この記事は、Enterprise Networking APJC の Managing Director である Kartika Prihadi によるブログ「Three key network challenges every enterprise should address in the post-pandemic era」(2021/9/27)の抄訳です。
職場はもう以前の姿には戻らないでしょう。この変化をもたらしているのは従業員の期待だけではありません。McKinsey 社が全世界で行った調査では、幹部クラスのエグゼクティブの 10 人に 9 人が、パンデミック後もテレワークとオンサイト勤務を組み合わせていくと回答しています。さらに、パンデミックの間に従業員の生産性が向上したことに、ほとんどのエグゼクティブが同意しています。
こうした変化に対応する中で、IT 部門のリーダーの皆さんは大きな前進を遂げられたことでしょう。突然のテレワークへの移行に伴う施策の導入、それに続くオフィスの安全な再開にご尽力されたはずです。
しかし今、突然の変化であったものが長期的な変化に変わりつつあります。職場環境、従業員、事業活動を支える物理インフラとデジタルインフラを根底から見直す時期に来ているのです。変化の種類と規模を考えると、この見直しにあたっては、企業内のすべての人とすべてのものをつなぐインフラを考慮に入れる必要があります。つまり、ネットワークです。
IT 部門のリーダーの皆さんのお役に立てるよう、本連載では、パンデミック後の時代に向けて企業ネットワークを刷新する方法をご紹介していきます。連載第 1 弾となる今回は、皆さんが直面することになる 3 つの主要な課題について説明します。
接続に関する課題
パンデミックが発生する前から、ほとんどの企業ネットワークは従来のオフィスや各拠点のネットワークの境界を越えて拡大していました。オフィスで働く人の多くは、すでにワークステーションをモバイルオフィスに切り替え、どこでも自由に仕事ができるようになっていました。その後もこの傾向は続き、さらに多くの人がフルタイムで、あるいは部分的に在宅勤務を行うようになりました。
一方で、パンデミックによってデジタル技術の利用が進んでいます。現場で働く配送業のドライバーから医療従事者まで、さまざまな職種に就いている人たちが、より多くの場所でデジタル技術を活用するようになっています。製造業から農業まで、幅広い業界で Internet of Things(IoT)の新しいアプリケーションが採用され、デジタルネットワークに接続されるデバイスの数もどんどん増えています。
IT 部門のリーダーの課題は、すべてのリモートワーカーとデバイスが、簡単かつ確実にネットワークに接続できるようにすることです。また、企業ネットワークのパフォーマンスと帯域幅に対するニーズの高まりにも対応する必要があります。
今後も普通に実施されるはずのオンライン会議は、多くの場合、高解像度のビデオを使用してさまざまな場所で行われます。帯域幅を大量に消費するビデオなどのメディアは、遠隔医療やテクニカルサポートのように、オンライン会議以外の用途でもリモートで使用される機会が増えています。リモートワーカーと IoT デバイスは、低遅延のネットワークを介してクラウドアプリケーションに即座にアクセスできる必要があります。
セキュリティ上の課題
もう 1 つの重要な課題は、人々がますます分散して働くようになる中でビジネスデータを保護することです。保護しなかった場合の損害は、これまでよりもさらに大きくなっています。IBM 社と調査会社 Ponemon Institute の 2021 年「データ侵害のコストに関する調査レポート」によれば、企業のデータが侵害された場合の平均コストは今日では 424 万米ドルに達しており、同レポートの 17 年間の歴史の中で最高を記録しています。
平均コストを増大させた主な要因はテレワークだと考えられています。テレワークが要因となった侵害の平均コストは、他の侵害と比べて 107 万米ドルも高くなっています。
一方、IoT や他の自動化アプリケーションによって、M2M(Machine-to-Machine)接続が増加しています。実際にシスコは、M2M デバイスがコネクテッドデバイスに占める割合が 2023 年には全体の半分になると予測しています。2018 年には、この割合は 3 分の 1 でした。
考えれば空恐ろしいことです。組織の攻撃対象領域が絶えず増加しているだけでなく、多くの場合、セキュリティ保護を行う人員がエンドポイントの近くにはいない可能性があるのです。
ネットワーク管理の課題
増加しているのはエンドポイントデバイスだけではありません。デジタル化を加速するために、企業はますます、多種多様なシステムとアプリケーションを使用するようになっています。調査会社 IDC が発表した最新の Cloud Pulse Survey によると、複数のクラウドサービスが利用されるようになっており、69% の組織がマルチクラウド戦略に投資しています。
しかし、多くの企業ネットワークの規模と複雑さは、自社で管理できる範囲をはるかに超えて進化してきました。従来のネットワーク技術とトポロジは、今日の企業向けに設計されたものではありません。複数の有線およびワイヤレスのローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、各拠点、データセンター、クラウドサービス、そして多数のリモート接続を想定したものではなかったのです。
ネットワークの刷新を図ろうとしている組織は多いものの、多くの場合は対処療法的なやり方になっていて、依然としてネットワーク環境と IT 環境が別々に管理されているのが実情です。どのユーザとデバイスがネットワークにアクセスしているのか、ユーザエクスペリエンスの質はどうなのかをエンドツーエンドで把握することは、不可能ではないにしても困難です。同様に、異常や脅威を検出して診断し、一貫したポリシーを適用することも簡単ではありません。
複数の課題に対応するフルスタックソリューション
こうした課題に対応するには、パンデミック後の時代に向けて企業ネットワークを再設計する必要があるでしょう。ネットワークインフラに対する包括的なフルスタックアプローチを採用することが、企業ネットワークの再設計を実現する最善の方法だとシスコは考えています。
フルスタックアプローチをとることで、次のような目標を達成できます。
- 有線またはワイヤレスのネットワークを介して、ユーザとデバイスがどこからでも簡単かつ確実に接続できる環境を作り上げる
- アイデンティティ(本人確認)を基本とした継続的で信頼できるアクセスによってネットワークを保護し、認証されたユーザとデバイスがアプリケーション、サービス、データを使用できるようにする
- 人工知能と機械学習を使用してネットワーク管理とオーケストレーションを自動化するとともに、ネットワーク全体のデバイス、ユーザ、アプリケーションのアクティビティを分析することで、エンドツーエンドの可視性とインサイト(洞察)を得る
今後数週間にわたり、ハイブリッドワークフォースの接続とエンゲージメントから、新しいネットワーク運用モデルの構築に至るまで、企業ネットワークを再設計する方法ついてさらに掘り下げていきます。
企業ネットワークの再設計をシスコがどのように支援できるかについて詳しくは、Cisco Catalyst フルスタックを活用した変化に即応するセキュアなネットワークをご覧ください。