Cisco Wireless 3D Analyzer:Wi-Fi の計画、モニタリング、トラブルシューティングをシンプルにする革新的ソリューション
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この記事は、Enterprise Networking の Software Engineering Manager である Salvatore Valenza によるブログ「Cisco wireless 3D analyzer: A game changer in simplifying WiFi planning, monitoring, and troubleshooting」(2021/10/28)の抄訳です。
今やワイヤレス接続は普遍的に使われており、私たちの日常生活の一部となっています。しかし、今日要求される水準の無線カバレッジとキャパシティに最適な Wi-Fi ネットワークを計画し、メンテナンスすることは、経験を積んだネットワーク管理者が日常的に、あるいは年単位で取り組んでも難しいでしょう。
ワイヤレス技術は広く利用されているとはいえ、そのカバレッジは物理的な環境に影響されます。特定の環境に最適なカバレッジを設計するには、障害物(壁、ドア、窓)、建物の形状や建材、ユーザー数、使用目的など、さまざまな要因を考慮する必要があります。環境を垂直方向に見ても、環境が異なれば複雑さも異なることは明らかです。たとえば、中規模の企業オフィス空間をカバーする場合は、全方向性アンテナでアクセスポイント( AP) を正しく配置するといった単純な設計で済むでしょう。一方、天井の高い倉庫をカバーする場合は、空間をカバーするための指向性アンテナが必要になり、カバレッジを適正に整備するにはより技術力も要求されます。問題は、無線周波数(RF)が、何らかの方法で可視化しない限り、目に見えないことです。状況を十分に考慮して RF を確認し、的確な角度、出力、カバレッジ、キャパシティを判断するには、すぐれたツールが必要です。
シスコの新ソリューション
Cisco Wireless 3D Analyzer をご紹介します。これはネットワークオペレータが担当する計画とメンテナンスの作業プロセスを一新するソリューションです。視覚的な 3D イマーシブ(没入型)体験が得られるため、前述のプロセスのさまざまな面がシンプルになります。同時に、詳細な分析結果が提供されるため、成功に不可欠な要因を見きわめることができます。
新しい場所に Wi-Fi を整備するワークフローは、一般的に次のようになります。
- 計画、一定規模の展開レイアウト作成、適切な配置の分析
- 機器の導入と現場の導入トレーニング
- カバレッジを検証し、カバレッジが設計要件を満たしていることを確認
- ネットワーク構成を調整してカバレッジとキャパシティを最適化
- 管理サーバーにフロアマップを追加して静的な 2D ヒートマップをモニタリング
Cisco Wireless 3D Analyzer を使用すれば、フロア空間に実際に製品を配置する前に、ノートパソコンでこれらの計画と導入のプロセスを行うことができます。導入後は、Cisco Wireless 3D Analyzer によって既存のテレメトリデータと予測結果が関連付けられ、ネットワークで日々発生する複雑な相互作用を動的にモニタリングするために必要なあらゆる情報が一元的に表示されます。その結果、同じ作業に要する経費(OPEX)が大幅に削減される一方、シンプルで直感的なユーザエクスペリエンスが得られます。
ソリューションの構成要素
ソリューションの主なコンポーネントをご紹介します。
シスコ ワイヤレス ネットワークは、AP、センサー、スイッチ、ワイヤレスコントローラ、Cisco Identity Services Engine(ISE)などのネットワークリソースで構成される総合的なネットワーク インフラストラクチャです。クライアントデバイスにエッジサービスを提供するために必要になります。
Cisco DNA Center は、システムのシングルポイントであり、プロビジョニングタスクとオンボーディングタスクの自動化からライフサイクルのモニタリング・管理、分析までを導入開始直後から提供します。また、お客様の建物のフロアマップもインポートします。
