援するアプリです。

トランスポートネットワークで発生しうる障害を様々な観点でシミュレーションすることで、障害発生時の影響範囲を分析することができます。故障対象は光ファイバからROADMやルータまで多種であり、その障害によって影響あるIPリンクや更に上位のSR TE policyやVPNサービスまで計算することができます。イメージしやすい利用シーンとしては、定期メンテナンスによる既存サービスへの影響の事前把握が考えられます。既存の運用ですとメンテナンス作業前には作業による影響範囲を様々な観点での調査と必要な事前対処などの検討が必要となりますが、その実行には手作業を含む様々なプロセスが実施されていると思います。HCOを利用することで非常にオープンな形で影響範囲の把握が実行できます。

画面上では、左側のペインで障害をシミュレーションするリンクやノードを指定・分析対象とするサービスレイヤの指定を行い、右側のペインで計算結果がレイヤ毎に表示されます。もちろん、計算結果の詳細はワンクリックで先のExplorer相当画面で確認することができます。

 

TimeMachine

TimeMachine には、トランスポートネットワークの複製を持つ HCO の特徴がよく反映されています。

HCO はネットワーク全体で起きたイベントを記録しています。その情報を利用して任意の時間のネットワークの状況を振り返ることができます。この機能を用いることで障害影響の事後振り返りを行うことができ、以降の対策検討するための貴重なデータとして利用することができます。TimeMachine は他のアプリでの分析でも広く利用されていて HCO の特徴的なデータ管理方法となっております.

Network Inventory

Network Inventory は、IP/光伝送コントローラから収集するInventoryデータを管理するアプリです。

通常、NMS / EMS はベンダー毎に提供されるものなので、あるベンダーの Inventory を確認するためには対応する NMS / EMS もしくは SP 自身で保持する Inventory 管理システムにアクセスする必要があります。このプロセスにはそれぞれ課題があります。第一に装置毎に別々のシステムにアクセスしなければいけません。第二に最新の情報を Inventory 管理システムに入力する必要があります。いずれもマニュアル作業が含まれ時間がかかることとデータの不完全性の観点から将来的な運用の自動化を検討する際に課題となってきます。

HCO では配下のコントローラから常に最新の Inventory 情報を収集してベンダー依存性を排したモデル化を行うことで、画一的な手法でトランスポートネットワーク全体の Inventory を最新の状態で管理することができます。HCO では HW だけでなく論理的情報 (SR policyやVPN) も Inventory として管理しており情報の参照性を高めています。

収集された Inventory 情報はカテゴリ毎に管理され、Inventory 間の参照関係も前述の Explorer 機能で容易に把握することができます。

 

ここに挙げた機能は HCO が提供するアプリの一部で、主に可視化に属するものになります。他にも Provisioning や Assurance を提供するなどもあります。それらについては記事をあらためて紹介させていただきます。

新しいインターネットの構築には時間がかかります。それには運用方法の刷新も含むことは忘れてはいけない大切なポイントだと考えています。これは大規模ネットワークの運用で継続的に発生するコストの最適化を行う上で非常に重要な観点です。最近の調査では年間設備投資額 1 ドルあたり運用コストは 5 ドルかかるという資料もあります。HCO を利用して光伝送ネットワークと IP ネットワークの運用を統合し、Routed Optical Networking のポテンシャルを最大限引き出して、お客様の収益拡大、コスト削減、リスク軽減に貢献していきます。

 

Authors

浅野 裕征

Technical Solutions Architect

APJ Automation Software Sales - Japan

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