この記事は、シスコのエンタープライズ ネットワーク ビジネス担当シニア バイス プレジデント兼ジェネラル マネージャーである Scott Harrell によるブログ「New Wireless Frontiers for the Enterprise: 5G, Wi-Fi 6, and CBRS」(2019/2/21)の抄訳です。
2019 年は、ワイヤレス ネットワーキングにとってすばらしい年になります。企業は、いくつかの重要なイノベーションを利用できるようになります。
まず、5G のキャリアベースのワイヤレスが本格的に幅広く展開されるようになり、モバイル ワーカーと企業は大幅に向上した性能を実感できるようになります。さらに、標準規格の Wi-Fi 6 が 2019 年に利用できるようになります。Wi-Fi 6 は、ワイヤレス エクスペリエンスを大幅に改善し、これまで不可能だったワイヤレス向けの利用ケースが新たに生まれます。これらが展開された後すぐに CBRS(Citizens Broadband Radio Service、OnGo とも呼ばれる)が利用できるようになります。これは、混雑していないスペクトラムの新しいバンドを提供する LTE の拡張機能です。これは特にミッションクリティカルな IoT アプリケーションにとって重要です。
接続方法の大きな変化に伴い、シスコは、新しいワイヤレス機能によってビジネスのやり方がどのように変化するか探る上で、技術面の変更と戦略計画を組み合わせるという貴重な機会に直面しています。
一般的な技術
これらの技術によってネットワーク計画に生じる変化を受け入れる前に、これらの技術の違い、そしてこれらの技術がどのように連携するかを理解する必要があります。
2019 年には、キャリアベースのモバイル接続(LTE および 5G セルラー)と免許を取得しないノマディック ネットワーク(Wi-Fi 6、または 802.11ax とも呼ぶ)の両方が、2 つの重要な分野(無線信号の符号化とスケジューリング)に収束されます。
両方の新しいワイヤレス システムは同じ方法を使用して、より多くのユーザとデータをそれらが使用する周波数に取り込むため、各ベース ステーションまたはアクセス ポイントはより多くのデバイスと同時にやりとりできます。また、Wi-Fi 6 により、ローカル ワイヤレス ネットワーキング(無線 LAN)では、スペクトラムをより計画的で確定的に使用できるようになります。ランダム化されたチャネル アクセス メカニズムを使用する他のバージョンの Wi-Fi とは異なり、Wi-Fi 6 ならデバイスは特定のスケジュール(ミリ秒単位)で無線を確実に利用できます。スケジュールされたアクセスにより、低遅延が実現され、デバイスの密度が向上します。また、電力の使用量とバッテリ寿命にもプラスの影響があります。この点について、Wi-Fi は、3GPP セルラー技術(5G や LTE など)とともに進歩しています。3GPP セルラーも確定的な技術です。
技術的には収束されていますが、キャリアベース(LTE/5G)のワイヤレス システムと免許のない(Wi-Fi)ワイヤレス システムは、コスト、インフラストラクチャ レイアウト、およびエンタープライズ ネットワークのオペレータに提供される管理制御のレベルには大きな違いがあり、これからもそれらは変わりません。これらの要素に基づいて、企業はワイヤレス機能をどのように維持し、成長させていくかを決定します。
キャンパスおよびブランチ内のワイヤレス
Wi-Fi 6 により速度と遅延が大幅に改善され、接続されているデバイスの高密度化がサポートされます。導入およびメンテナンスのコストも妥当であるため、Wi-Fi 6 は屋内ワイヤレス接続、特にアクセス ポイントに多くのユーザが接続するエリアには最適なシステムであることは明らかです。
Wi-Fi 6 デバイスを使用するユーザは、個々のエクスペリエンスの向上を実感できます。これまでパフォーマンスが不安定だった混雑の激しいエリア(待合室、学生用の講義ホール、会議室など)にいるユーザは、エクスペリエンスの向上を実感できます。以前は有線イーサネットで接続するしかなかったデバイスもワイヤレスに移行できるようになります。これにより、AR/VR、ゲーム、ビデオ通信などの、持ち運び可能にする必要がある、高帯域幅で遅延の影響を受けやすい使用例に関するイノベーションが促進されます。
パフォーマンス重視のワイヤレス デバイスの数が増加するため、企業は最高レベルのサービスを保証するために新しいネットワーク インテリジェンスが必要になります。具体的に、シスコは Wi-Fi 6 アクセス ポイント、およびエンド デバイスそのものがセンサーになり、新世代の分析エンジンにリアルタイムのパフォーマンスおよびエクスペリエンス データを収集する必要があると考えています。この方法により、ますます複雑化する環境のプロアクティブできめ細かな管理が可能になります。
一部の企業環境および屋内の使用例では、分散アンテナ システム(DAS)、または屋内 5G アクセス ポイント(「マイクロセル」)を使用して屋内スペースに 5G または LTE を拡張することができますが、この方法はまだ高額です。LTE および 5G 無線チップセットは、Wi-Fi に比べ非常に高額で、この傾向は今後も変わらないと考えています。 また、ほとんどの企業では接続を維持する必要のあるデバイスの数が急増しているため、デバイスごとの接続料金を毎月支払うと、法外な金額になってしまいます。
