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航空業界を標的とした攻撃の調査から、5 年にわたる侵害が芋づる式に発覚


2021年10月20日


  • Cisco Talos は、過去 2 年にわたって航空業界を標的にしてきた攻撃者が最近の攻撃にも関与していることを確認しました。
  • この攻撃者は 5 年以上前からマルウェア攻撃を成功させています。
  • 常に商用マルウェアを使用しつつも、暗号化ツールによってマルウェアの検出を回避することで実効性を高めていたのです。
  • 小規模な攻撃であれば数年にわたって発覚することなく実行される可能性があり、なおかつ標的には深刻な問題を引き起こすという事例の 1 つです。

概要

Cisco Talos をはじめとするセキュリティ研究者は先ごろ、航空業界を標的にした一連の攻撃について報告しました。報告では主に、悪意のある商用リモートアクセスツール(RAT)の検出を回避する暗号化ツールが取り上げられています。

一研究者が最初の RAT の発見から調査を展開して、最終的に攻撃者をプロファイリングする方法を知っていただくには、今回が格好の例だと考えました。今回のブログ記事では、航空業界を標的にした過去の攻撃を Talos が発見した方法についてご説明します。攻撃には、6 年近く活動を続けてきた攻撃者が関与しています。

この攻撃者はナイジェリアを拠点にしている可能性が高く、高度な技術は有していないと考えられます。活動開始以来、自らマルウェアを開発することなく、販売されているマルウェアを使用しているからです。マルウェアの検出を逃れるための暗号化ツールも有料版を導入しています。何年にもわたって数種類の暗号化ツールを使用していますが、その大半はオンラインフォーラムで購入したものです。

この攻撃者は 5 年以上にわたり活動している可能性が高いと考えられます。この 2 年間は、航空業界を標的にすると同時に、他の攻撃も実行していました。最初の発見から調査を展開するプロセスは 100% 確実なものでなく、研究者は情報の関連性についてある程度の確信を持って調査を進める必要があります。

この記事では、特定の偽ドキュメントを使用して航空業界を中心に AsyncRAT と njRAT を拡散している攻撃者に関する情報を Talos の調査で明らかにした方法を説明します。感染すると、データの盗難や金融詐欺のほか、将来さらに深刻な結果をもたらすサイバー攻撃の被害を受ける可能性があります。

Talos の研究者は、小規模な攻撃を仕掛ける攻撃者が長期間にわたり発覚することなく活動を継続できることを明らかにしました。小規模な攻撃とはいえ、大規模な組織において重大なインシデントにつながる可能性があります。こうした攻撃者が闇市場で取引しているログイン情報と Cookie を、大規模な攻撃グループが「大物狩り」の攻撃に使用する恐れがあるのです。

航空業界を狙った攻撃

新たな攻撃で AsyncRAT が使用されていることを Microsoft 社がツイートpopup_iconしたのを受け、Talos は調査を開始しました。Talos の研究者は、Microsoft Security Intelligence が言及したドメイン kimjoy[.]ddns[.]net を調べました。以下の画像は、攻撃、ドメイン、IP、何らかの相互関係のある攻撃者の間のつながりを示しています。

この画像が示しているのは、攻撃者が 5 年以上にわたってマルウェアを展開していて、少なくともここ 2 年は主に航空業界を標的にしているということです。攻撃者は初期攻撃ベクトルとして以下のような電子メールを使用しました。

これらの電子メールには、Google ドライブでホストされている .vbs ファイルにリンクされた PDF ファイルが添付されているようです。

Talos は調査で、この攻撃者が少なくとも 2018 年から航空業界を標的にしていることを明らかにしました。当時は「Trip Itinerary Details(旅程の詳細)」と「Bombardier(ボンバルディア)」という単語がファイル名に使用されており、URL は akconsult[.]linkpc[.]net でした。

akconsult[.]linkpc[.]net

まずは文字列「Charter details.vbs」を検索し、このドメインにたどり着きました。この文字列は、ドメイン kimjoy[.]ddns[.]net にリンクされていたサンプルの 1 つです。

akconsult.linkpc.net は最も古いドメインであり、最初に確認されたのは 2015 年 7 月 2 日です。このドメインに関連するアクティビティを分析した結果、この攻撃者が複数の RAT を使用してきたこと、2018 年 8 月以降は、このドメインと通信しているサンプルが存在すること、航空業界が標的だったことを示すファイル名をサンプルに使用していたことが判明しています。

