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南アジアの銀行取引向け スーパーアプリの構築

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この記事は、アジア太平洋、日本、中国のアーキテクチャ ビジネスを率いるシスコのバイスプレジデント Vish Iyerpopup_iconによるブログ「Building A South Asian Banking Super Apppopup_icon」(2022/09/20)の抄訳です。

過去 10 年間にわたり、南アジアは驚異的な速さで変化を遂げてきました。就労人口の増加により生産力と購買力が向上し、モバイル接続およびインターネット利用が急速に拡大しています。さらに今や、個人がテクノロジーを目的達成の手段として利用できるようになるなど、南アジアは確実にレベルアップしています。

南アジアにおける変化を物語る象徴的な一例がスーパーアプリの増大です。通常、このようなモバイルアプリケーションはいくつものサービスとソリューションを提供することから、複数のベンダーとパートナーと連携して、緊密に結束されたエコシステムを形成します。

こうしたスーパーアプリを構築して成功しているのが、シスコのお客様であり、南アジアの一国でリテールバンキングを営んでいる大手銀行です。新しいサービスとソリューションを提供すべく規模を拡大する中、同銀行はシームレスなユーザーエクスペリエンスを確実にするために、シスコに着目しました。

このスーパーアプリに馴染みのない方は、次のようなモバイルアプリを想像してください。利用者が自分の口座の残高と取引を確認し、明細書を取得し、小切手帳をリクエストし、クレジットカードやデビットカードを管理できる、というものです。そのモバイルアプリに、公共料金の支払い機能や、プリペイド回線のクレジットのチャージ、映画のチケットの購入といった機能を追加し、さらにはパートナーを通じて投資に関する問い合わせにも対応しているのが、このスーパーアプリです。

リテールバンクにとって、このようなスーパーアプリを構築して管理するには、かなりのリソースが必要になります。ですがそれと同時に、スーパーアプリは多大な追加収入も生み出します。とりわけ重要な点は、このアプリケーションを「毎日使う必需品」にして、愛用者を増やして、継続率を高めて、月間アクティブユーザー数を増やし、利用者のライフタイムバリュー (LTV) を高めることです。この競争の激しいデジタル時代で成功するためには、このすべてが揃っていなければなりません。

シスコとの連携によって実現できた可視性と可観測性

同銀行がシスコと連携する前に直面していた問題は、チームがアプリケーションのパフォーマンスを把握できないことでした。

取引が失敗した、顧客が自分のアカウントにログインできないなど、さまざまな問題が発生した場合でも、誰かがコンタクトセンターに電話をかけるまで、チームは問題に気付けなかったのです。問題に気付いたとしても、適切なツールがなかったため、その問題を追跡して根本原因を特定し、修正することは困難でした。

場合によっては、利用者が使用しているネットワーク(不安定な接続)が障害となって、スーパーアプリで取引を完了できないこともありました。さらに、同銀行はシステムエラーやネットワークエラーによる障害にも直面していました。

こうした状況を把握することが、卓越したエクスペリエンスを実現して、利用者にアプリをずっと使い続けてもらえるようにするための第一歩でした。

SDN、UCS、AppDynamics、DNA Center、Intersight など、シームレスに連携する多数のシスコのソリューションにより、同銀行はスーパーアプリのユーザー体験をアップグレードすることに成功しました。

これまでは事後対応しかできなかったチームも「先手」を打てるようになり、コンタクトセンターに問題が報告されるのを待つ必要がなくなりました。それは、シンプルなダッシュボードで高度なテクノロジーにアクセスできるためです。このダッシュボードを見れば、スーパーアプリのステータスと、実行中のすべての取引の概要、スーパーアプリにアクセスしているすべてのユーザーの概要を一目で把握できます。

問題が顕著になったり、利用者に大きな影響を与えたりする前に、複数のシスコソリューションの連携によって問題が検出され、フラグが立てられます。多くの場合、チームはシスコの高度な可観測性機能を利用して、ユーザーに影響を与える前に障害点を特定できるため、あらゆるデバイスとネットワークで常に卓越したエクスペリエンスを確保できます。

Cisco Intersight レイヤも、問題への対応を容易にした要因です。これにより、IT チームは根本原因の究明に無駄な時間を費やす代わりに、問題の解決に注力できるようになりました。なぜなら IT チームが問題と原因を突き止めて、はっきりと確認できるからです。たとえば、限られたリソースでサーバーが実行されているためにアプリケーションに遅延が生じていることや、低速の CPU やメモリ使用率の増加といったキャパシティ上の制限があること、あるいはセキュリティパッチが適用されていないことなどを、ダッシュボードで数回クリックするだけで特定して明らかにできます。

最終的には、スーパーアプリとその各種のコンポーネントの製品ライフサイクルをより詳細に把握できるようになりました。国内で人気の高いスーパーアプリを使って顧客にとっての利便性を引き上げるなど、同銀行は多くの面で成果を上げ、デジタル時代でその存在を再確立しています。

舞台裏:ビジネスマネージャが操作するスーパーアプリ

他のチャネルを扱う銀行では技術リソースが少ないことを踏まえ、シスコの統合ソリューションでは、銀行のプロダクトマネージャ(非技術系のビジネスマネージャ)がスーパーアプリを操作できるようにしています。

チームはダッシュボードへの読み取り専用のアクセス権を持っているので、顧客からの問い合わせに対する答えを見つけるために、さまざまなデータストリームを安全に検索して参照できます。したがって、不具合や問題に関する顧客の問い合わせに対処できるだけでなく(顧客がコンタクトセンターからチームにリダイレクトされた場合)、スーパーアプリの新しい機能やソリューションを作成するために必要なデータを取得することもできます。

たとえば、特定のパートナー(フラワーショップなど)と取引している利用者の数が多ければ、そのベンダーに対して利用者が愛着を持っていることがわかります。その場合、チームはそのベンダーをスーパーアプリにオンボーディングして、関係者全員にメリットをもたらす、スーパーアプリユーザー限定のサービスを提供するといったアイデアを生み出すことができます。

ビジネス志向の幹部がスーパーアプリを日常的に管理していれば、新しいアイデアが生まれるに違いありません。ダッシュボードはインタラクティブで使いやすく、短時間で習得可能です。そのため、迅速に導入されて、技術リソースが必要に応じてトラブルシューティングを行ったり、他のワークフローのアップグレードやレガシーインフラストラクチャの再構築などの重要なタスクを行ったりすることに注力できるようになりました。

突き詰めるところ、どの業界でも、スーパーアプリを構築する際に重視しなければならないことは 1 つしかありません。それは稼働時間です。うまく統合された多数のソリューションを導入することで、同銀行ではダウンタイムを技術的な限界まで抑え込んでいます。これにより卓越したユーザーエクスペリエンスを提供し、銀行取引は毎回オンラインで行いたいと思わせるほど利用者の心をつかんでいます。

Authors

門脇 拓弥

Channel Sales Engineer

AppDynamics - APJC

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