前回に続く後編では、5G の変革に必要とされるネットワーク アーキテクチャの構成技術である「クラウド ネイティブ」「ネットワーク スライス」「セキュリティ」を用いたネットワーク変革についてご紹介します。シスコはこのエリアの研究、開発を進め、ほぼ製品化が完了しています。
5G 時代のネットワークアーキテクチャ(設計思想)とは
その特長は、個別の技術要素ではなく、システム全体の新しい設計思想であるという点です。5G時代はネットワークアーキテクチャも変化します。特に重要な技術コンポーネントは3つあります。「クラウドネイティブ」「ネットワークスライス」そして全てに通底する「セキュリティ」です。
それぞれについて、ご説明します。
(1) 5G クラウド ネイティブ
これまで通信業界は、高パフォーマンス、安定性を維持するために独自技術で発展してきました。しかし、IoT やデジタル変革において、スケーラビリティとパフォーマンスに課題が発生してきました。市場ニーズに一早く対応するタイムツーマーケットも求められます。そこで 5G はクラウド技術をふんだんに採用した、「クラウド ネイティブ」となります。
「クラウド ネイティブ」とは、これまでベンダー固有の専用アプライアンスで構成されてきたネットワークを、バーチャル(仮想)化、コンテナ化することです。これにより、ハイパフォーマンス、拡張性、ソフトウェア ポータビリティ、システムのアップグレードやメンテナンス性が向上し、オープン性がコストを抑えて実現します。
(2) 5G ネットワークスライスの実現
これまで各ドメインのネットワークは、部分最適な個別技術、設計、運用の分断されたつなぎ合わせが実態でした。5G では、より高度な SLA がエンドツーエンドで要求されます。それを実現するのが、「ネットワーク スライス」です。
「ネットワーク スライス」とは、ネットワークシステムの様々なリソースを論理的に分割する技術です。各ドメインのスライスをエンドツーエンドでシームレスにつなぐことにより、あたかも 1つのネットワークのように管理・提供することが可能になります。エンドツーエンドをつなぐ underlay 技術、加えてマルチドメインで一貫したポリシー コントロールなどによって構成されます。
例えば、コネクテッド カー用のネットワーク スライス、IoT デバイスを常時大量に接続するためのスライス、低遅延サービスを特定時間だけ使いたい金融向けのサービス、各サービス要求により違う SLA などを、個別ネットワークを構築することなく提供可能になります。
(3) 5G 境界線セキュリティを超えて
2020 年にはデバイスの数が 300~500万にもなると言われています。これは同時に、サイバーセキュリティの脅威の高まりも意味します。「境界線セキュリティ」という考え方では、もはや不十分なのです。
エンドポイントの保護、ネットワークの可視化、ポリシー強化、マルウェア、API プロテクション、データセンター セキュリティなど、エンドポイントからネットワーク、クラウドに至るまでの、包括的かつインテリジェンスに連携された、最新の脅威にも対応可能なセキュリティ アーキテクチャが必須となります。
ここまで、5G 時代のアーキテクチャを構成する技術要素についてご説明しましたが、「またベンダーの実現可能性もない夢物語か」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、最新のシスコも関わる国内事例をご紹介します。
シスコ最新事例:「楽天モバイルのエンドツーエンド完全仮想化モバイル ネットワーク」
そこでぜひシスコが支援している、世界に先駆けて 5G のビジネス変革を実現しようとしている企業、楽天モバイル様をご紹介します。
同社では前述のクラウド ネイティブやネットワーク スライス、そしてエッジ コンピューティングなどの技術をふんだんに盛り込み、世界初となるエンドツーエンドで完全仮想化モバイル ネットワークを構築しています。
この事例以外にも、パケットコアの仮想化や Segment Routing 採用事例などもあります。5G によるビジネス変革は、決して未来の夢物語ではありません。
そして最後に、興味深いデータをご紹介します。2022年までに日本における 5G 接続デバイスの割合は 12%を占め、世界の平均 3.4%を大きく上回ると予想されています。さらに、2020東京オリンピックというショーケースの機会もあります。日本は、5G のイノベーションを、世界に先駆けてリードする存在になる可能性があるのです。
ぜひシスコとご一緒に、日本発信で世界を変革していきましょう!
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