以下の表に、akconsult[.]linkpc[.]net と通信する航空関連の名前が付けられたサンプルを時系列で示しています。このドメインに関連しているのはここに挙げているファイルがすべてではなく、Talos の調査に関連するサンプルのみを一覧していることに注意してください。

この攻撃者は長期間にわたって活動しているため、他にも何か見つかるかもしれないと考えました。そこで、キーワード「akconsult」で検索してみたところ、サイト hackingforum[.]net でマルウェアのサンプルとユーザのハンドル名を特定できました。サイト内を検索すると、攻撃者の狙いが見えてきました。この点については、以降のセクションで詳しく説明します。

特定したサンプルが最初に確認されたのは 2013 年 2 月 7 日で、.NET パッカーで圧縮されていました。RunPE スタブのリフレクションを 3 回実行してから、自身のコピーを空洞化して CyberGate のマルウェアを挿入します。

この画像のレジストリキーを見ると分かりますが、CyberGate RAT の設定パラメータの 1 つは NewIdentification です。Talos は、識別キーとして Akconsult が使用されているサンプルを発見しました。このパラメータは、複数の利用者を区別できるようにマルウェアの作成者によって定義されています。ハンドル名「Akconsult」が使用されていたので、攻撃者との関係を把握することができました。この時点で、Talos が追跡している攻撃者がユーザ名 akconsult を使用していることは分かっており、サンプルで akconsult を使用していてもおかしくありません。

使用されているコマンド & コントロール(C2)ドメイン「opybiddo.zapto.org」については、Microsoft 社が Mutairi らを相手に起こした訴訟で言及されています。Microsoft 社はこの裁判で、ドメイン zapto.org の所有者とともに、njWorm、H-Worm、VitalWerks の作成者を告訴しました。裁判を詳しく調べると、Akconsult とワームの作成者の間には関係がなかったことが判明しました。一見したところ、マルウェアを配布していたこと、そして VitalWerks に関連していたという事実のみからこのドメインが他のドメインとともに押収されたと考えられます。最終的には、Talos が調査している攻撃者とこれらのワームとの間には別の関係が存在することが分かり、この裁判との関連性がさらに深まりました。

ドメインが押収されたのは、Talos が akconsult[.]linkpc[.]net ドメインの最初の記録を入手するよりも前のことであり、この押収が原因で akconsult は linkpc[.].net で作成されたと考えられます。

このホスト名を C2 として使用し、同じマルウェアを使用しているものの、識別子が異なる 4 種類のサンプルを特定しました。2012 年 9 月から 2014 年 5 月までのサンプルです。

最近の攻撃では、このドメインは AsyncRAT の C2 として使用されていました。攻撃者は、Google ドライブでホストされている VBS ファイルを介して AsyncRAT をドロップしていました。このサーバは C2 通信の暗号化に TLS を使用していたため、同じ証明書サムプリントを使用する他のサーバを検索することにしました。

この検索では、攻撃で使用されたのと同じサーバと通信していた AsyncRAT のクライアントが見つかりました。確認できたサンプル数は 50 を超えました。サンプルを分析した結果、この攻撃に関連する 8 個のドメインの存在が明らかになりました。以下に示すとおりです。

ほとんどのドメインは 2021 年 5 月または 6 月に最初に確認されました。一番古いドメインが使用されていたのは数日間だけだったようで、サンプルはあまり確認されませんでした。ただし、e29rava[.]ddns[.]net は常に使用されており、C2 としてこのドメインを使用するサンプルがいくつか見つかっています。

e29rava[.]ddns[.]net

6 月上旬から 7 月下旬にかけてドメインのいくつかを分析しました。最終的に、e29rava[.]ddns[.]net が、明らかに航空業界に関連する名前の付いた Visual Basic Scripting(VBS)ファイルにリンクされていることが判明しました。少なくとも、以下の 14 個の VBS にリンクされています。

このドメインは航空業界を標的にした攻撃でほぼ独占的に使用されていました。一部のファイルは、前述のリストにある他のドメインに接続するために、ほぼその日のうちに使用されています。

