この記事は、AppDynamics.のAppDynamics Teamによるブログ「The App Attention Index 2019: The Era of the Digital Reflex」(2019/10/15)の抄訳です。
『アプリケーション注目指標 2019』では、7,000 名以上の消費者への調査に基づいて、世界のデジタルサービス利用者の思考、行動、期待に関する最新のトレンドをご紹介します。
デジタルサービスとアプリケーションは、人間の行動に永久的な変化をもたらしてきました。
多くの人は目を覚ますと同時にスマートフォンを手に取り、Alexa に照明をつけてもらいます。Sonos をタップして Spotify でお気に入りの音楽を聴きます。このように 1 日を通して、デジタルエクスペリエンスを提供する多数のアプリケーションを操作しています。これらのデジタルエクスペリエンスは日常生活に溶け込んでいるため、それに依存していることさえ気付いていません。
デジタルサービスを意識せずに、つまり反射的に使う「デジタル反射」の時代が到来したのです。
「デジタル反射」の時代
今日のデジタルエクスペリエンスとは、世界そしてブランドとの関わりだと言えます。障害やパフォーマンスの問題により、期待されるデジタルエクスペリエンスを提供できなければ、顧客はすぐに気付きます。その結果、ブランドの評判だけでなく、収益にも取り返しの付かない悪影響が出る可能性があります。
つまり「デジタル反射」時代のブランドにとって、卓越したデジタルパフォーマンスとワールドクラスのカスタマーエクスペリエンスの提供はもはや必須だと言えます。
当社の調査によると、昨年だけでも消費者の 84% がデジタルサービスに関する問題を経験していることがわかっています。多くの組織は、顧客が求める高品質のデジタルエクスペリエンスを継続的に提供できていないのです。
貧弱なパフォーマンスに対してよりシビアになる消費者
デジタルサービスが優れたカスタマーエクスペリエンス、つまりシームレスで問題のないエクスペリエンスを提供できない場合の影響は、これまでより深刻化しています。多くの場合、消費者にはストレスや怒りといった否定的な感情が残るため、ブランドに対する認知や口コミなどに影響が及ぶ可能性があります。
当社の最新の調査によると、消費者はデジタルサービスの問題に対して 2 年前よりもシビアになっています。そしてアプリケーションを削除する、競合他社に乗り換える、幅広い人々に粗悪なエクスペリエンスに関する情報を共有するなど、断固たる行動を取る可能性がかなり高まっています。
対面でのエクスペリエンスを上回るデジタルエクスペリエンスが不可欠
「デジタル反射」時代の消費者は、ブランドとの対面インタラクションと同様か、あるいはそれ以上にデジタルエクスペリエンスを重視しています。
デジタルサービス(およびその提供元であるブランド)には、利用頻度に応じてユーザに報いること、貧弱なデジタルエクスペリエンスに対しては補償すること、パーソナライズされたコンテンツやエクスペリエンスを提供することが期待されています。
企業は、カスタマーエクスペリエンスへのアプローチを見直す必要があります。第一印象が決まるのはオンライン、関係を構築するのはアプリケーション、購入決定を左右するのはデジタルエクスペリエンスです。カスタマーエクスペリエンスで最も重要なのは、今やデジタルエクスペリエンスです。
多くのブランドにとっては今が試練の時です。ブランドは、デジタルパフォーマンスを真摯に受け止め始める必要があります。ワールドクラスのデジタルエクスペリエンスを顧客に提供してブランドロイヤルティを構築し、販売を促進しなければ、他社に後れを取るリスクを負うことになります。
7,000 名以上の消費者を調査して学んだこと
デジタルサービスは、人々の生き方、働き方、遊び方に変化をもたらしました。
人々が日常的に使用するアプリケーション数は増加の一途をたどっているため、デジタルサービスへの欲求はさらに高まっています。アプリケーションが日常生活に溶け込んでいるため、調査対象者は自身が考える数を 4 倍も上回るアプリケーションを、実際には普段から使用していました。
日常的に使っているデジタルサービスは平均 32 個で、これは調査対象者が自身で認識している数の 4倍を超えています。
出典:アプリケーション注目指標 2019
私たちはデジタル反射の出現を目の当たりにしています。
以前の消費者は、特定のタスクやアクティビティに使うデジタルサービスを意識的かつ意図的に選んでいました。しかし今では、ほぼ無意識にデジタルサービスを使用しています。
デジタルサービスを日常で意識せずに、つまり反射的に使う「デジタル反射」の時代が到来したのです。
