この記事は、Cisco IT – Customer Zero の Manager である Jon Heaton によるブログ「Helping to keep employees safe by measuring workspace density with Cisco DNA Spaces」(2020/7/20)の抄訳です。
パンデミックロックダウンが緩和され、徐々に従業員をオフィスに迎え入れる中で従業員の安全は最優先事項です。
オフィスでの勤務は段階的に開始し、まずは全従業員20〜30%、主に開発、検証、運用の実務を担当するエンジニアのように、オフィスで業務を行う必要のある従業員を対象にします。 オフィスに受け入れる従業員の数を増やす前に、ファシリティを担当する Workplace Resources チームは、従業員が社会的距離を理解し、大勢で集まり活動したり、隣との距離をとらずに着席していないか等を確認する必要がありました。
このニーズが Cisco DNA Spaces の導入計画を加速しました。 Cisco DNA Spaces は、既存のワイヤレスネットワークをセンサーとして利用する屋内ロケーションサービスクラウドプラットフォームです。
迅速な展開
Cisco DNA Spaces はクラウドソリューションです。 仮想マシンで実行されるコネクタを約1日で展開しました。 コネクタは、ワイヤレスLAN コントローラからデータを取得し、個人を特定できる情報を暗号化して、Cisco DNA Spaces に送信します。 クラウドでのアカウントのプロビジョニングに要したのはわずか数時間でした。 建物の追加は、建物の見取り図のアップロードと同様に、Cisco DNA Spaces に追加するのにわずか数分で完了しました。 合計すると、わずか2日間で複数のサイトをオンボーディングし、4日間で本番サイトに拡張することができました。 これにより、Workplace Resources とユースケースを検証し、データのプライバシーとセキュリティについてインフォメーションセキュリティチームと協業する時間が得られました。
ワークスペースの密度を測定し、出社を許可する従業員の数を調整
現在までに、Cisco DNA Spaces は米国とアジアにあるオフィス10か所と3つのキャンパスで使用されており、さらに多くの計画が進められています。
Workplace Resources は、Cisco DNA Spaces を使用して、人々が集まる場所と時間を確認します。 そのデータに基づいて、入館する従業員数の増減、建物の特定の領域の開閉、サイネージの表示など必要な対応をします。調整を行った後、再度、Cisco DNA Spaces App ダッシュボードで状況を確認し、より多くの従業員を呼び戻すか、または一時停止するかを決定します。
DNA Spaces Right Now App を使用して、特定のエリアの密度またはデバイス数が閾値を超えるとアラートが出るよう設定されています。 サイト、建物、フロアー、または特定区域のワイヤレスデバイスの密度をほぼリアルタイムで示します(図1)。
プライバシーを尊重
従業員はオフィスに出社する際、施設に入る前にモバイルアプリを使用して発熱やその他の症状がないことを確認します。 次に社員証をバッジリーダーにかざし入館、そして通常どおり Wi-Fi を使用します。 ユーザーエクスペリエンスに変わりはありません。
変更点は、常に収集していたWi-Fiデータが Cisco DNA Spaces の分析(リアルタイムおよび履歴)に送られるようになったことです。 人々が1日中建物内を移動すると、 Cisco DNA Spaces は Wi-Fi に接続されているデバイスの場所をプロットします(図2)。 従業員のプライバシーを尊重するため、デバイスの場所のみをキャプチャし、所有者の名前やその他の個人を特定できる情報はキャプチャしません。 例えば、午後3時から3時45分まで3人がブレイクルームにいたことがわかりますが、誰がいたのかはわかりません。
正確なカウントを取得する
Cisco DNA Spaces は密度に関して有用な情報を提供しますが、誤差があることを留意しています。 たとえば、ワイヤレスの位置データは、約3メートル以内の誤差のある可能性があります。 したがって、ソーシャルディスタンスを維持しているように表示されても、そうでない時、またはその逆のケースもあるかもしれません。また、部屋に2つの接続されているデバイスがあっても、それが2人であるとは限りません。1人が2つの接続されたデバイスを使用している可能性があります。 または、3人が会議室にいても、そのうち1人のデバイスが Wi-Fi に接続されていない可能性があります。
密度の情報をより正確にする為に、最初にオフィス利用を開始する数か所に関しては、Cisco DNA Spaces のデータを入館の際のバッジインデータと関連付けています。例えば、20人が入館し、Cisco DNA Spaces が60台のデバイスをレポートしている場合、1人に対して3台のデバイスを結びつけて見積もります。
学び:フロアマップの正確性は重要
最初の展開中に、一部のフロアマップが不正確であることに気付きました。 時間の経過とともに、フロアマップに示されているアクセスポイントの配置データが不正確になる傾向があります。 最近インフラストラクチャをアップグレードした建物の、マップは正確で、アクセスポイントの高さと方位角が含まれています。 しばらくインフラが更新されていない建物には当てはまりません。 Cisco IT とWorkplace Resources は現在、安全なペースでオフィスに戻る計画を立てるために重要であるサイトマップを更新に着手しています。
オフィス再開前:オフィスネットワークの状態を確認する
オフィス再開のプロセスの一環として、準備アイテムのチェックリストを利用し各オフィスを評価しています。 項目の1つとして、ネットワークの確認があります。 ロックダウンが継続される中、シスコ IT のスタッフは、より多くのオフィスで Cisco DNA Assurance の利用を進めています。Cisco DNA Assurance は、一つのダッシュボードで、特定の建物内のすべての有線および無線インフラストラクチャの健全性の全体像を見ることができます。 ロックダウン中は、ケーブルの再パッチ等現地で行う必要のあるタスクは、オフィス再開前にやる事としてリストにしています。
Cisco DNA Spacesのこれから
一度に全従業員をオフィスに戻すのではなく、安全性を維持する為に許可する従業員の割合を正しく計画したいというのが Cisco DNA Spaces の導入を決めた大きな理由でした。 そして、Cisco IT では新しいシスコ製品のロードテストや、既存の製品を新しい方法で使用するCustomer Zeroプログラムとしても Cisco DNA Spaces の実装に取り組んでいます。Customer Zero では、バグ、追加機能、およびユーザーエクスペリエンスについてプロダクトエンジニアにフィードバックを提供することで、ソリューションの改善を支援しています。
将来的には、Cisco DNA Spaces を新しい方法で使用していきます。例えば、最も近い空いている会議室を表示したり、サプライチェーン内の物の動きを追跡したり、清掃サービスを追跡したりします。 これにより、最近清掃した場所を確認する等、スペースの使用状況に基づいて効率的にそして効果的にスペースを利用する計画をたてることに貢献できます。