すでに述べたとおり、これらの VBS ファイルは AsyncRAT の検出を回避するための暗号化ツールです。

その他のドメイン

同じ情報をもとに、航空業界を狙った攻撃とは関係のない他のドメインが、この攻撃者と深く関連していることを発見しました。

ホスト名 bodmas[.]linkpc[.]net

「bodmas」は攻撃者が暗号化ツール Aspire で使用しているユーザ名の 1 つだったことから、このドメインの発見につながりました。検索すると、2018 年の最終四半期のサンプルが見つかりました。以下の画像に示すように、ハンドルネーム「Nassief2018」で、2018 年 12 月にはすでにこの暗号化ツールが購入されています。

このほか、発見したサンプルの 1 つは、ホスト名 kimjoy[.]ddns[.]net にリンクしていました。これは、航空業界を標的とした攻撃にリンクしていたとされる元のドメインの 1 つでした。あるサンプルには、以下に示す PDB ファイルのパスが含まれています。

このパスは、暗号化ツール Aspire が使用されていることだけではなく、bodmas[.]linkpc[.]net ドメインに接続するサンプルに「kimjoy」ハンドルが含まれることを示しており、この 2 つに関連性があることを証明しています。これは、Aspire がビルド時に使用した内部ハンドルのようです。

前のドメインでも見たように、この暗号化ツールは CyberGate のマルウェアの検出を回避するために使用されました。

ホスト名 groups[.]us[.]to

調査中に、情報の関連性が低いと判断する場合があります。技術的には関連していると考えられるものの、それを裏付ける証拠が足りなかったり、完全には状況に適合しなかったりするため、関連している可能性は低いとしてしまうケースです。上記はそうした例の 1 つとして挙げられます。

航空業界に対する攻撃が活発だった頃、あるドメインが気になりました。最初は関連しているようには思えませんでしたが、以下に示すように IP アドレスが重複していました。

この時点で、攻撃者があまり使用しないホスト名を詳しく調べる価値があると判断しました。

このホスト名を参照する最も古いマルウェアのサンプルは、2016 年 9 月 24 日に初めて確認されました。複数のファイルをドロップするマルウェアチェーンの一部であるシンプルなバッチファイルでした。このバッチファイルは、Delphi パッカーで難読化された別のマルウェアをダウンロードして実行します。

Talos は、このドメインを C2 として使用するマルウェアの検出率を調べるテストと思われるものを発見しました。以下の表は、ドミニカ共和国の同じ IP アドレスから送信されたサンプルです。送信は 1 回だけで、テストが行われていたことが分かります。

これらのサンプルは検出率をテストするものであったため、詳細に調査することにしました。

複雑な njRAT

この攻撃者の過去の戦術、手法、手順(TTP)を踏まえると、Microsoft Publisher ファイルの分析を開始したとき、感染チェーンが複雑だとは考えていませんでした。

Publisher ファイルの生成元はすべて同じでした。テスト用の初期マクロと、素人目には完全に正常に見える別のバージョンのマクロが見つかりました。

どちらのマクロも、悪意のあるドキュメントに埋め込まれた Microsoft Form オブジェクトからデータを抽出します。

このマクロは、C2 から HTML ドキュメントをダウンロードし、mshta を使用します(上記の右の画像を参照)。第 2 ステージのペイロードは、mshta が実行する VBScript を含む HTML ページです。このコードには以下のような PowerShell スクリプトが含まれています。以下は、難読化解除後のスクリプトです。

このスクリプトは、インターネット接続テストとして us.cnn.com に ping を実行し、その後 GitHub ページ hxxps://satlahlk[.]github[.]io/msc/cl.png から第 3 ステージのペイロードをダウンロードします。これは、バイト単位でエンコードされた PowerShell です。

PowerShell には、文字エンコードされた 3 種類の .NET 圧縮アセンブリが含まれています。最初のアセンブリは、マルウェアの検出を逃れるために AMSI にパッチを適用します。バイト配列に含まれているバイトを見れば分かりますが、これは GitHubpopup_iconで公開されているコードのバリエーションの 1 つです。