「デジタル反射」が強くなるほど、デバイスやアプリケーションへの依存が高まり、日常生活に欠かせない存在となります。
デジタルサービスのない生活は、想像を絶するものになりつつあります。
消費者は超パーソナライズされたエクスペリエンスを求めています。
デジタル反射はさらに顕著になっているため、デジタルサービスに対する人々の期待が急激に高まっています。
消費者の 70% は、デジタルエクスペリエンスに、対面でのエクスペリエンスよりも高度なパーソナル化を求めています。
ブランドは、すべてのデジタルチャネルで常にカスタマイズされた直感的なカスタマーエクスペリエンスを提供する必要があります。
多くの企業にとっては、優先事項を定義し直し、デジタル カスタマー エクスペリエンスをカスタマーエクスペリエンス戦略の中心に据える必要もあります。今やアプリケーションは、デジタル カスタマー エクスペリエンスそのものなのです。
出典:アプリケーション注目指標 2019
デジタルパフォーマンスは、購入の意思決定に影響を与え、ロイヤルティを促進します。
世界は、ブランドが提供できるデジタルサービスの品質とパーソナライゼーションに基づいて大半の購入決定が下される転換期を迎えています。消費者の 50% は、デジタルサービスが他社よりも優れている企業の製品やサービスに対してより多くの金額を支払うことをいとわないと述べています。消費者にシームレスで革新的なデジタルエクスペリエンスを提供することは、組織にとってきわめて重要で商業的に賢明なことなのです。
消費者は、店舗を訪問せずにいち早く製品やサービスを購入できる業者を選択し(63%)、すべての取引をデジタルで実行できる銀行を選択します(58%)。
この 2 年間で、ブランドよりもアプリケーションに対する強いロイヤルティがあると回答した消費者の数は倍増しました
(2017 年の 23% に対し 2019 年は 46%)。
最終的に、ブランドの価値はデジタルサービスのパフォーマンスによって決まります。完璧なデジタルパフォーマンスが顧客の心を捉え、収益を促進するのです。
デジタルが決定を左右
- 現在は、消費者の 54% が物理的なインタラクションよりもブランドとのデジタルインタラクションを重視している。
- 消費者の 50% は、デジタルサービスが他社よりも優れている企業の製品やサービスに対してより多くの金額を支払うことをいとわない。
- 実際の洞察に基づいて意思決定を行い、行動を起こします。優れたデジタルエクスペリエンスを提供するには、顧客デバイスから基盤となるネットワークまで、すべてのテクノロジースタックをリアルタイムでモニタリングする必要があります。しかし企業にとって重要なのは、迅速または自動的にアクションを実行するために、ML/AI を使用してモニタリングデータを素早く有意義な洞察に転換できる AIOps アプローチを取るソリューションを選択することです。消費者の 85% は、今後 3 年間でブランドが提供するさまざまなデジタルサービス(Web、モバイル、コネクテッドデバイスなど)に基づいてブランドを選択するようになると考えている。
デジタルパフォーマンスのギャップ
デジタル反射の時代はブランドに大きなチャンスをもたらします。しかし、ブランドが抱えるリスクも同じくらい高くなります。
デジタルパフォーマンスへの対応を誤ると、致命的な結果に発展する可能性があります。
企業は、顧客ロイヤルティと収益を促進するためにデジタル革新に多額の投資を行っています。しかしこうした取り組みは、デジタルサービスの粗悪なパフォーマンスによってリスクにさらされています。パフォーマンスレベルとは、高まる消費者の期待に後れを取らないようにするだけのことではありません。
実際、84% の人が昨年デジタルサービスの問題を経験しています。
すべてのタイプのデジタルサービスで日常的にパフォーマンスの問題が発生しています。
出典:アプリケーション注目指標 2019
粗悪なデジタルエクスペリエンスの長期的な影響
デジタルサービスに問題が発生すると、人々にはストレスや怒りといった感情が残ります。たとえば、購入の機会を逸したり、製品に対して高い金額を支払うことになったり、仕事に遅刻したりすることさえあります。
しかし「デジタル反射」時代でより影響力があるのは、デジタルエクスペリエンスです。不満が増大し、無力感や不安が広がると、それらを解消するのが困難です。
消費者の半数以上(55%)は、デジタルサービスに関する問題や不満は自分が思っているよりも深く長く影響することを認めています。
人々は悪態をつき、怒りで電話を投げ、周囲の人に対して怒りっぽくなります。
対面でのインタラクションでは、顧客にこのような感情を抱かせることを許容する企業はありません。これは、質問してきた顧客に店員が背を向けて歩き去る、あるいはレジ担当者が支払を処理できないため、後で戻ってきて購入するように顧客に指示するようなものです。
