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オンライン面会 「患者と家族が、ともに生活できる入院環境」の実現

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コロナ禍において多くの病院では、患者が入院生活を送る中で、病院の面会ルールや、急な入院によるコミュニケーション機器の準備不足などが引き起こす患者の孤独化や孤立が問題となっています。このような孤独や孤立化の解消や、患者の様子が把握できないことで感じる家族のストレスを軽減することを目的として、東日本旅客鉄道株式会社と協働し、入院時専用のオンラインコミュニケーション端末の貸出サービス「Be With」の実証実験を 2021 年 10 月 22 日(金)から 2021 年 11 月 12 日の期間で実施しました。

*本サービスは、JR 東日本グループのアイデア募集型の新事業創造プログラム「ON1000(オンセン)」にて応募したアイデアによる実証実験です。

 

サービス概要:

「Be With」のサービスでは、患者や家族の好きな時間にオンラインでコミュニケーションをとることで、何物にも代え難い家族を、入院時でも「手軽に身近に」感じることができ、「患者と家族が、ともに生活できる入院環境」の実現を目指しています。入院時専用オンラインコミュニケーション端末の貸出サービス「 Be With 」では、サービス利用者が入院時に端末を受け取ります。

実証実験では、 シスコの Webex が利用できる端末で、病室の患者と自宅の患者家族を繋ぎました。コロナ禍で面会が制限される中、患者と患者家族は、端末と Wi-Fi ルータを利用して 24 時間コミュニケーションをとることが可能になりました。

 

システムの特徴:

患者及び患者家族は必ずしも ICT のリテラシーが高いとは限りません。むしろ高齢者が多く、複数回の接続操作や、予約や接続のためのアプリケーションの切り替えは困難な場合が多いと考えられます。実証実験では、利用者は、毎朝更新される「Be With」サービスのオンライン面会通知カードを受け取り、カードに表示された“入院患者様用ボタン”と“ご家族様用ボタン”を押すだけのシンプルな操作でサービスを利用できるようになっています。

オンライン面会通知カードを受け取るアプリは、事前に端末にインストールされています。クラウドサービスを利用するための追加設備を準備する必要はなく、インターネットにつながる環境(今回の場合は、 Wi-Fi ルータを利用しました。病室にインターネットに接続された Wi-Fi サービスが導入されている場合は、病室の Wi-Fi を利用可能なサービスです。)と、「Be With」サービス端末さえあれば利用可能です。この導入の際の負担が少ないことも特徴です。

当初は、短い時間で利用する想定を持っていましたが、多くの利用者は、終日接続して利用していました。(同日であれば、同じオンライン面会通知カードのログインボタンから何度でも接続可能です。)

「Be With」端末を受け取っていない親戚などの関係者が参加する場合には、オンライン面会用 URL をコピーして、メールで送信する事が可能です。招待メールを受け取り、自動的に起動したブラウザに表示された接続ボタンを押すだけでオンライン面会に参加可能になります。これは、Cisco Webex に新しく機能追加された WebRTC 技術を利用した Cisco Webex Instant Connect for Virtual Care を利用しています。なお、今回の実証実験では、「Be With」端末を持たない利用者の参加はしない形で環境を構築していました。

オンライン面会通知画面

オンライン面会通知画面

利用者の声:

実証実験の病院に勤務する看護師は、医療スタッフと家族との連携は、看護師から家族に電話しても仕事など繋がらないことが多い事や、患者の様子は口頭ではなく実際に見ないと伝わらない事も多く、家族に質問されても患者の状態(個人情報)を話せないなど、オンラインで直接患者と家族がビデオ接続することでクリアできることもあるという考えもあり、「Be With」の導入で、患者と家族間でお互いの確認やコミュニケーションできる事が良いと思う一方、オンライン面会のサポート業務が増えることの心配などの不安も持っていました。

看護師による実証実験後のアンケートでは、常に様子が見えることは、患者の治療意欲向上やリハビリの意欲 UP に繋がる事や、患者の状態を家族にタイムリーに伝えられることにより退院調整や今後もイメージしてもらえる事や、患者と家族が直接連絡をとりやすくなることで看護師が間に入ることによる連携ミスを防げるなど、ケアの向上につながるとサービスを利用することに同意する声が上がりました。

患者からは、家族に会えない寂しさを大分解消してくれた事や、家族を近くに感じられ、リモート会食もでき、食が進んだ事(血液内科 60 代女性)や、自分では伝えきれない主治医や看護師さんの説明を家族にモニターを通して直接、正確に伝えることができた事(整形外科 60 代男性)などの声がありました。患者家族からは、患者の 1 日の具合の様子が分かるため、病院と家族間の連絡と連携がスムーズになった事(30 代息子)や、画面だけでも安心感を得られ、充実した事、退院後の自宅復帰に向けて看護師と連携でき、安心して患者を迎えられそうな事(50 代 妻)などの意見がありました。一方、必要な時だけ繋ぐ利用者の満足度は、電話と変わらないなど低い結果が出ています。

患者と患者家族を常時繋ぐことは、自宅にいるような日常感を味わえるとともに、常に様子が見えるメリットが強調された結果だと考えています。このように、「Be With」サービスを利用することにより、家族が患者の変化やリスクにいち早く気づくことができたなど、認知症患者を持つ家族の満足度は高く、自分達で声がけができるなど「看護師+家族」のサポート体制が取れることがわかりました。

 

今後の改善ポイント:

実用化に向けての改善点には、操作の簡易化や通信の安定化、機材の受け取り方法、患者と家族の利用ルール決め、操作補助の簡易化、現場医療者のプライバシー保護などが挙げられました。このクリアすべき課題を一つ一つ検討し、本サービスの実装を目指して、今後もサポートしてきたいと考えています。

 

Authors

若村 友行

Healthcare BDM

Industry Solutions Group

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