遠隔授業で北方領土問題を現地から発信
私が北海道から東京へ出てきて、あっという間に9か月が過ぎようとしています。気づけば東京ももう冬です。北海道ではこの時期、雪が降っているのが当たり前でしたのですごく違和感があります。
偶然が重なり出張で、私がシスコに来る前に住んでいた根室に行ってきました。(根室の場所はEP1をご覧ください。)写真は北海道本土最東端の納沙布(のさっぷ)岬の景色です。遠くにはうっすらと北方領土が見えます。
さて、根室に行ってきたという話を少ししましたが、今回もまた「働き方改革」とは離れて、シスコが行う遠隔授業の取組みについてご紹介したいと思います。
シスコは大学発の企業ということもあって教育分野にかなり力を入れており、遠隔地の学校をインターネット経由で繋いで授業を実施する「シスコデジタルスクールネットワーク」という事業を行っています。今回はその授業の一コマとして、私が以前携わっていた「北方領土問題」をテーマに授業を実施しました。
授業は根室市と連携し、根室高校北方領土根室研究会と北海道庁の協力を得て行いました。参加校は全7校で38名の生徒さんが参加してくれました。遠隔授業での北方領土問題の発信という取組みは、市にとって初めての取組みであると同時にシスコにとっても最多拠点数となったため、挑戦的な取組みにもなりました。
プログラムとしては、まず根室高校北方領土根室研究会の岡野真鈴さん(高校3年生)から北方領土問題の概要、部活動の取組みを紹介いただき、その上でご自身が考える北方領土問題への想いを、同年代の生徒さんに向かってお話しいただきました。
話の中で「今日の授業を受けた皆さんは情報発信者です。(北方領土)問題を自分で調べ、自分なりの意見を持ってください。」という言葉があり、先の見えない社会で生き抜いていかなければならない今だからこそ、岡野さんのこの言葉は私の心には強く響きましたし、きっと参加した生徒さんの心にも響いたことと思います。
それに続いて色丹島出身で元島民の得能宏さんから、ソ連軍侵攻からのロシア人との混住生活、サハリンを経由しての引き揚げ体験、ご自身の北方領土問題への想いを語っていただきました。今後、得能さんのような当時を知る方から直接体験談を聞く機会は、元島民の方の高齢化が進んでいることもあり少なくなってくると思います。そうしたなかで今回の新たな取組みに協力していただき、全国の学生の方に北方領土問題の本質を伝えられて本当に良かったと思っています。
授業の最後に行われた質疑応答の場面では、事前に得能さんがモデルとなった映画「ジョバンニの島」を観た生徒から「ターニャは実在した女の子ですか?」という質問があり、得能さんからは「本当です。ターニャを探そうという声もあったけど、互いに歳をとった姿は見ない方がいい。」といったユーモアを交えた回答があり、接続先全体に和やかな空気が流れました。
参加者からは、北海道は物理的には遠いが今回の話を聞いて非常に身近に感じたし、生の声を聞くことで北方領土問題がより身近になったとの感想をいただいております。こうした遠隔地とも簡単に繋がることが出来て、映像や言葉だけでなくその場の空気も繋げられるところがCisco Webexの良さだなと改めて実感しました。
私自身、業務で北方領土問題に携わっていたこともあり、日露双方の利害関係が色々と交錯するなかでの決着が難しいことも良く理解しています。ただ、インターネットに何でも答えが載っている今だからこそ、こうした答えのない問題について真剣に調べ、考え、自分なりの意見や考えを持つことは重要なことではないでしょうか?
こうした気づきを与えてくれた関係者の皆さまにも感謝ですし、シスコにはこうしたネットワークをどんどん広めて、閉じた学びから開かれた学びへと日本の教育を変えていって欲しいと思いました。