シリコンは文字通り、あらゆるウェブスケールやサービスプロバイダーのネットワークの基礎となるものです。しかし、これまでは常に、下記のような特定の要件に基づいてシリコン アーキテクチャを選択する必要がありました。
- ルーティング vs ウェブスケールスイッチング
- フル機能を実装 vs 必要な機能のみ実装
- ディープバッファリング vs シャローバッファリング
- プログラマブル vs 固定機能
- ハイスケール vs ロースケール
- 高度なトラフィックマネジメント vs 基本的なトラフィックマネジメント
- 固定 (Fixed) ボックス vs 集中 (Centralized) ボックス vs モジュラー ラインカード vs モジュラー ファブリックカード
- スケジュール型ファブリック vs 非スケジュール型ファブリック
Cisco Silicon One は、単一のシリコン アーキテクチャがこうした分断を解消し、ネットワーク セグメントの大部分にカバー範囲を広げることを可能にする画期的な技術です。
単一のシリコン アーキテクチャである Cisco Silicon One により、ネットワーク事業者は、複数のバラバラなアーキテクチャを理解し、配備し、トラブルシューティングする必要がなくなります。単一のアーキテクチャを学び、統合し、単一のソフトウェア開発キット(SDK)で設計し、ネットワークのあらゆる場所に、より速く、より簡単に配備することができるようになります。サポートチームは 1つのアーキテクチャを理解するだけでよいので、問題のトラブルシューティングをより迅速に行うことができます。ネットワーク運用チームは、設備設計を簡素化し、業界最高水準の電力効率で電気代を最小限に抑えることができます。これにより、CapEx/OpEx が大幅に削減され、新しいデバイスやサービスの市場投入までの時間を短縮することができます。
Cisco Silicon Oneでは、ウェブスケールの Top of Rack(TOR)からフロントエンドと AI/ML のバックエンドを跨ぎ、サービスプロバイダーのピアリングとコアネットワークを経て、企業キャンパスネットワークのコアからエッジに至るまで、独自のソリューションで展開することができます。このようにネットワークセグメントの広範囲をカバーできるシリコン アーキテクチャは、Cisco Silicon One のみです。また、それぞれのセグメントでベストオブブリードを実現していることも Cisco Silicon One の優位性を示しています。
One architecture
単一のシリコン アーキテクチャとは、1つのチップで全セグメントをカバーすることを意味しているわけではありません。
Cisco Silicon One では、ポートロジック、受信処理、送信処理、データベース、テレメトリ、トラフィック管理、コントロールプレーンなどのブロックを定義しており、これらのブロックがどのように連携してルーティングとスイッチングのタスクを実行するか、また、SDK API がこれらのブロックをどのように一貫して管理するかを定義しています。このようにルーティングやスイッチングといったタスクを小さなブロックに分割し、ブロック間の連系、および SDK API を通した外部連携の定義がシリコン・アーキテクチャであり、Cisco Silicon One では単一のアーキテクチャとなっています。
統一されたアーキテクチャから、複数のルーティング/スイッチングデバイスが構築され、トレードオフの関係にある帯域幅、スケール、コスト、電力を鑑みて必要なデバイスを選択できます。また、シリコンのモードを変更することで、ラインカード(LC)、スタンドアロン(SA)、ファブリックエレメント(FE)といった異なるフォームファクターへの変更が可能で、同じアーキテクチャをルーティングとウェブスケールのスイッチングの両方の役割で展開することができます。
One network
Cisco Silicon One デバイスはネットワークのどこにでも導入できますが、従来は、お客様の帯域幅、規模、コスト、電力のニーズにより、特定のデバイスを特定の役割に採用することが一般的でした。P100、Q200、Q201、Q202、Q100 は、大規模で深いバッファを持つルーティングの導入に適しており、以下のような用途があります。
- データセンターインターコネクト (DCI)
- ウェブスケール / サービスプロバイダー コア (Core)
- ウェブスケール / サービスプロバイダー ピアリング (Peering)
- キャンパス エッジ (Edge)
- キャンパス コア (Core)
G100、Q200L、Q201L、Q202Lは、高効率なイーサネット スイッチングに焦点を当てたフロントエンドネットワークの Web スケールデータセンター用スイッチングアプリケーションに最適化されており、以下のような用途があります。
- ウェブスケール トップオブラック (TOR)
- ウェブスケール リーフ (Leaf)
- ウェブスケールおよびエンタープライズ スパイン (Spine)
機械学習(ML)と人工知能(AI)の爆発的な成長に伴い、バックエンドネットワークの重要性は大きく拡大しています。Cisco Silicon One では、G100、Q200L、Q201L、Q202L といったウェブスケールのスイッチングデバイスを使用して、リーフ / スパイン間を標準的なイーサネットベースで構築可能です。さらに性能が必要な場合は、P100 や Q200/G200L を TOR として、Q200L や G100 をリーフやスパインとして使用することで、リーフ / スパイン間を完全にスケジュールされたファブリックで構築可能です。
One form factor
