
前回は「やわらかいインフラ」の背景と概要を説明しました。今回は通信業界の動向を踏まえて、「やわらかいインフラ」の導入が サービスプロバイダー(SP)にとって有用となる理由について説明します。
2030年に向けた通信業界の課題
近年、通信業界では 5G の導入と普及が進んでいます。これは、IoT、AI、自動運転車、遠隔医療などの新技術の発展を支える基盤として機能し、社会全体に大きな変革をもたらしています。5G の全面展開は、超高速・大容量通信、超低遅延、多数接続の実現を可能にし、Beyond 5G や 6G、そして ITU-T Network 2030 といった次世代通信技術への準備が既に始まっています。
これらの技術は、私たちの通信インフラを根本から進化させる可能性を秘めています。例えば、次世代の通信技術は、リアルタイム性が求められる遠隔操作や遠隔医療、自動運転車といったアプリケーションに不可欠な超低遅延通信を実現します。また、IoT デバイスの増加に伴い、通信を高度に制御して安全・信頼性を確保する必要があり、そのための技術開発が進められています。
総務省の『将来のネットワークインフラに関する研究会報告書』によると、2030年までに求められる主なネットワークインフラの要件として、超高速・大容量、低消費電力、超低遅延、多数接続、自律性、超安全・信頼性が挙げられています[1]。これらの要件を実現するためには、光伝送技術、エッジコンピューティング技術、データセントリック技術、ネットワークスライシング技術、自律ネットワーク技術、セキュリティ技術が鍵を握ります。
一方で、 サービスプロバイダーのビジネス観点の課題として、通信料収入の増加が頭打ち傾向にあり、迅速かつ柔軟なサービス展開が求められています。さらに、複雑化かつ大容量化するネットワークインフラを効率的に構築・運用することも大きなチャレンジです。
「やわらかいインフラ for SP」というソリューション
こうした課題を解決するためのソリューションとして、シスコは「やわらかいインフラ」という考え方を提唱しています。この考え方は、インフラに柔軟性と適応力を持たせることにより、多様な環境や要求に応じた最適かつ迅速な技術適用を可能にします。「やわらかいインフラ」を導入することで、 サービスプロバイダーは効率的なネットワーク運用と新たなサービス展開を実現し、競争力を維持できるようになります。
次世代の通信技術には、変化するニーズに迅速に対応し、効率的かつ効果的に活用されることが期待されています。「やわらかいインフラ」の導入により、2030年にはさらなる革新をもたらし、社会のあらゆる側面で新たな価値を創造することが可能になるでしょう。通信技術は単なる技術的進歩にとどまらず、持続可能で柔軟性のある社会基盤として機能することができるのです。未来のネットワークインフラがどのように私たちの生活を変えていくのか、その変革を見守りながら、「やわらかいインフラ」の考え方を実践することが重要です。
今回は、通信業界動向を踏まえて、「やわらかいインフラ for SP」がなぜ求められているのかを説明しました。次回からは、「やわらかいインフラ for SP」の内容について説明します。
[1] 総務省 – 将来のネットワークインフラに関する研究会報告書 ~ 未来社会を支えるペタビット級ネットワーク ~
https://www.soumu.go.jp/main_content/000496762.pdf
やわらかいインフラ ホワイトペーパー SP 版
2030 年を見据えたSPインフラの理想像[PDF-7.3MB]「やわらかいインフラ」の詳細はこちら
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