現実世界では、こうしたことが一切許容されません。しかし驚いたことに、多くの組織は、デジタルサービスを通じて日常的に顧客にこのような粗悪なエクスペリエンスを提供していることを認識できずにいるのです。
出典:アプリケーション注目指標 2019
容赦のない顧客によって、ブランドは破壊されてしまう可能性があります。
このデジタル反射の時代、消費者が粗悪なデジタルエクスペリエンスを許したり忘れたりすることはありません。
注目してほしいのは、最初の問題の発生時点でサービスプロバイダーに連絡して支援を求める可能性があるのは、デジタルサービスの問題を経験している消費者の 17% に過ぎない点です。
つまり顧客の 83% は、デジタルサービスに関する問題を経験したときに、ブランドに通知することも、ブランドに問題を修正する機会を与えることもないのです。
企業は、パフォーマンスの問題が顧客を沈黙のまま苦しめていること、あるは顧客がソーシャルメディアで否定的なエクスペリエンスを他の顧客と共有していることを認識しなければなりません。
消費者は、許容できないデジタルエクスペリエンスに遭遇すると断固たる行動を取ります。サービスのプロバイダーを乗り換え、他の人がこのサービスを使用しないように阻止します。
3 分の 2(66%)の消費者は、粗悪なデジタルエクスペリエンスで知られるブランドの使用を回避すると回答しています。
最終的に、粗悪なデジタルパフォーマンスによって、ブランドの評判が損なわれることがあるのです。
出典:アプリケーション注目指標 2019
アプリケーション パフォーマンスのモニタリングにより、ロイヤルティを促進し、リスクを最小化
デジタル反射の出現は、企業にとって分岐点となりました。
ブランドは新しい現象を理解し、この人間の行動の進化を活用する計画を策定する必要があります。
デジタル反射を正しく理解し、ワールドクラスのエクスペリエンスを常に提供するブランドは、デジタルサービスを通じて顧客ロイヤルティを促進し、収益を最大化する無制限の機会を得られます。
しかし、現在の多くの企業と同様にこの現象を誤って捉えると、結果として顧客を怒らせ、収益を失い、ブランドに傷をつけてしまいます。
完璧なデジタルパフォーマンスは、今やすべての企業にとってベースラインなのです。勝者となるのは、常にこのベースラインを超えるサービスを提供できる企業です。
顧客にワールドクラスのデジタルエクスペリエンスを提供するために、企業が講じられる手段をいくつか紹介します。
- 実際の洞察に基づいて意思決定を行い、行動を起こします。優れたデジタルエクスペリエンスを提供するには、顧客デバイスから基盤となるネットワークまで、すべてのテクノロジースタックをリアルタイムでモニタリングする必要があります。しかし企業にとって重要なのは、迅速または自動的にアクションを実行するために、ML/AI を使用してモニタリングデータを素早く有意義な洞察に転換できる AIOps アプローチを取るソリューションを選択することです。
- アプリケーション パフォーマンスに重点を置き、堅牢なアプリケーション パフォーマンス管理ソリューションを導入することで、組織は実稼働環境のミッションクリティカルなアプリケーションとユーザエクスペリエンスを保護できます。
- パフォーマンスをビジネス成果と一致させること、つまりアプリケーションのパフォーマンスを測定して分析し、これをビジネスパフォーマンスに関連づけることで、デジタルサービスのレベルを顧客のエクスペリエンスや収益などのビジネス目標と常に一致させることができます。
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エディターズノート | この調査について
デジタルサービスに対する要求が世界中で急激に増加していることを受け、AppDynamics の『アプリケーション注目指標 2019』では、世界のデジタルサービス利用者の思考、行動、期待に関する最新のトレンドをご紹介します。
シリーズ第 3 弾となるこのレポートでは、前回のレポートが出された 2017 年と比較した上で、デジタルサービスの利用の増加(特にモバイルアプリケーション)によって、消費者のブランドに対する見解と購入決定がどのように変化しているかを検証しています。デジタルサービスの利用の増加が企業にもたらす、現在と将来の影響についても解説します。
調査では、米国と英国で実施した 2,000 件のインタビューや、ドイツ、フランス、オーストラリアで実施した 1,000 件のインタビューを含め、7,000 名以上の消費者にインタビューを実施しました。調査は、2019 年 3 月に Insight Avenue 社によって実施されました。