Cisco Silicon One デバイスは、ネットワークのどこにでも導入できるだけでなく、あらゆるフォームファクターで導入することが可能です。業界では、スタンドアロン固定 (Fixed) ボックス、スタンドアロン集中 (Centralized) ボックス、モジュラー ライン カード、モジュラー ファブリック カード、ディスアグリゲートされた (Disaggregated) ラインカード(リーフ)、ディスアグリゲートされた (Disaggregated) ファブリック カード(スパイン)に異なるシリコン アーキテクチャを使用することが通常ですが、システムの大きさに応じて機能や動作の開発が分断されてしまいます。
Cisco Silicon Oneでは、完全に統一されたアーキテクチャを、これらのフォームファクターすべてにわたって展開することができます。
Cisco Silicon One は、お客様の帯域幅、バッファリング、スケール、フォームファクターのニーズに基づき、幅広いデバイスを提供しています。
Routing versus switching
Cisco Silicon One により、機器メーカーは、深いバッファを持つ Q200 ルーティング シリコンと、オンダイ バッファを持つ Q200L スイッチ シリコンの双方にピン互換性のある単一のハードウェアを構築できます。これにより、1つのシステム設計で 12.8Tbps ルーターや 12.8Tbps スイッチの用途に対応することができます。また、フットプリント互換のルーティングおよびスイッチング シリコンと統一された SDK により、機器メーカーは市場投入までの時間を短縮でき、ネットワーク事業者は検証時間を短縮できるため、最新技術の迅速な導入が可能になります。
Scheduled or unscheduled fabric
Cisco Silicon One では、簡単なソフトウェア構成の変更により共通のシリコンを下記の2つのファブリックモードで動作させることが可能です。
- 非スケジュール型
- ECMP(Equal-Cost Multi-Path)を伴う標準イーサネット上で通信する個別のルーティングおよびスイッチングエレメント
- 完全スケジュール型
- イングレスのVOQ(Virtual Output Queueing)を備えた完全にスケジュールされたファブリック
このユニークな機能により、ネットワーク事業者は、Q200 または Q200L を搭載した 12.8Tbps 固定ボックスのリーフ / スパインネットワークを展開し、各ボックスが標準的なスタンドアロンデバイスとして機能するように展開した後、OS やネットワーク運用の準備が整えば、これらのバラバラのボックスを完全にスケジュールされたファブリックに変換することも可能です。同様に、P100 および G100 デバイスを使用し、非スケジュール型または完全スケジュール型のシステム用に、さらに高い帯域幅を実現することができます。
低消費電力
1枚のシリコン (P100) で 19.2Tbps、24x800G、48x400G の固定 (Fixed) ルーターを作ることができるため、現在の業界では前例のないレベルの効率を実現することができます。市場で次に優れたルーティング・シリコンは、最高で 7.2Tbps です。
つまり、同等のシステムを構築するためには、6台から 12台のデバイスを使用する必要があります。この違いは、Cisco Silicon One がシステム レベルでより小型で低遅延、電力効率の高いルータを実現することを意味します。
一方でモジュラーシステムは、複数のシリコンを使って構築されます。フェースプレート、プリント基板(PCB)、オプティクスのフォームファクター、シリコン、直交コネクタの密度の制限に基づき、ほとんどのシステム ベンダーは、36x400G ラインカードで 14.4 Tbps の帯域幅を提供します。
Cisco Silicon One P100 は、100G PAM4 Serializer/Deserializer (SerDes) 技術と組み合わせた先進のアーキテクチャにより、先に記載した制限に基づくこれまでの限界を突破し、他のモジュラー ラインカードの 2 倍の帯域幅を持つラインカード ハードウェアを実現しています。当社の 25.6Tbps ファブリックエレメント (Cisco Silicon One G100) と組み合わせると、最大で3倍の帯域幅を持つモジュラールーターを構築することが可能になります。
Cisco Silicon One の電力効率と相まって、帯域幅の増加は、市場にある他のすべてのルーティングシリコンと比較して、電力効率を大幅に向上させることになります。
まとめ
Cisco Silicon One は、何十年にもわたって業界に存在したシリコンアーキテクチャの境界線を取り除き、ネットワーキングの新時代を切り開くものです。Cisco Silicon One のユニークなソリューションは、ウェブスケールのデータセンター (TOR) からサービスプロバイダや企業のキャンパスエッジやコアネットワークまで、ルーティングとスイッチングを横断し、あらゆるシステムデザインのフォームファクターに対応できる統合アーキテクチャです。
<参考文献>
- Cisco Silicon One Product Famiy White Paper
https://www.cisco.com/c/en/us/solutions/collateral/silicon-one/silicon-one-wp.html
- Importance of Architectural Fidelity
https://www.cisco.com/c/dam/en/us/solutions/collateral/silicon-one/white-paper-sp-architectural-fidelity.pdf
- Cisco Silicon One Enables the Best Routers
https://blogs.cisco.com/sp/ciscosilicononep100bestrouters