2 番目のアセンブリは、最初のパラメータで渡された実行ファイルを実行し、2 番目のパラメータで渡されたコードを挿入するインジェクタです。

挿入されるマルウェアは njRAT の亜種です。このことから、攻撃者が高度な手口を使っているのではなく、単に複数の RAT を使用しているということが見えてきます。

H-Worm

2019 年 12 月 13 日に最初に確認された悪意のあるドキュメントは、同じドメインでホストされているペイロードをダウンロードし、実行していました。

このサンプルは簡単な文字演算でパック処理されており、ドメイン groups[.]us.[.]to に接続します。解凍すると、ハンドル「houdini」を使用する攻撃者によって開発された H-Worm であることが明らかになりました。

前述の Microsoft 社の起訴状に記載されている 2 種類と同じく、悪意のあるアプリケーションです。

設計者

njRAT のサンプルを詳しく調べると、別の調査対象が見つかりました。すでに説明したとおり、このサンプルには非常に複雑なパック処理が施されていますが、ある段階で、最終ステージのペイロードを https://satlahlk[.]github[.]io/msc/cl.png からダウンロードします。GitHub のアカウント名は、所有者がブラジルに存在することを示していますが、njRAT 関数名はスペイン語で記述されています。

PowerShell 暗号化ツールにポルトガル人のサッカー選手 Cristiano Ronaldo への参照が含まれているのは珍しいことです。「Chris」は、ブラジルとスペインで Cristiano を表します。

GitHub アカウントの検索は、RAT 名「TikTok」によって作成されたミューテックスと同様に行き詰まりました。ただし、njRAT の亜種には、調査の基点となる独自の詳細情報が含まれているようです。

この RAT は、C2 通信でフィールド区切り文字として「@!#&^%$」を使用します。以下に示すように、この文字列はバイト配列として定義されていて、使用時に文字に変換されます。

右側の画像で示しているのは、逆コンパイルされたコードではなく、バイト配列作成の 16 進数の定義です。非常に特殊な文字列であるため、調査の基点として使用することにしました。バイト「0A800600000420391B0000800800000420011400008D」で検索すると他に 3 つのサンプルが見つかりました。すべて同じドメインと通信します。

これらのサンプルには新たな基点があります。攻撃者は「UbboSatlahlk」というミューテックスを作成しており、前述の GitHub アカウントの一部が含まれています。このミューテックスには、追加調査を行うのに十分な独自性があります。また、同じドメインを含む 7 つのサンプルが見つかりました。このミューテックスから判断すると、名前は元のサンプルと明らかに関連性があります。

インターネットでこのミューテックスを検索したところ、スペイン語圏のサイバーセキュリティ フォーラムのユーザ名でもあることが判明しました。スペイン語圏であるということは、他の 2 つの調査結果とも一致しています。1 つは、RAT の機能がすべてスペイン語で記述されていること、もう 1 つは、ドメインで使用されている IP アドレスの大部分がスペイン語を公用語とするドミニカ共和国に存在していることです。

ユーザはこのメッセージで、暗号化ツールを作成しているものの、何らかの問題を抱えていると述べています。これはドメインが最初に出現したのと同じ 2016 年のやや古いメッセージです。

さらに、Skype のアカウント名「UbboSatlahlk」から、拠点がドミニカ共和国のサントドミンゴであることが分かり、設計者と関連している可能性が高まりました。

調査のパラドックス

ここまで一致していると、ダイナミックドメイン groups.us[.]to も同じ攻撃者に関連している可能性があります。ただし、IP アドレスが共有ホストに属している場合、偽のリンクである可能性があります。一方で、IP アドレスが共有ホストに属しているとすれば、この IP に解決するドメインが多数存在するはずです。今回のケースでは、ドメインは 13 個のみであり、そのうち 3 個については、問題のイベントの発生時期とは重ならないため除外できます。残りの 10 個は、ダイナミック DNS またはスタティック IP を提供する VPN サービスです。VPN レコードの解決は、主にナイジェリアからのものであり、Talos の調査とも一致しています。