Wi-Fi ネットワークは、企業に幅広い分析情報も提供します。企業は、施設内での Wi-Fi デバイスの移動を追跡することで、施設に関する非常に豊富なデータを収集できます。この情報に基づいて、企業は物理的な場所の使用を最適化することができます。
キャンパスおよびブランチを接続するための 5G
5G は、バックホール サービスとしてブランチおよびキャンパスに大きな影響を及ぼします。 これまでは、企業のブランチおよびキャンバスのすべての場所およびインターネットを相互に接続するには、T1/E1 や xDSL などの有線技術に頼らざるを得ませんでした。4G はサイトを迅速に立ち上げる場合やバックアップ リンクとして使用することはよくありますが、帯域幅の制限とコストの高さからプライマリ リンクとして使用されることはほとんどありません。
一方、5G は 4G よりもはるかに高速です。5G を使用して有線接続を強化できます。場合によっては有線接続を置き換えることもできます。現在の SD-WAN ツールと併用すると、他の WAN サービス(数千のサイトであっても)と並行して 5G を簡単に展開できます。
さらに、ワイヤレス リンクは、ブランチ オフィスへの堅牢な常時オンの接続に依存している企業や、クラウド サービスを活用している企業にとって有用です。つまり、ほぼすべての企業で役に立ちます。ワイヤレス バックホール リンクは切断できないため、ワイヤレス インフラストラクチャは多くの場合、大嵐のような災害があった後で最初に復旧する通信サービスとなります。5G を使用して既存の WAN サービスを強化すると、サイトはクラウドベースのサービスで最大の稼働時間を実現できます。また、SD-WAN で管理し、帯域幅が制限されるリンクとともに使用すると、全体的なアプリケーション エクスペリエンスも向上します。
さらに高い帯域幅を達成するため、5G では周波数が高周波数ミリ波帯に拡張されます。これによりスループットが大幅に向上します。これらの高周波数帯は屋内スペースには簡単に到達しませんが、キャリアは外部のラインオブサイトのアンテナをすばやくセットアップして、専用の高速接続を低価格で提供することができます。
ワイヤレスと IoT
Wi-Fi 6 と 5G はどちらも、ワイヤレス経由でより多くのデバイスを確実に接続するすばらしい機会を提供します。 Wi-Fi 6 と 5G は、ワイヤレスをより確定的にするスケジューリング技術を共有します。この技術は、製造自動化、医療、エネルギー、その他多くの業界で使用されているミッションクリティカルな IoT 資産にとって重要です。ワイヤレス技術により新しい利用ケースが出現し、ワイヤレスを活用している企業はデジタル化の取り組みをより簡単に進めることができるようになります。
Wi-Fi 6 AP の対象となる、Bluetooth や Zigbee などの無線も次々追加され、AP はより優れた IoT ゲートウェイおよび有用なワイヤレス センサーになります。AP を使用して、IoT デバイスのライフサイクル全体を追跡および管理できます。
特に関心の高い LTE(今後は 5G)の拡張機能である CBRS(Citizens Broadband Radio Service)は、建物内で使用する Wi-Fi 6 に対する補完技術として将来有望です。 CBRS は Wi-Fi では使用されない 3.5 GHz 範囲のスペクトラム、または米国の既存の LTE/5G サービスに依存するため、汎用アクセス コンシューマ デバイスにより妨害される可能性は低くなります。初期の CBRS 機能は、まもなく製品として展開されます。 ロボットなど、保証された接続とモビリティを必要とするデバイスの場合、CBRS は Wi-Fi 6 を十分に補完します。CBRS を使用するほとんどの企業は、Wi-Fi 6 と組み合わせて使用します。
ミッションクリティカルな IoT プログラムについて話し合う場合は、セキュリティを最優先事項にする必要もあります。多くの IoT デバイスはビジネスにとって非常に重要であると同時に、攻撃に対して非常に脆弱です。幸いなことに、最新のネットワークでは、IoT が多用される環境をいくつかの方法で保護することができます。特に、ソフトウェアデファインド セグメンテーションを使用して、特定のデバイスからのネットワーク トラフィックが、送信すべきでない場所に送信されないようにすることで、デバイス間でのマルウェアの拡散を制限することができます。セグメンテーション ポリシーは、有線およびワイヤレス ネットワークに加え、耐久性の高い環境に広げることができます。
ワイヤレス ネットワークをつなげよう
最終的に、5G と Wi-Fi 6 は企業に一緒に導入されることになるでしょう。これらの個別のアクセス技術を、統合されたポリシー、セキュリティ、分析により統合システムとして管理することが課題になっていきます。ユーザとデバイスは、5G と Wi-Fi 6 システム間を移動する必要があり、スマート IT のリーダーは、エクスペリエンスをシームレスにし、管理をまとめて簡単に行いたいと考えるようになります。これらの個別のネットワークの管理システムを調整していくことが、シスコの次の開拓分野です。この点については、今後の動向に注意してください。
参考資料: