現代のデジタル社会において、サービスプロバイダーのインフラは技術革新と通信需要の高まりに直面しています。その中で、単なるコストセンターではなく、未来を見据えた投資としてのインフラ整備が求められています。そこで注目されているのがサービスプロバイダー向けの「やわらかいインフラ」です。
「やわらかいインフラ」とは、従来のユースケースベースで作られた固いインフラに代わり、将来ユースケースにも柔軟に対応し、変化し続けられるインフラです。これにより、サービスプロバイダーは新たなビジネスチャンスを迅速に活用できるようになります。
やわらかいインフラの機能
「やわらかいインフラ」は、以下の5つの機能を基盤としています。
- Connect: 多様なデバイスや回線をシンプルかつ柔軟に接続する。
- Secure: 物理的な境界にとらわれず、柔軟かつ強固なセキュリティを実現。
- Optimize: 物理的な構成を抽象化し、リソースを柔軟に活用。
- Automate: 複数ドメインの横断的な連携を自動化し、迅速な運用を実現。
- Observe: エンドユーザからアプリケーションまでの可視化を図り、顧客体験を向上。
これらの機能によって、「やわらかいインフラ」は多様性、順応性、拡張性、セキュリティ、迅速性を備えた柔軟なシステムを提供します。
ここでは「やわらかいインフラfor SP」全体の中核とも言える、トランスポートドメインのアーキテクチャに焦点を当てて説明します。
この領域では、抽象化によりネットワークの複雑さを隠しつつ、管理者がビジネス目標に集中できる環境を構築します。また、ネットワークの仮想化を通じて、物理的なインフラに縛られずにリソースを動的に管理することが可能となり、これにより柔軟性や低遅延、広帯域が実現されます。
さらに、インテントベースのネットワークコントローラの導入により、ビジネスの目標やポリシーをネットワークに反映させることが容易になります。これにより、ネットワーク運用が大幅に簡素化され、トランスポートの効率化も進みます。そして、セキュリティにより、潜在的な脅威に迅速に対応し、ネットワークを保護することができます。
これらの機能が備わることにより、サービスプロバイダーのインフラはビジネス環境の変化に迅速かつ効率的に対応できるようになります。
この中で私が重要と考えているのが、インテントベースのネットワークコントローラの導入です。なぜなら、インテントベースのネットワークコントローラとそれに組み込まれている AI が設定指示を汲み取って構築と運用まで自動で行い、インフラのアジリティと柔軟性を高めるためです。これにより、サービスプロバイダーが巨大なインフラの中で多くのビジネス展開を効率よく行えるようになります。
現状の IT インフラには、管理対象の増加、現場のエンジニア不足、インフラへの投資難といった課題があります。稼ぎ頭であるユーザー向けサービスの展開を推進しつつ、こういった内部の課題を解消するためには、抽象度の高い設定指示だけで、細部にまでトップダウンに自動構築できる仕組みが必要でしょう。コントローラに組み込まれた AI 機能が自動的に意図をくみ取ることにより、効率性の高い運用が可能となるのです。インテントベースのネットワークコントローラはそれを実現する重要なコンポーネントであり、この導入は前述した課題解決に不可欠であると言えるでしょう。
やわらかいインフラがサービスプロバイダーにもたらすメリット
「やわらかいインフラ」の導入は、変化の激しい現代のビジネス環境での競争力を高めるために重要です。このアプローチにより、サービスプロバイダーは市場の要求に即応し、VR/AR、自動運転、スマートシティ、遠隔医療などの先進技術を活用した新しいサービスを迅速に展開する基盤を整えることができます。これらのサービスは、顧客に対して優れた体験を提供し、顧客満足度を高め、ロイヤルティを向上させます。
また「やわらかいインフラ」の導入により、既存のインフラを安全に運用しつつ、ライフサイクルを効率的に管理できます。これにより、将来に向けて明確なビジョンを持ち、正しい戦略を適切なタイミングで展開することが可能となります。結果として、サービスプロバイダーは市場でのリーダーシップを維持し、新規顧客を引きつけ、既存顧客を定着させることができます。
今回は、「やわらかいインフラ for SP」の構成要素、アーキテクチャ、導入のメリットについて簡潔に説明しました。次回は「これまでのインフラからの脱却」について説明していきます。
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