この記事は、シスコ インターネット ビジネス ソリューション グループ(IBSG)の Dave Evans によるブログ「Demystifying IPv6」(2013/5/30)を翻訳したものです。
IPv6(Internet Protocol version 6)は、The Internet of Everything(IoE)を実現させる重要な要素です。人、データ、モノがインターネットに接続するには、IP アドレスが必要です。しかし、現在のインターネット トラフィックのほぼすべて(98.5 %)で利用されている IPv4 では、すでに IP アドレスが枯渇しています。
IPv6 は大きな注目を集めていますが、混乱や誤報が多いのも事実です。正しい情報を伝えるために、シスコ フェローであり、インターネット プロトコル(IP)の専門家として知られるマーク・タウンズリーが、IPv6 について解説します。
このブログを通じて、マークは IPv6 を詳しく紹介し、IPv4 から IPv6 への最善な移行方法を説明します。また、企業や業界が IoE の価値を最大限に引き出せるように、詳細に解説してくれます。
IPv6 について解説する機会を与えてくれたデイブに感謝します。すでにインターネットに接続されている何十億というデバイスやマシンに、人とデータが加わって、Internet of Things(IoT:モノのインターネット)が IoE(Internet of Everything)へと成長しています。そのため、IPv4 から IPv6 への迅速な移行が、これまで以上に重要視されています。すでに多くの取り組みが進んでいますが、やるべきことはまだあります。IP を解説する最初の投稿では、私が企業経営者からよく尋ねられる 5 つの質問を取り上げています。
1. インターネット プロトコル(IP)とは何か? なぜ、重要か?
IP は、インターネットの生命線です。デバイス間で交換され、電波や銅線、光ファイバ ケーブルを通過する「情報」を生の形式で見ることができたら、0 と 1 だけで構成された小さなパッケージであることに気が付くでしょう。これは、IP パケットと呼ばれます。この 0 と 1 のパッケージはインターネットの基盤となる構成要素で、物質や生物の細胞を構成する原子に似ています。
ネットワークを駆け巡っている IP パケットの数は、何兆個にも上ります。小さな「ヘッダー」情報が、どこから来てどこへ行くものであるかをルータやスイッチに伝えることで、パケットが適切な宛先へと届けられます。この IP は、世界を網羅する電子通信革命には不可欠な要素です。
2. IPv6 とは何か? なぜ話題にのぼるのか?
IP は、最先端の研究所で開発されました。IPv4 の前にも複数のバージョンが存在しましたが、IPv4 が 80年代から 90年代にかけて商業ベースで普及し、今でも幅広く利用されています。この IP が抱えていた課題に対応するために開発されたのが、最新バージョンが IPv6 です。特筆すべきは、IPv4 の最大の課題となっていた「世界中で使用できるグローバル アドレスの上限(43 億個)」をを IPv6 が克服したことです。
生活に深く根付いたインターネットの利用を中断させることなく IPv4 から IPv6 へと移行することは、困難な作業です。私は、これを高速で移動している列車の車輪を乗客に気づかれることなく入れ替える、という作業に例えることがあります。
IT 専門家はもちろん、企業経営者も IPv4 のグローバル アドレスの制限と、現在進行中の IPv6 への移行について、十分に知っておくことが重要です。何十億人が生活や勉強、仕事、遊びでインターネットを利用しており、インターネットの成長が今後の社会に及ぼす影響は非常に大きいことを考えると、IPv6 は重要なトピックです。
3. IPv4 アドレスが去年枯渇したなら、なぜインターネットは今も動作し成長を続けているのか?
40 億個の四角形が格子状に並んでいる巨大な競技場を想像してみてください。さらに、複数の四角形から集まったグループがさまざまな組織や企業、インターネット サービスプロバイダーに割り当てられているとします。次に、このグループ内の個々の四角形の中に、デスクトップ PC、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、サーバ、その他のコンピューティング デバイスが入っていると考えてください。最後に、情報のパケットを迅速かつ効率的に、任意の四角形の中にあるデバイス宛てに送信できる様子を想像してください。
四角形の数は 40 億個と決まっているため(IPv4 の場合)、競技場にデバイスをどんどん追加していけば、混雑度は増すばかりです。しばらくの間は、すべてのデバイスを収めることができますが、必然的にシステムの成長は止まり、効率が下がっていきます。これが今のインターネットの状態です。IPv4 はまだ機能していますが、私たちの期待通りにインターネットを成長させ、機能させ続けるためには、新しいチェス盤(IPv6)が必要です。
4. IoE にとってなぜ IPv6 が重要なのか?
IPv6 は、効率的に運用できる非常に大きな競技場を提供します。IPv6 によってほぼ無限の IP アドレスを確保でき、数百億もの人、プロセス、データ、モノを接続する IoE が実現されます。
IPv4 では 32 ビットであったアドレス フィールドのビット数が IPv6 では 4 倍の 128 ビットになります。これにより、直接到達できるネットワーク数が増えるだけでなく、特定のローカル エリア ネットワーク(LAN)への接続する際の IP アドレスの自動設定が可能になります。この変化によって、理論上は 2 の 128 乗の四角形を持つ競技場を確保できることになります。この競技場は、地球上のすべての原子を個々の四角形の中に収めても、その 100 倍以上の広さがあります。
5. IPv5 はどうなったのか?
IP パケットの最初の 4 ビットには、IP パケットのタイプを示す数字が格納されています。このビットは、IP バージョン フィールドと呼ばれています。IPv4 のパケットではこのフィールドの値が 4(0100)になっており、IPv6 の場合は 6(0110)になっています。 IPv5(0101)は、1979 年に開始されたプロジェクトですが、その後、インターネット ストリーム プロトコルになりました。IP バージョン フィールドには、その他のタイプの IP トラフィックと区別するため数字の「5」が入っていますが、IPv5 は IPv4 の後継対象になりませんでした。私の次の投稿では、現在のインターネットにおける IPv6 の導入状況を説明するとともに、スムーズに IPv4 から IPv6 への移行を実現する方法を考察します。
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