一方、残りの TTP は航空業界を標的とした攻撃とは異なります。航空業界を狙った攻撃は主に、Google ドライブでホストされているマルウェア実行ファイルへのリンクを含む電子メールを介して展開されました。ペイロードは暗号化ツールを使用して難読化されていますが、ダウンロードされるステージはありません。すでに見てきたとおり、このドメインに関連するマルウェア攻撃は、航空業界を標的とした攻撃の背後にいる攻撃者の TTP とは一致していません。しかし、技術的な知識が乏しく、使用するツールを購入する傾向がある攻撃者であることも分かっています。

このドメインは、新しい開発者による新たなツールをテストするために使用された可能性が最も高いと考えられます。Talos が追跡している攻撃者に関連があるという調査結果が存在し、悪意のあるアクティビティに関係していることが明らかなため、詳細な調査を待たずに IOC のリストにドメイン reserverem[.]duckdns[.]org と monthending[.]duckdns[.]org を追加することにしました。

攻撃者のプロファイリング

アバターとハンドル名

これまでに説明した攻撃の詳細から、この攻撃者が 2013 年にはすでに活動していたことが強く示唆されています。攻撃者は当初 CyberGate のマルウェアを使用していましたが、その後、別の商用マルウェアに移行しました。今回の調査において、akconsult に関連する初期攻撃を、人気のあるハッキングフォーラムで特定したハンドル名「Nassief2018」に関連付けました。これと同じアカウント名のユーザが、別の RAT プラットフォームでユーザ名「bodmas」と「kimjoy」を使用していることに触れています。

このフォーラムでのやり取りの中で、このユーザは自分に関する他の情報も明らかにしました。具体的には、電子メールアドレスが kimjoy44@yahoo[.]com であり、Telegram アカウントが @pablohop だということです。両アカウントは、こちらの記事popup_iconの航空業界に対する攻撃と関連付けられていました。

Skype では、攻撃者の電子メールがユーザ名「abudulakeem123」に関連付けられています。

拠点

パッシブ DNS テレメトリを使用して攻撃者のアクティビティを調査し、ドメイン akconsult.linkpc.net で使用されている IP のリストを作成しました。以下のグラフを見ると、IP の約 73% がナイジェリアを拠点にしていることが分かります。これで、攻撃者がナイジェリアに拠点を置いているという説がさらに有力になります。

ホスト名 bodmas[.]linkpc[.]net も同様にナイジェリアと関連しており、関連性はさらに高くなります。ただしこちらは比較的新しいホスト名であり、関連付けられている IP アドレスはさほど多くありません。

その他の情報源

この種の調査を行っていると、他の情報源から入手したキーワードを使用して簡単な Web 検索を行うことが有効な場合が多々あります。その過程で、.sS.!popup_icon による以下のツイートを発見しました。Talos が発見した情報と一致する部分に加えて、攻撃者に関する新たな情報も含まれていました。

一部の情報は Talos の調査結果と一致していますが、まったく新しい情報もあり、この Twitter ユーザが述べていることの真偽は確認できていません。

まとめ

多くの攻撃者は技術的な知識が限られていても RAT や情報窃取型マルウェアを使用することができます。条件さえ整えば、大企業に重大なリスクをもたらしかねません。今回の調査では、単純に見える攻撃が、実際には 3 年間にわたって継続されてきたこと、さまざまな暗号化ツールで偽装した商用マルウェアを使って 1 つの業界全体を標的にしていたことが明らかになりました。

この種の小規模な攻撃は気付かれないことがあり、発覚後も攻撃者は活動を継続します。攻撃者は C2 のホスト名を放棄しますが、今回使用されていたのは無料の DNS のホスト名です。攻撃者が暗号化ツールと初期ベクトルを変更する可能性はあります。ですが、活動を止めることはありません。Web Cookie、トークン、有効なログイン情報を取引する闇市場は、自国経済と比較して高い収入が得られる場所であるため、攻撃者の活動を止めることはできないのです。

今回は、一般に公開されている情報だけに基づいてマルウェアの調査を展開していく方法を説明しましたが、皆さんのお役に立つことを願っています。誤った結論につながる可能性のある関連性の低い情報には注意が必要です。ただ、だからと言って無視すべきではありません。他の情報と合わせることで、2 つの情報の関連性が確かなものとなる可能性があるため、重要な情報の 1 つと見なすべきです。