Cisco Wireless 3D Analyzer は、ネットワーク管理者のブラウザで実行される Web アプリです。また、HTTPS 経由で Cisco DNA Center に接続します。最先端の 3D 可視化と汎用 GPU 技術を採用しており、フロア空間のワイヤレス環境を予測するモデルを構築します。このアナライザを使用すれば、ネットワークのカバレッジとキャパシティ、それに関連する多数のインサイトを 3D で視覚的に確認できます。
Cisco Wireless 3D Analyzer は、Cisco DNA Center にすでにある豊富なワイヤレステレメトリデータを利用し、そのデータをインタラクティブな 3D モデルによる強力なコンテキストと組み合わせます。ユーザーは、こうしたコンテキスト情報をすべて確認できることはもちろん、強力な分析エンジンによって何千ものデータポイントを組み合わせて実用的な結論を導き出せます。さらに、現場での作業が必要な手動による調整を最小限に抑えながら、ネットワークを最適化できます。アナライザの無線測定によって、適切に機能しているかどうかを確認したり、調整が必要な点を把握したりすることが可能です。これは、導入直後だけでなく、導入後の長期を見据えたライフサイクル全体で確認できます。
ソリューションの仕組み
Cisco Wireless 3D Analyzer は、ネットワーク運用をイマーシブな(没入型の) 3D 表示で可視化し、ライフサイクル管理と計画の両方を支援します。
計画
壁や建材に関するデータを含む CAD ファイルや Ekahau プロジェクトファイルを入力すると、アプリが環境の 3D モデルを生成し、予測モデリングに基づいて床から天井までの RF カバレッジを表示します。モデルに入力されるのは、現在の出力やチャネルはもちろん、アンテナ座標までを正確に記述するためのテレメトリデータです。そのモデルから環境が動的にレンダリング(描画)されます。アクセスポイント、クライアントデバイス、センサー AP、モデリングで記述された 3D フロアエリア全体の物理環境で生じている無数の相互作用の分析は、強力な分析エンジンが行います。3D アナライザは、検出されたサービスレベルの問題を動的に特定し、切り離して表示します。
メンテナンス
従来の静的な 2D ヒートマップとは異なり、Cisco Wireless 3D Analyzerはネットワークのリアルタイムデータも相関させます。これを可能にするのは、Cisco DNA Center テレメトリ、Catalyst スタックアーキテクチャ、センサー、アシュアランスデータです。これにより、予測結果と、3D フロアマップで実際に測定されたグラウンドトゥルース(実際に観測されたデータ)を相関させることができます。この相関により、正確さを視覚的に確認できるだけでなく、現実に生じた有害な変化を動的に知ることができます。3D 環境には、アクセスポイントの稼働時の正常性スコアやその他の重要なデータが、「仮想現実」内の複数のレベルで表示されます。下の図では、カラーの涙形ラベルに正常性スコアが表示されています。
また、使用可能なセンサーの測定値もネットワークの全体像に統合されていることに注目してください。上の図でセンサーは「S」というラベルの円で表示されています。
下の図は、3D アナライザの物理環境の表示に反映される主なデータの流れを表しています。多様な相関関係があり、ネットワークのコンテキストをまったく新しい方法で把握できます。
Cisco Catalyst ネットワークは、ライブデータを Cisco DNA Center に提供します。そのデータを Cisco Wireless 3D Analyzer が利用しています。このアプリはフロアマップ、実際のインベントリ HW モデル、現在の構成に基づいて予測とそのライブデータとの相関関係を生成し、多彩なコンテキストを可視化できる完全な 3D 環境を提供します。
主なユースケース
ネットワークの見える化について、シスコが新しいレベルの効率性と正確性を実現できると考えるユースケースをいくつかご紹介します。
視覚的インサイト
Cisco Wireless 3D Analyzer は、予測データとテレメトリ入力を相関させ、その結果を分析して、ネットワークの動作に関するインサイトを提供します。下の図の例では、フロアの RSSI カバレッジの 67% がユーザー設定の KPI(キーパフォーマンス指標)である「-70 dBm」 を下回っていることが検出されています。Insight でマウスで 1 回クリックするだけで環境が瞬時に設定され、問題がある正確な位置がハイライトされ、明確で実用的なビューが即座に表示されます。
