病院おいて医療機器のネットワーク化やモバイルデバイスの普及が進むことで、院内のネットワーク運用はより重要性を増しています。管理対象の機器が増えれば、トラブルが発生する可能性も高まりますが、対応できるIT担当者を十分に確保できないという病院も多いでしょう。今回は、昨今の病院におけるネットワーク運用の現状を踏まえ、それに対する有効な対策を紹介したいと思います。
ネットワークへの依存度が高まる病院の業務
病院業務のデジタル化が進み、かつてないほどネットワークの重要性が高まっています。従来は独自の規格・専用のケーブルでクローズドな環境につながっていた医療機器は、昨今では多くのものが IP ネットワークに接続されています。
デバイスも多様化し、インターネットへの接続も増えています。パソコンはもちろん、業務にスマートフォンやタブレットの活用例が急増しており、Wi-Fi搭載の医療機器も増えてきました。
無線 LAN はネットワークインフラとしての利便性はもちろん、経由した無線アクセスポイントからデバイスの位置情報を捉えることもできるという利便性の観点からもメリットがあります。
しかし、無線 LAN に接続するデバイスが増加するに伴い、ネットワーク負荷も増大し、それによって各機器の正常稼働に悪影響を及ぼすリスクも高まります。病院は患者の生命にかかわる業務を行っているだけに、必要なときに必要な医療機器を正しく利用できないことがあってはなりません。
言い換えれば、病院におけるネットワークの監視負荷やその責任はより大きくなっているといえます。無線 LAN は有線 LAN とは異なり、電波の干渉によって想定外のトラブルが発生する可能性もあります。無線 LAN のニーズが高まる一方、限られた IT 担当者で安定したネットワーク運用やトラブルへの対応を行うことができる体制を構築しなければなりません。
院内ネットワーク管理に役立つ4つの機能
無線 LAN を業務にフル活用しつつ、ネットワークの安定運用を実現するには、そのための管理ソリューションを活用することがおすすめです。この観点からシスコではオンプレミス環境で動作するコントローラがネットワーク全体を管理・運用する「Cisco DNA Center」を提供しています。当ソリューションが、上述したような病院のネットワーク運用の課題をなぜ解決できるのか。Cisco DNA Center を特徴づける 4つの観点から解説していきます。
1.可視化
病院のネットワーク管理には、院内のネットワークスイッチがどのアクセスポイントとつながり、その先にどんな端末がつながっているかといった構成を可視化することが重要です。さらに昨今では、国内でも病院がランサムウェアのサイバー攻撃を受けてネットワークがダウンする事例もあり、最新のネットワーク構成把握と併せて、ネットワーク機器の脆弱性を管理する必要性も高まっています。これは厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」でも指摘されています。Cisco DNA Center により常に最新の情報を把握及び管理することが可能です。
2.アシュアランス
Cisco DNA Center は、ネットワークの健全性を評価したうえで必要な対処を行うための情報を IT 管理者に提示する、「アシュアランス」という機能を搭載しています。トラブルが発生した際、通信のパケットキャプチャデータから過去の状況を分析し、例えば「繋がらない端末が、認証でエラーしているのか、電波が弱いため繋がらないのかなど、どのような原因でネットワークが使えない状態となっているか」を有線・無線を問わず把握できます。これによってトラブル解決までの時間を大幅に短縮します。またネットワーク構築ベンダーに依頼せず、院内のIT担当者でもさまざまな状況の把握ができるため、トラブル対応の初動も早くなります。
3.自動化
例えば、患者様用無線 LANを提供するために無線LAN エリアを広げるなど、無線アクセスポイントを増設する際には、機器の設定作業が必要になります。そのときに、似たような手作業を排除できれば業務負荷を大きく削減できるでしょう。Cisco DNA Center では、テンプレート機能やゼロタッチプロビジョニング機能を有しているため、同じ設定を複数の無線アクセスポイントへ効率的に反映することができます。
4.位置情報
病院は、人やモノの位置情報を把握したいというニーズが強いことも特徴です。例えば病院の業務では、貸し出した医療機器が院内のどこにあるのか、スタッフがどこにいるのかを把握したいというシーンが頻繁に発生します。その際に、Wi-Fi 搭載の医療機器や、Wi-Fiが利用できるiPhoneやタブレットを持った人の位置情報がシステム上でわかるようになれば、不在にしている人やモノに関して不要な問い合わせすることもなく、コミュニケーションロスを削減できます。
実際に Cisco DNA Center でも、無線 LAN に接続している端末の位置情報を計測し、Cisco DNA Center 上で可視化する機能を搭載しています。端末と無線アクセスポイントの距離を電波の強度によって測定することで、正確な位置を把握できる仕組みです。
ベンダーに依存しないトラブル対応ができるように
Cisco DNA Center は、実際に全国のさまざまな病院に導入されており、ここでは大分大学医学部附属病院の例を紹介しましょう。
この病院ではネットワークインフラが老朽化していたことで、頻繁に障害が発生していましたが、トラブルに対処できるIT担当者が限られているため、スムーズに対応できないことも珍しくない状況でした。
そこで同病院では Cisco DNA Center を導入。トラブルが発生した際、管理コンソール上から「どの機器がどんな状態なのか、どんな対処が必要なのか」を即座に判断できるようになったといいます。
また、以前はトラブルが発生するたびに IT ベンダーに対応を依頼していましたが、現在では IT 担当者自身でトラブルシューティングを行えるようになったことで、コスト削減を実現することもできました。
API でより高度な活用も可能
Cisco DNA Center では、標準機能を用いてネットワークを管理するだけでも十分に効果を発揮しますが、API を用いて Cisco DNA Center の情報を外部のアプリケーションへ提供することで、より活用の幅を広げることができます。
例えば何かトラブルが発生したら、それをトリガーにチャットツールに通知したり、インシデント管理のシステムに起票したりするといったシステム連携の仕組みを構築することでさらに業務を高度化することもできるでしょう。
センサーからデータを取得する IoT の仕組みやモバイルデバイスの活用など、医療機関における無線通信のニーズおよび通信量はこれからも高まってくると予想されます。
医療従事者が本業に集中することができ、かつ患者に適切な医療サービスを提供するためにも、安定なネットワークインフラは欠かせません。その中で Cisco DNA Center が病院の業務に果たす役割は大きなものだと考えています。