カバレッジ

今回の脅威は、以下の製品で検出してブロックすることが可能です。

Cisco Secure Endpoint(旧 AMP for Endpoints)は、この記事で説明したマルウェアの実行を阻止するのに最適です。Cisco Secure Endpoint の無料トライアルはこちらからpopup_iconお申し込みください。

Cisco Secure Web Appliance の Web スキャンは、悪意のある Web サイトへのアクセスを防止し、上述したような攻撃で使用されるマルウェアを検出します。

Cisco Secure Email(旧 E メールセキュリティ)は、攻撃の一環として攻撃者が送りつける不正な電子メールをブロックします。Cisco Secure Email の無料トライアルはこちらからお申し込みください。Threat Defense Virtual適応型セキュリティアプライアンスMeraki MX など、

Cisco Secure Firewall(旧次世代ファイアウォールおよび Firepower NGFW)アプライアンスは、この脅威に関連する悪意のあるアクティビティを検出できます。

Cisco Secure Network/Cloud Analytics(Stealthwatch/Stealthwatch Cloud)は、ネットワークトラフィックを自動的に分析し、接続されているすべてのデバイスで、望ましくない可能性があるアクティビティをユーザに警告します。

Cisco Secure Malware Analytics(Threat Grid)は、悪意のあるバイナリを特定し、シスコのすべてのセキュリティ製品に保護機能を組み込みます。

Umbrella(シスコのセキュア インターネット ゲートウェイ(SIG))は、社内ネットワークの内外で悪意のあるドメイン、IP、URL への接続をブロックします。Umbrella の無料トライアルはこちらからpopup_iconお申し込みください。

Cisco Secure Web Appliance(旧 Web セキュリティアプライアンス)は、危険性のあるサイトを自動的にブロックし、ユーザがアクセスする前に疑わしいサイトをテストします。

特定の環境および脅威データに対する追加の保護機能は、Firewall Management Center から入手できます。

Cisco Duopopup_icon は、ユーザに多要素認証を提供し、承認されたユーザのみがネットワークにアクセスできるようにします。

オープンソースの Snort サブスクライバルールセットをお使いであれば、Snort.orgpopup_icon で購入可能な最新のルールパックをダウンロードすることで、最新状態を維持できます。この脅威を検出する目的でリリースされた SID は、58083 ~ 58088 です。

Orbital クエリ

Cisco Secure Endpoint ユーザは、Orbital Advanced Searchpopup_icon を使用して複雑な OSquery を実行し、エンドポイントが特定の脅威に感染しているかどうかを確認できます。Osquery の具体例については、こちらpopup_iconをクリックしてください。

IOC(侵入の痕跡)

ドメイン

akconsult[.]linkpc[.]net
nextboss[.]ddns[.]net
exchangexe2021[.]ddns[.]net
shugardaddy[.]ddns[.]net
frankent2021[.]ddns[.]net
hoc2021[.]ddns[.]net
jorigt95[.]ddns[.]net
8970[.]ddns[.]net
reserverem[.]duckdns[.]org
monthending[.]duckdns[.]org
e29rava[.]ddns[.]net

ミューテックス

UbboSatlahlk
TikTok

設定例 ID

AsyncClientKuso – “mTo6k2HFbwkEky1jZAhGsmddHWMMlgEk”
AsyncClientTemi – “dylt8lOYBtTllyeY3t5iyiRZLgqMai4t”
AsyncClientRasheed – “wV1ipYmVNbj8zuNLhiiXQN4PaZKje8qO”
AsyncClientExchange – “MsUZVALhJV3jcNVAxmaIl2DG7i544TZg”
Asywhy – “jbg9dRIOq1AGzwl8xmtPqGvO9dgNJ3ut”
AsyncClient95Adex – “AF2X087ySehzF7S3yr0bYQu5YoPK7JMk”
AsyncClientHOC – “39i4ufe0jIrlFwuCZQIngiDwHnmvIXP3”
AsyncClient8970 – “QMatjvtVkF3KwliMTk4UiKdIFFuO27pl”

ハッシュ例

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04ea078080a913511d938455a2ea0bfce88597499bf791a99d8561f8870da627
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本稿は 2021 年 09 月 16 日に Talos Grouppopup_icon のブログに投稿された「Operation Layover: How we tracked an attack on the aviation industry to five years of compromisepopup_icon」の抄訳です。

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