チャネル干渉の検出
ワイヤレスネットワークでは、干渉はパフォーマンスの反意語です。ビューを「干渉」に変更すると、今度はネットワークが自己干渉しているエリアがハイライト表示されました。さらに、干渉の原因になっている AP とチャネルが選択されて明確にハイライトされるため、迅速にコンテキストを把握し、原因をつきとめることができます。
3D アナライザは、これらの問題を検出してアラートを出すだけでなく、管理者が現場の構成を変更することなく、ソリューションをリアルタイムで安全にモデリングできるようにします。
他フロアからの干渉に加えて、複数のタイプの干渉(同一チャネル、隣接チャネル、ネイバー)を検出できます。下の図は、干渉を引き起こす可能性がある多層階のカバレッジを 3D で表したものです。
天井の高い環境の分析
倉庫などの天井の高い環境は、難しいユースケースであり、設計において適切に対処されないことが多々あります。最近では、フロアレベルで良好なカバレッジを提供するだけでは不十分になってきています。自動化と作業によりユーザーは物理的環境内のあらゆるレベルに移動する必要があるため、床から天井までのカバレッジの有効性を理解することがますます重要になっています。2D マップの場合、想定されるユーザーのレベルで RF を表示することはできますが、その間のあらゆるレベルでカバレッジを可視化するには時間がかかります。3D 可視化の場合、それを表示するだけでなく、6 インチ(約 15 cm)厚の垂直方向スライスという解像度のスキャンとしても表示できます。こうして可視化された表示結果では、棚、ラック、ボックス、キャパシティレベルの観点からモデリングされた環境データに基づいて、さまざまな構成や効果的なソリューションを目で見て確認できます。
カバレッジ予測では、すべての障害物と実際のアンテナデータを考慮して包括的なフロアビューが提供されます。最適な効率性は偶然ではなく、計画から導き出されるのです。計画とは、ネットワークのライフサイクルを通して変化し、変更するものです。3D アナライザを使用することでその変化を監視できます。
上の図は垂直方向スキャンの再生動画です。このスキャンから、床から天井までのスキャン厚の高さごとにカバレッジ情報を得ることができます。
一人称 (First Person)ビュー
一人称(First Person)ビューにすると、管理者はモデリングされたバーチャル環境に足を踏み入れ、ユーザー目線で環境を見ることができます。絶えずテレメトリデータが表示されるため、環境内を移動しながら、配置されたアセットをマウスで操作して物理環境を把握できます。これは画期的な機能です。車で移動しなくてもこのようなことが可能になるのです。
アンテナ伝搬
天井の高い建物や高密度の環境に対応するには、目的の結果を得るために特殊なアンテナが必要になることがよくあります。多くの人にとって、特殊なタイプのアンテナがカバレッジ環境にどう適合するかをイメージするのは難しいものです。しかし Cisco Wireless 3D Analyzer があれば、これが簡単になります。管理者は、すべての RSSI 値でカバレッジパターンを可視化し、どうすれば角度を最適化できるか確認できるのです。さらに、どのアンテナなら課題の解決に最適かも比較検討できます。
既知の環境内で既存または新規のソリューションによって生じる変化を可視化できるため、流動的な変更管理のための迅速なアセスメントが可能になることはもちろん、管理スタッフが自信とスキルを身につけるための安全な環境も確保できます。ワイヤレスは、見えるともっと楽しくなります。ちなみに、このような情報はすべて、現場に「移動せずに」入手できます。
まとめ
Cisco Wireless 3D Analyzer は、進化するワイヤレスネットワークの計画とモニタリングを容易にするためのシンプルで革新的なソリューションです。無線カバレッジの要求水準は高まり続けていますが、このアナライザを使用すれば、カバレッジを最適化するために必要な手動操作を大幅に軽減できます。また、シスコ ワイヤレス ネットワークで利用できる有用なデータをすべて相関させて、完全にイマーシブな(没入型の) 3D 環境で表示できます。Cisco Wireless 3D Analyzer は Cisco DNA Center リリース 2.2.3 に含まれます。
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