この記事は、Webex Meetings Business Unit の Senior Product Manager である Selim Baygin によるブログ「Great Video Conferences with Smart, Adaptive Media Resilience in Webex Meetings」(2020/6/24)の抄訳です。
Webex のインテリジェンスと適応性がさらに向上
職場と自宅の両方で毎日のようにビデオ会議を利用していると、画質や音質の粗さに苛立ちが募ることもあるのではないでしょうか。筆者自身も身に覚えがあります。この数ヵ月の間、一人きりの作業でも一人ではないことを実感します。在宅勤務が広がりを見せる中、ユーザのほとんどがラストマイルネットワークを介して接続するようになってきています。このためシスコでは、データ損失の多いネットワークに特に着目して、ビデオ会議の品質を高めるための取り組みを精力的に進めています。
メディアの品質を改善する中で、筆者自身もユーザとしてメリットを得ていると感じることが少なくありません。Verizon 社が 2009 年の初めに展開したコマーシャル「Can you hear me now?」(もしもし、今聞こえる?)が思い出されます。今日の携帯通信網は、広範囲で安定して提供されていると言えます。シスコが検討しているのは、この携帯通信網を活用して、よりスマートなビデオ会議を実現することです。
ビデオを利用する機会が広く浸透するほど、品質への期待値も上がります。カフェに設置された不安定な Wi-Fi からユーザが接続している場合も、期待が下がることはありません。世界中の働き手がモバイルの活用を一段と推し進める中、この要求水準はひたすら高まり続けることでしょう。テクノロジーの発展という観点からは、「ネットワーク速度を問わずに運用できるビデオ技術」の実現だけでは不十分なのです。ネットワークの状況が刻々と変化する中でも、インテリジェントで適応性に優れ、始めから終わりまで安定したやりとりを保てることが欠かせません。
条件の悪いネットワークでも快適な会議を
シスコは、この数ヵ月間で Webex Meetings の大幅な強化を果たし、音声とビデオの品質を飛躍的に高めて、会議のエクスペリエンスを拡充しました。この包括的な取り組みでシスコが重点を置いてきたのは、絶えず変化するユーザネットワークの状況に対して、クラウドメディアノードと連携する形でアプリケーションの適応処理を改善することです。また、大幅に向上するインテリジェンスをどのように応用して、最大限の品質を達成するのかということも焦点でした。
数十億分にものぼる会議の品質指標を分析したところ、品質の低下を招いている主な要因と、考えられる解決策について貴重な知見が得られました。
シスコのアプリケーション、クラウドメディアノード、その間に存在するネットワーク機器に特定のチューニングを施しました。すると、小規模から中程度のパケット損失が生じる環境であっても、ビデオ解像度の向上、フリーズの減少、フレームレートの上昇が見られました。つまり、ビデオの画質と安定性が高まったのです。
エクスペリエンスの強化に向けたメディアの改善
さらに、以下の領域で Webex Meetings のエクスペリエンスが大幅に強化されました。
- ポップ音とクラックルノイズの低減によって音声の品質が向上
- 発言中の参加者の音量管理を改善:発言中の参加者が発信音量をきわめて大きく設定している場合や、周囲の音がきわめて大きな環境にいる場合に、その音量を下げるのではなく、通常のレベルに維持されるように音声アルゴリズムを調整しました。
- 帯域幅不足の場合に、ビデオのレイアウトを動的に調整:Webex Meetings では 25 本のビデオストリームをグリッドレイアウトで表示できます。しかし、帯域幅が不足している場合、一部のストリームの表示がオフになります。このとき、不規則にオフになっているように見えることがあり、会議に集中できなくなる可能性がありました。ビデオのレイアウトが動的に変更されるようにして、直近に発言した参加者の優先順位を引き上げ、可能な限り多くのビデオストリームを安定して表示できるようにしました。ネットワークの状況がさらに悪化した場合は、表示人数の少ないレイアウトに切り替わります。
- 解像度が 360p または 720p の場合に、ビデオの品質が向上:より高度なダウンサンプリング アルゴリズム(Web カメラから 720p の画質で取得し、低速回線向けに 360p のバージョンを生成する際の処理)と、改良されたノイズ除去アルゴリズム(Web カメラで生じる粒子の粗い画像アーティファクトを除去する処理)を採用しました。結果として、ビデオの品質が全般的に向上しています。
- よりスマートなビデオアルゴリズムを採用した Webex では、ビデオ受信者の現在のネットワークに基づいて、送信ビデオフレームをカスタマイズできます。在宅勤務の場合、ネットワークの状況はユーザによって千差万別です。動画配信を視聴中なのか、ゲームをプレイ中なのか、といった使用状況にも左右されます。
次のステップ
スマートな機能強化によって、画質や音質の低下が生じていた Webex の全会議時間のうち、98% 超でパフォーマンスを高めることができています。Webex Meetings のエクスペリエンスは、この数ヵ月間で大幅な向上を果たしたことになります。メディアの品質については、よりスマートで適応性に優れたものとなるよう、今後も改善を進めます。このブログの次回の記事では、ビデオ会議の最も重要な構成要素である参加者に焦点を当て、シスコが人工知能をどのような形で応用しているのかをご紹介します。
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