この記事は、Executive Vice President の Chief Product Officer である Jeetu Patel
によるブログ「 Cisco and NVIDIA Unite to Propel AI into the Enterprise
」(2025/2/25)の抄訳です。
この度、業界で最も革新的なデータセンター ネットワーキングとコンピューティングのリーダーであるシスコと NVIDIA は、両社の提携のさらなる拡大を共同で目指すことを発表しました。この提携によって、企業の AI プロジェクトを加速させ、お客様がデータセンターネットワークを最新化する際に、これまでよりも簡単にシスコ製品で標準化できるよう努めます。
AI ワークロードに適した統合アーキテクチャ
これまで、業界での AI に関する会話の多くは、チップやコンピューティング性能、大規模言語モデルに焦点が当てられてきました。しかし、企業での AI ワークロード運用が始まると、データセンターやクラウド内外でのコンピューティングリソースとデータの連携が、AI イノベーションの話題の新たな中心になるでしょう。そのような状況においては、企業で AI を効果的にスケールアウトするためのネットワークがきわめて重要となります。そこで、今回示した提携の下で、シスコと NVIDIA は、次のように業界を主導します。
- NVIDIA は、NVIDIA SuperNIC と Cisco Silicon One を合わせて NVIDIA Spectrum-X イーサネット ネットワーキング プラットフォームに組み込んでいきます。シスコは、 NVIDIA Spectrum-X に採用されるパートナーシリコンを提供する唯一のプロバイダーとなります。これは、Silicon One の性能が明確に認められたことだけでなく、AI を取り巻くさまざまな状況でシスコのテクノロジー(シリコン、オプティクス、ソフトウェアなど)がいかに重要かを示すことになります。
- シスコは、NVIDIA Spectrum シリコンと Cisco OS ソフトウェアを組み合わせたシステムを構築していきます。これにより、お客様は、データセンターをシスコのネットワーキングと NVIDIA のテクノロジーで同時に標準化できるようになります。あらゆる企業のビジネスで、多岐にわたる AI のユースケースやアプリケーションが実現することになるでしょう。また、バックエンド接続に特化した NVIDIA Spectrum シリコンまたは Cisco Silicon One(ともに Nexus ソフトウェアスタック(NX-OS と Nexus Dashboard)の基盤)をお客様が活用できるようにすることで、業界での相互運用性が大幅に向上します。
さらに、シスコと NVIDIA は、ポートフォリオにまたがるイノベーションにも投資し、輻輳管理や負荷分散といった重要な共通課題に取り組むとともに、企業での AI 導入推進、迅速な価値実現、ROI 向上が可能になるよう努めます。複数世代にわたってこのように協力し合い、技術と顧客ニーズの変化に適応していきます。
AI 導入の課題を克服
冷静に考えても、期待が寄せられていた今回のシスコと NVIDIA の関係拡大は、絶好のタイミングで実現したことになります。市場では、AI 関連の画期的なイノベーションが毎週のように登場しています。胸が高鳴る状況ですが、企業にとってはストレスフルなものでもあります。最近のシスコの調査によると、CEO の 97% が AI プロジェクトを支持する一方で、準備がしっかり整っていると考える CEO はわずか 1.7% でした。この調査で、リーダーたちは大きな懸念点を 3 つ挙げています。それは、インフラストラクチャの最新化に伴う気の滅入るような負担、AI のセキュリティと安全性に関する問題、さらには、従業員が AI の実装と最大活用に必要なスキルを備えているかどうかという不安です。
シスコでは、独自の革新的なイノベーションを通じてこれらすべての課題に取り組んでいます。実際、シスコと NVIDIA が協力するのは今回が初めてではありません。私たちは 1 年以上協力を続け、企業が進める AI インフラストラクチャの展開と管理を大幅に簡素化してきました。シスコは、Nexus HyperFabric というデータセンターネットワーク Fabric-as-a-Service を提供していますが、これによってお客様は、データセンターファブリックを簡単に構築できます。Cisco Nexus HyperFabric AI では、このコンセプトを拡大するとともに NVIDIA と連携して、AI ワークロードに対応した企業向けの AI プラットフォームとコントロールプレーンを特別に設計しました。
インフラストラクチャについて言えば、シスコの AI POD を利用することで、組織では AI 推論の運用が迅速に始められます。あらかじめサイジングと構成が行われ中央管理が可能なインフラストラクチャ スタックが、特定の AI ユースケースや業界に合わせて調整されているため、AI インフラストラクチャの展開で、推測しながらの作業が不要になります。また、今日ではスピードが重視されますが、AI POD を導入すると、短期間での価値実現、一貫性の向上、リスクの軽減が可能になり、迅速な対応に自信を持つことができます。シスコは、これまでに 4 つの異なる AI POD 構成を検証済みであり、今後さらに多くのユースケースを提供していきます。
私たちは、安全性とセキュリティの確保を刷新するという点でも業界をリードしており、それを示すのが 1 月にリリースした AI Defense です。AI アプリケーションは、他のアプリケーションとは根本的に異なるものであり、セキュリティと安全性の担当チームでは、想像もしなかった新たな課題が生じます。最も重要なのは、社内の AI モデル自体を保護する新しいツールが必要となることです。言い換えれば、従業員が AI モデルを使用していそうな場所だけでなく、開発者がモデルをアプリケーションに統合しようとしている場所も把握できなければならないということです。さらに、ガードレールを作成し適用することで、これらの AI モデルが操られ、データ漏洩や有害な動作が生じたり、深刻になりそうな問題がいくつも発生したりしないようにする必要があります。
その他にも、私たちは、今月初めの Cisco Live EMEA で、企業やサービスプロバイダーが AI ワークロードを強化できる新しいソリューションを数多く発表しました。
例を挙げましょう。
- Cisco Smart Switches:ネットワークにサービスを組み込むことで、適応性と拡張性に優れた AI データセンター アーキテクチャを再定義します。
- 新しい Cisco Agile Services Networking アーキテクチャ:これにより、AI に適したネットワーク接続を実現し品質を確保したサービスで収益化を図るサービスプロバイダーが計画を具体化できます。
- 新しい Cisco UCS C845A M8 サーバーでの AI サーバーファミリの拡張:NVIDIA MGX リファレンスアーキテクチャをベースにし AI ワークロードに柔軟性をもたらすこのサーバーが、シスコの AI サーバーポートフォリオに追加されています。Cisco UCS C885A M8 は、同ポートフォリオの最初の製品であり、初の 8 ウェイ アクセラレーテッド コンピューティング システムとして NVIDIA HGX プラットフォーム上に構築されました。
始まったばかりの私たちの協力
将来、世界には 2 種類の企業が存在することになるでしょう。AI でイノベーションを起こし競争に勝つ企業と、今のまま自社の価値を維持しようと奮闘する企業です。先進的で安全なネットワークこそが AI のイノベーションと導入を加速させるカギとなるに違いありません。こうしたネットワークの構築は、シスコのコア技術であり、私たちの DNA でもあります。私たちは、すべてのお客様が、ただ傍観者でいるのをやめ、ステージに上がるよう支援することに尽力しています。今後の最新情報にもぜひご注目ください。
この記事は、Executive Vice President の Chief Product Officer である